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No092 アイリの野望、激動編 「北陸方面軍その後」 上杉謙信登場? 9歳8月~

時は前後することになる。


ケンシンは、浅井家初戦で快勝した後、その地の郡を占拠した。

そこから一度西に向かい、西に残された2郡を占拠した。

これで、西部3郡を占拠したことになる。


指揮官との協議で、

更に北へと向かい、浅井家の支配郡を占拠することに決まった。

浅井家を追い詰めて、この領の全領制覇を目指すためだ。


この地は冬に入ると雪が降り、とても行軍できる状況ではないと聞いた。

それは北へ向かうほど酷くなるとのことだった。


この話により冬になるまでに、どこまで北に行けるのかが目標であることを知る。


ケンシンは今までの戦いを振り返り

この軍と兵器があれば、ほぼ間違いなく勝てると思った。


しかしアイリからは、いくら強い兵器でも必ず弱点があると聞いた。

戦いの場において非情に効果が高い火薬武器は、水に弱いという。


「冬になると移動だけでなく、火箭と爆弾が使えなくなるのか・・。」

ケンシンは指揮官協議の時、そう呟いた。


諜報員からの情報では、北へ3郡先が領主館のある中心郷だと聞いた。

ここから隣郡へは、長い山道を通ることになる。


「先に移動速度が速い隊を先行させ、その郡を占拠するのはいかがですか?」

これが、ノブツナの意見だ。


慎重なマサユキは、こう返す。

「それだと威力のある兵器類が無いままでの戦いになると思われますが・・。」

マサユキの言うことはもっともだ。

この軍の強さを引き上げているのは全て、投石機や火箭、移動弩などの兵器。


「騎兵と歩兵、弓兵と弩兵で行える戦術を考えれば、残党軍相手なら勝てると思います。」

若いシゲツグはこう言った。


マサユキはそれを聞いて、面白いと思った。

「ふむ、移動速度を活かして急襲気味に攻めれば、中距離射撃でも何とかなるか・・。」

「弓兵は曲射もできるし、場合によっては火矢も放てる。運用次第と言うことだな。」


ノブツナは、こう意見する。

「仮に敵の抵抗で戦いが長引いても、こちらは兵器が到着するだけでしょう。」


ケンシンは、ノブツナの意見に最初から賛同はしていた。

敵の農民兵はやる気がなく、2度にわたる敗戦で浅井家の武官は壊滅的になっている。


「ならば、話をまとめる。とにかく速度重視で山道は抜けたい。」

「その後の状況で、急襲するか、持久に持ち込むかを判断する。」

ケンシンは、方針をそうまとめた。


マサユキは、それに対して追加で意見を言う。

「後詰め軍に兵器の移動を協力してもらえば、兵器類もそこそこ移動が早くなりますね。」

「それ以外の隊は気にすることなく、移動は更に速くできると思います。」


シゲツグも意見を加える。

「今までの敗戦から、敵の本拠地郡に浅井家本軍は終結しているのではないですか。」

「むやみに兵の消耗は繰り返したくないはずでしょう。」

「本拠地手前で、兵器隊と合流できれば問題なさそうだと思います。」


ノブツナが言う

「諜報員から追加情報が来ますから、移動中にでも問題があれば検討しなおすことも可能です。」

「とにかく今は、移動を早くしたいですね。」


ケンシンは、それを聞いて

「うむ、今すぐこの地を離れ北に移動するとしよう。」

「各軍は編成を見直し、兵種ごとに合流して移動する。」

「騎馬隊を先鋒、次が歩兵、その次が弩兵・弓兵。移動速度重視で急ぎ山道を抜ける。」

こう指示を行った。


各指揮官は自軍に戻り、兵種ごとに分散し、全軍規模で合流させる。

ケンシンが騎馬隊を、ノブツナが歩兵隊を、マサユキが弩隊を、シゲツグが弓隊を

それぞれ率いて移動指揮を取る。


その後、山道を一気に駆け抜けた。


途中、諜報員から追加情報が入る。

敵は各役場付近に防衛の兵が、数百づついるだけで、後は全て領主館に集結したとのことだった。


「なるほど、そこで最終決戦と言うわけか。」

ケンシンは、勝てると思った。

領主が北へ逃げるのを一番警戒していたからだ。

その為、時間稼ぎで手前の山道を抜けた先の郡に、多くの兵がいるのが面倒だった。


しかし、数百程度が分散配置なら兵器など無くても簡単に占拠可能だ。

「勝てるとでも思っているなら、笑止。 時間稼ぎにもならぬわ。」


ケンシンは冬将軍には勝てないが、浅井家には負ける気がしない。

とにかくまだ北へ進まなければならない。


山道を一気に抜け、各軍ごとに再編成し、4方向に別れで侵攻。

これにより、短時間で更に北2郡を占拠した。

これで5郡を制覇したことになる。


決戦の地で北陸方面軍が勝てば、浅井家は豪族に没落することになる。


ケンシンは、郡境に全軍を集結させる。

やがて、兵器隊が合流し、各軍は元の状態に戻った。

兵器隊は、戦わずにそのまま移動するだけだったことになり、予定より早く合流できた。


諜報員からの情報ではやや平地が広がった地になるという。

敵は領主館で防衛の構え。


北陸方面軍は、4軍を別々の方角に分け、まずは領主館周囲の地域占拠を行った。

そのまま、4方向から領主館を包囲。


「ここで一気に決める。各軍、領主を逃がさずに注意せよ!」

ケンシンはそう指示する。

経験を重ねることで、ケンシンは総指揮官としてその才能を発揮していく。


アイリは、ケンシンのスキルを見て全軍指揮に向いていると認識していた。

足らないのは経験だけ。


総指揮官としていろいろな意見を聞き、経験を積むことで全てを糧にできる。

やがては、いちいち協議しなくても、どうすれば最適なのかが認識できる。

ケンシンのスキル効果とは、そういう物だった。


軍神、上杉謙信に限りなく近づいていける存在。

アイリは、自分のスキル能力が向上した時、ケンシンを見てそう呟いていた。


この後、浅井本軍を僅か1日で殲滅。

領主を捕らえ、処分した。


その後も北へと向かい残りの郡を制圧していく。

ケンシンは、その間もどんどん経験を積んでいく。


ケンシンは、全領制覇の報告をアイリに送った。


かなりの距離があるため、伝令が届くまでは時間がかかる。

方面軍総指揮官は、アイリの代行としての権限も持つ。


官吏院に連絡して、この領の管理と防衛兵の派遣を依頼した。


すでに、秋を迎える。

早ければあと1,2か月程しか動けない。


ケンシンは決意する。

「北の領への侵攻を開始する! 目標期限は1か月。」

更に北の土岐家に向けて、北陸方面軍を動かした。


ケンシンから、浅井家殲滅と全領制覇の報をアイリが聞くことになったのは

かなり後のことになるのだった。


策略上アイリがキョウト進軍を影武者に任せ

アイリ本人はオオサカで引きこもっていた時期と重なる。

伝令までもが迷ったことで、報告が遅れたという笑い話でもある。


アイリはその知らせを聞くとすぐに用意していた書状を伝令に渡し、

急ぎケンシンの元へ行くよう指示した。


ケンシンには、労いの言葉と一緒にアイリの領主代理として家名を贈った。

「上杉家性を与え、上杉謙信と名乗ることを許します。」

渡した書状とは、領主代理の任命状だった。


それは、以前皇王様から聞いていた部下に家名を名乗らせる方法だった。


支配領主は、領主代理を任命して、家名を与えることが可能。

これなら勝手に名乗ったことにならず、慣例のルールに違反しない。

しかもアイリは、現時点で最高位の官位も持ち、皇王様の次の権威者だ。


これでアイリの知る前世歴史上の有名人物である、上杉謙信がこの国で誕生した。


この後ケンシンがそれを受け取って、涙を流して感激したのは言うまでもない。

上杉謙信率いる北陸方面軍は快進撃を続け、目標の冬までに2領目を制覇することになる。


それをアイリが知るのは、ギフに戻った時になるのだった。










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