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恐怖再び

ルイが情けない子になってきました・・・

 ゴブリンから取り出した魔結晶を眺める。

 小さな赤く輝く結晶。

 微弱だがそこから魔力も感じられる。

 これを俺は目の前の死体から取り出したんだな。

 魔物とは言え人型だ。

 若干罪悪感を感じてしまう。


「ルイ・・・ 大丈夫? がんばったね」

「よくやったなルイ」


 マリーとロイスが俺を心配して話しかける。

 俺を褒めてくれているが素直に喜べない。

 でもこれが冒険者なんだ。

 今後魔物の解体なんて数え切れないほどこなさなきゃいけないだろう。

 早いうちに慣れないとな。


「うん、もう大丈夫。なんとかできたよ」

「最初は皆戸惑うのよ。そのうち慣れるわ」

「そうだぜルイ、俺たち冒険者が討伐する魔物ってのは人にとって害でしかない。だから遠慮することはねー。解体なんて日常茶飯事だ。早く慣れねーとな」

「うん、分かってるよ」


 そして俺は残りのゴブリンからもそれぞれ魔結晶を回収する。

 こういうのって麻痺していくんだな。

 最後の一体を解体する頃にはほとんど抵抗なく作業を行えた。

 それから俺たちは同じようにゴブリンを狩り続け、それらを俺は黙々と解体していく。

 もう罪悪感は全く感じない。

 良いのか悪いのかはよく分からないが、取り敢えず冒険者としてやっていくには問題ないだろう。


「全部終わったよ」

「お疲れ様。もう随分慣れてきたわね」

「作業が早ーな。やっぱりお前の魔力だとミスリルの切れ味がやべーわ」

「本当ね。全く抵抗ないように見えるわ。私じゃこうはいかないね」

「はっはっは! ルイの魔力量はバケモン並だからな!」


 ドスンッ!

 マリーのブローがロイスの脇へ刺さる。


「痛っ!」

「そんな風に言わないの!」


 俺に気を使ってかマリーとロイスがまた漫才を始める。

 見ていて気分が和らぐ。

 いつも俺を心配してくれるこの二人には感謝が尽きないな。


「ルイ、そろそろ気をつけて。この辺からは一角兎や他の魔物も出るわよ」

「一角兎は集団でいることが多いから気を抜くなよ」

「うん、分かった!」


 気づいたら俺たちはもう随分森の奥まで来ていた。

 辺りの禍々しさが更に増し、俺も気を引き締める。


 ガサガサッ!

 ガサガサガサッ!


 辺りの草陰から激しい物音がする。

 音を聞くだけで相手が複数だとすぐ分かる。


「一角兎だな。しかも結構多いぞ」

「ええ、大きな集団に遭遇したみたいね」



 すると突如前方に見たことない魔物が一匹飛び出してきた。


「キュィ!」


 え?

 か、かわいい・・・

 前世で見た小柄な兎の額に細長い角が生えている。

 ふわふわな体毛に愛らしい瞳。

 本当に魔物なのか?

 俺はつい目の前の一角兎に近づき手を伸ばそうとする。


「危ない!」

「おい! そいつに近寄るな!」

「え?」


 マリーたちの声と一角兎が動いたのはほぼ同時だった。

 俺が手を伸ばそうとしたら目の前の魔物が豹変する。


「シャァァァァァアアアアアア!!」


 大きな威嚇を発して一角兎の全身の毛が逆立つ。

 口は大きく開かれ、兎らしからぬ鋭い牙が並んでいる。

 そして俺目掛けて生えている角で突進してきた。


「うぉおっ!?」


 俺は咄嗟に肉体強化を発動させてその攻撃を避ける。

 ギリギリ攻撃は回避できたが、服の皮一枚が一角兎によって破られた。


「あぶねー・・・」

「まだよ!」

「油断すんじゃねーよ!」

「へ?」


 攻撃を躱し、俺が気を緩めていると周りの草陰が激しく揺れる。


 ガサッ!

 ガサガサッ!

 ガサガサガサッ!

 ッシュシュ!!


 目の前の光景に俺は絶句した。


 兎兎兎兎兎兎兎兎兎兎兎兎兎兎兎・・・

 

 その数は20は超えていただろう。

 先ほどのように毛を逆立たせ一角兎が牙を剥きながら一斉に俺に向かって飛び出す。


「は?」


 いきなりのことに俺は全く反応できず完全に固まってしまった。

 兎ってあんな凶暴だっけ?

 狼もびっくりの牙だよな。

 うわー、角があんなにたくさん俺に向かってきてるよ。


 うん。

 っこ、怖ぇぇぇぇぇえええええええええええええええ!!

 魔物怖い。兎怖い。

 俺は激しく動揺していた。


 ズンッ!!


 一閃。

 そんな俺の前にロイスが突然現れ、持っている剣を大きく振るった。

 それだけで前方から突っ込んできた複数の一角兎が切断され剣風で吹き飛ばされる。

 結構な数が減ったが、まだまだその数は多い。

 死んだ仲間のことは一切気にせず、残りの集団が俺たちへと突進する。


「火炎よ、我に迫る危機をその炎を用て焼き尽くせ、燃える鉄壁、ファイアウォール!」


 次の瞬間、マリーの呪文が聞こえ、俺とロイスの前方に大きな炎の壁が出現した。

 辺りの温度が急上昇する。

 それでも突進する一角兎たちの勢いは止まらず、そのまま炎の壁に飛び込む形となった。

 結果、瞬く間に焦げ臭い匂いが漂い、目を向けると大量の焼き兎が出来上がっていた。


 激しい戦闘が起きたのは分かるが俺はその光景にただ唖然とするしかなかった。


「っえ? 何?」


 気が抜けるような一言をその場に残しながら。



お読み頂き有難うございます。

次話は明日17:00に投稿します。

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