第40話 遥かな三次職
マイホームから【審判の書】を持ってきて、キョウヤに渡す。
彼は【審判の書】を指でタップすると、口元に不敵な笑みを浮かべた。
――そこに表示されているであろう【暗殺者】(1/1)の文字を見つめながら。
「本当に【暗殺者】になるつもりなの? 物騒すぎない?」
アリサの問いかけに、キョウヤはいつもの調子で返す。
「もともと俺は【暗殺者】や【忍者】のようなジョブに就くために【コソ泥】を選んだからな。これでいいんだ」
おそらくキョウヤにはこのような画面が見えているはずだ。
・(暗殺者)(1/1):【盗賊】、【影魔導士】マスター
・(怪盗):【盗賊】マスター
二つのジョブ名はグレーアウトしており、まだクラスチェンジはできない。
そもそも【審判の書】の使用条件に「LV51以上」と記載されている。三次職へ転職するには、その壁を越える必要があるのだ。
気になるのが、【暗殺者】に表示されている(1/1)という表記。
俺たちの推測では、これは「一人しかなれないジョブ」なのではないか、という結論に至った。
というのも、最初にこれに気づいたのは、アリサが【審判の書】を使用したときのことだった。
十層をクリアした翌日、アリサはすぐに【剣士】から【魔法剣士】へとジョブチェンジを行った。その後、シルバを仲間に入れ、【審判の書】を入手。そして、それをタップすると――アリサにだけ、三次職の選択肢が表示されたのだ。
・(煌姫)(1/1):女性限定ジョブ。【剣士】、【魔法剣士】、【光魔導士】のいずれか二つマスター。剣術C以上。
・(魔装士):【魔法剣士】マスター。剣術、魔法共にD以上
・(剣聖):【剣士】マスター。剣術C以上。
明らかに【煌姫】の方が条件が厳しく、そこに(1/1)という表記がある。
誰が見ても「このジョブは一人しかなれない」という仕様だと推理するだろう。
この限定職について、「早い者勝ちでズルい」と思う者もいるかもしれない。
だが、俺たちはそれだけのリスクを伴うからこそ、ファーストペンギンに与えられる特権なのだと推測している。
仮に、俺が手に入れた【魔法剣士の証】を今レベル1の奴に渡し、最初から二次職でレベルを上げさせたとする。そうすれば、レベル51の時点で圧倒的なステータスを誇ることになるだろう。
やるつもりはないが、もしこれが可能なら、ゲームバランスを崩すほどの差が生まれるはずだ。
つまり、このシステムは「リスクを背負って先駆者となった者」へのご褒美なのかもしれない。
そしてもう一つ気づいたことがある。
これは、アリサの最新のステータスだ。
【名 前】アリサ
【ジョブ】☆剣士(0/0)
【状 態】良好
【L V】35(5up)
【H P】585/585
【M P】328/328
【筋 力】223 (35up)(+40)
【敏 捷】259 (40up)
【魔 力】158 (15up)
【器 用】259 (40up)
【防 御】194 (30up)(+25)
【魔 防】208 (30up)(+15)
【適 性】剣術C(0/0)・光魔法F
【重 量】90/223
【装 備】鋼の剣
【装 備】剣士の法衣
【アクティブスキル】
・《二連切り》・《スラッシュ》・《残像剣》
・《ライト》
【パッシブスキル】
・《索敵》
これは、アリサが【魔法剣士】をマスターするためにはレベルを15上げる必要があると分かったので、先に剣術をCにするために【剣士】のまま5レベル上げた結果だ。
特筆すべきは【適性】の表記。
剣術C(0/0) となっている。
しかし、アリサが【魔法剣士】にジョブチェンジすると、この表記が 剣術C(0/15) に変わるのだ。
つまり、二次職の最初のジョブでは剣術Cまでしか上がらず、二つ目のジョブでBまで上げられる仕様なのではないか?
これは、皆で話し合った結果、導き出した推測だ。
だから俺も【雷鳴士】をマスターしたら、【魔法剣士】になる予定。
【魔法剣士】になって雷魔法適正Bを狙いつつ、さらに三次職でいいジョブが見つかるのではないかと、密かに期待を寄せている
【名 前】ユウト
【ジョブ】雷鳴士(17/20)
【状 態】良好
【L V】28(3up)
【H P】408/408
【M P】765/765
【筋 力】171 (18up)
【敏 捷】200 (21up)
【魔 力】428 (48up)(+50)
【器 用】200 (21up)
【防 御】171 (18up)(+10)
【魔 防】237 (24up)(+20)
【適 性】火魔法E(5/12)・風魔法E(5/12)・水魔法E(5/12)・雷魔法D(7/10)
【重 量】169/171
【装 備】魔術師の杖
【装 備】魔術師のローブ
【アクティブスキル】
・《ファイア》・《フレイムスロウワー》
・《ウィンド》・《シルフィード》
・《ウォーター》・《ウォーターミスト》
・《ライトニング》・《ライトニングウォール》
【パッシブスキル】
・《鑑定》
・《雷の加護》(17/20)
なんでこんなに重量があるのかというと、一応アイテムストレージ内に鋼の剣を入れて、いつでも前線に立てるようにするためだ。
みんなの後ろに隠れて戦うのは趣味じゃないからな。
ついでにシルバのステータスも載せておく。
【名 前】シルバ
【ジョブ】騎士(14/16)
【状 態】良好
【L V】27
【H P】606/606
【M P】190/190
【筋 力】197(+25)
【敏 捷】130
【魔 力】101
【器 用】202
【防 御】250(+70)
【魔 防】228(+50)
【適 性】槍術E(2/10)・馬術E(2/10)・神聖魔法G
【重 量】180/197
【装 備】鉄の槍
【装 備】鉄の鎧
【装 備】鉄の大盾
【アクティブスキル】
・《二連突き》・《疾風突き》
・《ヒール》
【パッシブスキル】
・《HP自動回復》
・《馬心伝心》
もし、俺が【魔法剣士】にジョブチェンジしたことにより、新たな三次職が選択できるようになるのであれば、シルバからもらってまだ保管してある【求道者の書】は彼に使ってもらおうと思う。
一次職に就いている時間は短い方がいいからな。
キョウヤはしばらく表示されている画面を見ていたが、ようやく満足したらしく。俺のアイテムストレージに【審判の書】を戻すと立ち上がった。
「ユウト、無理はするな。ベータテスター仲間が一人減ると困る」
そう言いながら、拳を軽く突き出す。
俺は苦笑しながら、その拳に自分の拳を軽く合わせる。
「お前もな。オイルリグを攻略すると言っても、レイクタウンから転移門で毎日こっちには戻ってくるつもりだ」
何しろこっちにはマイホームがあるからな。アリサとの同棲生活はやめられない。
キョウヤが店を出ると、俺たちも自然と解散となり、明日からの未知なる戦いを前に身体を休めた。




