No091 アイリの野望、激動編 「視察と移動」 新しい仲間と新しい地。 9歳11月~
ネイと呼べという少女。本名はオネイ。
「於子亥」という難しい文字の女性は、
歴史で言えば、小松殿もしくは稲姫と言われた人物だ。
幼名がオネイだった。
歴史では、後に小松姫として名を遺す。
父親は、本多忠勝。小松姫は、歴史では徳川家康の養女として真田信之に嫁ぐ。
当時は豊臣政権下で、諸大名の妻子を秀吉の手が届く武家屋敷に居住させている。
小松姫もそのため移住することになる。
これは、裏切り防止のための人質と言える。
後の関ケ原の合戦で、真田家は家名存続の為に、豊臣側と徳川側にわかれる。
夫の真田信之は、徳川側として参陣し武功をあげた。
敗者側になった昌幸と信繁は、小松姫の父・本多忠勝や本多正信らの嘆願で
高野山への流罪に留められた。
勝利側の信之は、敗者側の昌幸・信繁の援助と助命嘆願を繰り返した。
その時、小松姫の気遣いもあったと記録される。
戦場ではあまり登場しないのだが、歴史の記録から人物像はこういわれる。
小松姫は、将軍徳川家康や2代将軍徳川秀忠に対して直に意見をする程、はきはきとした女性。
弟の本多忠政や本多忠朝が戦地から帰還した際には高らかに忠節を讃えるなど、勇気ある女性。
才色兼備の女性だったと伝えられている。
また、小松姫の遺品の中には『史記』の「鴻門の会」の場面を描いた枕屏風がある。
こうした戦を表す勇壮な絵を所持していた点からも「男勝り」と評されている。
後に、「武芸に秀でる」「勝気な性格」といった人物像を基に
創作されたものだと指摘する意見もあるが定かではない。
父親の本多忠勝は、徳川家にありて過ぎたるものと言われた豪傑だ。
その娘としての立場が、大いに影響していると思われる。
何故か本多忠勝の同名者は、アイリの軍にいる。
今は関東に行っている、タダカツだ。
アイリも調子に乗って槍を蜻蛉切りと言って渡した。
歴史なら親子の存在だが、この世界は異世界だ。
真田兄弟も他人だし、オイチとシホウも他人だ。
その人物が今の時代に存在すると言うのが、たぶん大切なんだろう。
過去から幾多の歴史存在人物が消えていることを知った時
生き残り確率をあげるための、歴史的な辻褄合わせになっていると思った。
同名者であっても、類似の存在とは言えない。
実は別人かも知れないことも、アイリは理解している。
ただ何らかの役回りで存在しているなら、アイリはそれをできるだけ尊重する。
ネイもアイリの仲間になることが
アイリの言う「偶然は必然」という出会い方だったのかもしれない。
ギフで普通に戦争孤児として出会っていたとした場合。
芽吹く前のスキルの存在も知らなかった当時のアイリは、
普通に他の孤児達と同じように、単なる孤児としてかかわっていただけになる。
後で知ったとしても、そういう存在として記憶に留めるだけだったろう。
先に出会ったリンコにしても同じで、
姉の存在によるリンコの行動も、姉に間接的にかかわっていたアイリにも
その時点でお互い、何らかのつながりがあったと言える。
林子と言う少女。歴史では、早くに夫を亡くした存在。
後に妙林尼と言われた女性は、九州にいて島津軍と戦った記録が残される。
二人の間には、子がいて鶴崎城の城主になっていた。
当時その子、統増は宗麟に従って臼杵城に籠城することになる。
鶴崎城の指揮は母親であった妙林尼に委ねられた。
落とし穴や鳴子の罠と鉄砲を巧みに使用した奇策で16度に及ぶ島津軍の攻撃を退ける。
城を落とせない島津軍は、ついに和睦を提案。
和睦した妙林尼は、島津軍の殲滅を諦めた訳ではなかった。
九州では、豊臣秀吉の九州征伐が始まっており、
秀吉自ら20万の大軍を率いて、島津討伐へ向かうとの知らせが入った。
島津軍が撤退するとき、妙林尼は島津軍を訪れ、寝返ると称し祝賀として酒を飲ませる。
酔った島津軍が撤退を開始すると、奇襲攻撃を仕掛け殲滅。
その武勲を聞いた秀吉は感心し、是非会いたいと申し出たが、妙林尼はそれを断わったという。
彼女のその後の消息は不明だが、その智略と武勇は語り草となった。
二人にも自由に人生を選択してもらいたい。
目標が出来て、成人するまでは一緒だがその先は自分で決めればいい。
アイリはそんなことを考えながら、仲間たちとキョウトへの道を行く。
キョウトで人材登用をするためだ。
アイリの人材登用。こういった努力で人材が増え、領地は保たれ新領地の開発が進む。
いくらアイリがその知識を使おうにも、それを実行する存在がいなければ意味がない。
一人では何もできない。多くの人がいて成し遂げられる。
アイリが自ら動かなければ、そういう人物には出会えないかもしれない。
そして人材登用とは、単に使える部下を集めるのではなく、
アイリの考えに賛同し、支えてくれる人を集めるものだ。
アイリの立場上、どうしても強制的な感じにはなるが、本人が納得しなければ意味がない。
現実はゲームのように簡単ではない。
人を集めて即戦力になるわけでもなく、
教育を行い、訓練を行い、本人の努力で学ばなければならいない。
いくら素養があって能力が高くても、本人がやる気がないなら、それは無いのと同じだ。
仕官に来た人を不採用にしないのは、本人のやる気があるからに他ならない。
努力でいくらでも能力が上がる。
頑張れば、技能スキルだって取得可能だ。
スキル持ちを重視するのは、育てば能力の上がりが全く異なる。
だからアイリ自ら教育し、彼らを励まし、努力してもらう。
それはアイリ自身が、彼らの力に頼ることになるからだ。
アイリたち一行は、仲がいい。
それはメイド隊も含めてだ。
その関係は、あまり上下を感じさせない。
アイリは気さくに冗談を言い、オイチはそれを真似る。
マナリもそれに乗っかり、ギンに指摘される。
サヤカ、キチョウ、シホウ、ナオトラは、それを見て笑う。
新しく入った、リンコとネイも楽しそうに笑う。
メイド隊は皆呆れて苦笑している。
移動は辛いが、幾多の移動を繰り返したアイリ一行は
こうして移動の時間でも楽しく過ごすようになった。
やがて、キョウトに入る。
キョウト南部からまずは西部に向かい、郡役場がある街へいく。
もちろん周辺も回るが、まだ戦後のごたごたでやっと改革が進められたところだ。
アイリの内政ではまず、行政改革から始まる。
従来の税を廃止し、土地の広さによる借地料に変わる。
郡の中心郷を決め、そこに郡役場を置き、内政官が赴任する。
土地の区画整理を行い、街道を改善し、場合によっては新しく作る。
領民を支援し、土地のない者には土地が借りられるようにする。
もちろん農耕地などは開拓し、広げる。
各郷の中心区に郷役場が置かれ、そこにも内政官が赴任する。
そう言った中心区は、街として開発を行い、労働者を始めとして人を集める。
やがて、中心区から開発は広がり、整備された街道を使い行商人や職人が行き来する。
自由貿易郷では、市場が解放され周辺から物が流れる。
アイリの直轄事業の多くは、そこに開設され雇用を促進しながら経済を回す。
官吏院はじめ各直轄院が置かれ、その地区の首都になる。
各自由貿易郷どうしは、最短で移動できるように街道が作られ、連携できるようになる。
自由貿易郷を中心として周辺郷も栄える。
離れた地域や開発が遅れている場所は、支援郷として開発支援を行う。
こうやってアイリの領内は、従来の領主が行っていた政策よりも、
はるかに短期間で内政力をつけていく。
領民は豊かになり、アイリの防衛力で平和になる。
こういったものを進め、支えるのは全て、
アイリの考えを、指揮し実行するための官吏院をはじめとする各実務院の内務官。
アイリに仕官した内政官や、登用した内政官のおかげでもある。
もちろん、陰からのアイリの直轄事業からの支援は大きい。
アイリは、他の領主と違い
政務管理を行う内務官や、実務管理を行う内政官などの存在を作った。
それそれが専門分野での責任を持ち、お互いは協力し連携する。
他領主の領地では、内政官がいても何でも屋的な業務の仕方をしているし
場合によっては、軍兵が内政をしていたりする。
横領が当たり前で、親族の力で能力のない者が上に立つ。
酷いところでは、将官が私有地のように好き勝手支配する。
税も統一性が無く、ある日突然、戦費の為と称して重くしたりする。
毎年のように徴兵が行われ、働き手が減っても税は変わらない。
アイリが、関西支配したときに、真っ先に指示したのは組織解体だ。
面談を行うため、アイリの元に行き、アイリは選別を行う。
私利私服の黄色い存在は、すべてここで排除される。
黄色い存在は、すべて財産没収。
軽い場合は労働罪として下級労働者として働き、やり直せる場を与える。
酷い場合は、投獄罪になり、牢獄内での労働が課せられる。
全く改善の余地がないと判断されれば最悪は処分が待つ。
改善の余地が無い連中と言うのは、ほぼ不満から赤色に変わるから仕方がない。
一方でアイリ直下の人材が上に配置され管理者になる。
選別で残った者は、内政官教育の後、再配置される。
努力すれば認められ上に上がれるが、怠慢なら解任される。
こうやって悪い慣例や旧体質をなくしていく。
アイリは西から順に東へ移動しながら視察し、登用を繰り返す。
その間に見つけた黄色や赤色の存在の捕縛と処分を行った。
やがて、オオツヘ到着し、同じように登用しながら悪人を減らす。
11月末
アイリは、関西方面での課題が終わったと判断。
関西方面軍を移動させていた、ギフへ帰ることにした。
サイエンを始めとした研究者や技術者集団は、
すでにオオサカからギフへ移動していて、アイリの帰りを待っている。
サイエン達からは、面白い報告が聞けそうだ。
アイリは、忙しい中でも次への策を練っていた。
この後もアイリの移動は、しばらく続くことになる。
それは、ギフに帰った後の話だ。




