No088 アイリの野望、激動編 「策略」 アイリの企み。 9歳8月~9月
アイリは命名を、オオサカ領(大阪)、ワカヤマ領(和歌山)とした。
そして、ナラ(奈良)を地区名にする。
一応形だけ、2領合わせて20郡になるが、境の線引きは、現代知識のそれだ。
オオサカ領にあった商業街は開発しなおして、サカイ(堺)郷と言う自由貿易都市にした。
あの外人商人との海外貿易拠点になる。
外人は、ポルトガル人だった。歴史では南蛮人としてよく出てくる。
アイリが領主になった以降も滞在しており、鑑定して分かったのだ。
他領との貿易は、進んでいるのかと聞いたら、全くだった。
それはそうだろう、アイリのようにお金儲けをしていないからだ。
せっかく貯めても戦費になってしまう。
だいたい、火縄銃1丁が2億とかは吹っかけすぎる。
500万に下がったのは下がりすぎだが、献上品扱いだろう。
今後の専門貿易契約を、もぎ取っていったのだから、あちらも満足だと言える。
ポルトガル人もアイリがこの国最大の領主で権力者だと知って驚いていた。
いい金づるが見つかった、というやつかも知れない。
商人たちも驚いていたが、非常に協力的で自由貿易郷としての再開発を喜んだ。
ソウキュウは、人物事典の文字から今井宗久の方だった。
まぁどちらでも歴史では、信長との関係者だからいいのだが。
ワカヤマ、ナラ、オオサカも中心区は主要都市として自由貿易郷にする。
その上、オオサカには巨大な砦を建設するつもりだ。
アイリは、それを大阪城と名付けた。
アイリの野望とこだわりでもあるが実のところ策略的な要素がある。
アイリは、オオサカ、ワカヤマ、ナラが落ち着いたら。
大津と京都を取るつもりだ。
信長包囲網イベントを、終わらせ次のイベントに向けて準備する。
寺関係のイベントは寺がない以上、イベント発生はないと考えた。
だいたい、一向宗がらみのイベントが無かった。
そこで次のイベントである本能寺の変は、
アイリの想定では、トウキチロウによるミツヒデへの工作がありそうだと考えた。
京都まで取ったら、ミツヒデはその場で改名させて「テンカイ」になる。
一応光秀としてやることが終わったら、一時オカザキで募兵指揮官をしてもらう。
自分で軍を編成したら、そのまま関東方面に送り出す予定だ。
テンカイとは南光坊天海のことで、歴史の謎人物でありミツヒデ疑惑がある。
アイリは、織田家でありながら徳川家でもある立場を利用して
一気に本能寺イベントを回避させるつもりだ。
そして北陸方面軍のケンシンは、たぶん武田家と戦うことになるだろう。
何となく歴史の強制力的なものがあると感じている。
信長役のアイリに類似の歴史イベントがあるくらいだから、上杉VS武田のイベントをしてもらう。
その為、武田家を関東から追い出し徳川侵攻イベントを阻止しながら
同時に関東での北条家滅亡イベントと家康の江戸入場イベントを進めていく。
それらを行ってくれるのが、関東方面軍でもある。
豪族退治とは、北条家を想定した位置にあるから好都合だった。
関東方面軍は、たぶん豪族程度が相手なら楽勝だろう。
その後、彼らが考えるなら関東平野侵攻が予想される。
アイリはそれだけ、関東方面軍に無理して策略家を揃えたのだ。
経験豊かで、アイリが弟子のように育てたメンバー。
きっとアイリが細かく言わなくても色々考えて動くはず。
戦略的に言っても、南北を挟まれた武田家は身動きが難しくなる。
家康の江戸入場後と言えば
歴史イベントでは、次は「大阪の夏の陣・冬の陣」と言うことになる。
アイリは、大坂の陣イベントで「ヒデヨシ」を迎え撃つつもりだ。
形だけ歴史イベントを継承できれば、立ち位置などいいだろうとの考えでもある。
マタベエがいるから、アイリがいなくても大阪の大砦「大阪城」を任せておくつもりだ。
ヒデヨシが西から攻めてきたら、もちろんアイリが徳川家の立場として迎え撃つ。
立場が逆になるが気にしない。
ヒデヨシには、早々に退場してもらいたい。
関ケ原の合戦など、すっ飛ばして江戸幕府構築イベントに進む。
これがアイリの企みだった。
アイリはその後、この国をどうするのかは考えていない。
武田家も消えてもらうことにはなるだろうが、この国の統一など今は考えていない。
夢は、世界を渡る事。
ポルトガル人の存在を知って、その思いは大きくなった。
「早く大陸に行ってみたい。」アイリはオタク歴女だ。
日本の戦国時代だけでなく、世界の戦国時代が好きだ。
特に中国などは、出来れば見ておきたい。
数々の戦国歴史はあったのか、英雄はいたのか。
考えると胸が高まる。
順序は変だが、秀吉の朝鮮出兵イベントを代行してもいい。
秀吉のように朝鮮半島を支配する興味はないが、イベントの形だけやって大陸へ行く。
その為に、この国を統一しなければならないとしたらその時はその時。
最終的には、妹のアイルにこの国を任せる。
妹は「統治」のスキルがある。
アイリが基礎を築いておけば、それは継承されるだろう。
まだまだ、その策はスタートしたばかりで、理想の形には程遠い。
「強い思いを持って、努力する。」
アイリはいつもの言葉を口にした。
9月に入る。
マタベエが、オオサカに戻った。
紀伊半島の戦後処理に、時間がかかってしまったようだ。
紀伊半島を南進し、クシモトから輸送船で戻った。
タカヨリも、官吏院から人材が来て開発が進んだことを確認し、
ワカヤマから戻ってきた。
北に行かせた、ウジサトとウコンはそのまま待機させている。
アイリはかねてからの計画通り、大津と京都を取る。
領全体を支配するつもりはないが、この二つは近くにあって平野部でもある。
イベントから言っても重要な場所になるから確保しておきたい。
落ちぶれかけた京極家はどうでもいいが、西の領主に対する厳しい戦いになるだろう。
南の赤松家は滅亡、南西の細川家はアイリに降った。
この情報は既に、西側の領地で拡散されている。
新領地を得たことで、アイリは今、正二位左大臣、職名はそのまま近衛大将だ。
当然2領を加えた領主任命も受けた。
左大臣なんて源氏物語に出てきたのを知ってた程度の物だ。
名誉官職だから、ありがたく受け取っておいた。
一応こういう物でも周囲にとっては脅威になるし、領民にとっては安心になるらしい。
移民や仕官者が集まるので、心で皇王様に感謝しておく。
実は信長役だったから、右大臣が結構気に入ってたのは内緒だ。
京都、大津へは、降伏勧告後に侵攻となる。
アイリは、両家に使者を出した。
使者の返答後、どちらに転んでも進軍になるのは違いない。
アイリの軍は、収穫期の兵の問題はない。
しかし相手はきっと徴兵が思うように出来ないはず。
徴兵していた農民兵も解散しているだろう。
あのヒデヨシですら、侵攻が止まっている。
武田家も同じだ。今動いているのは、アイリの方面軍だけ。
方面軍は、各地で戦功が続いているらしい。
遠くて情報が来るのが遅いが、人選には自信がある。
「さて・・もう少し、新人に経験を積んでもらうかな。ふふふ」
アイリはそう言うと、合流していた関西方面軍を以前のように二手に分け、進軍の指示を出した。
南関西方面軍は、大津侵攻軍で、西関西方面軍は、京都侵攻軍。になる。
今回も二面作戦だ。
アイリは、大津辺りは1郡で京都辺りは3郡か4郡程度を取ればいいと想定している。
北の山間部には全く興味はない。
一応歴史上の重要ポイントとして支配出来たら終わり。
後はじっくり内政のターン。人材登用にも力を入れたい。
他にも課題はいっぱいだ。
準備が整うと北へ進軍する。
北にいる二軍と合流後、アイリは尼子家の京都を目指す。
両家に行っていた使者からの返答は、やはり「徹底抗戦」だった。
一度領主になった権力者は、ギリギリまで徹底抗戦したがるから面倒だ。
いっそのこと前線に出て来てくれたら楽なのだが。
父マサツグに再び別れを告げ、それそれ別方向へ進軍した。
マサツグは大津攻めが終わったら京都へそのまま侵攻する。
特殊諜報員からの情報では、京都中心と大津共に居館があるという。
そこでは防衛兵が待機しているのは間違いないらしい。
アイリは、一計を案じている。
あまり大阪を空けるのは良くない。
西で動きを止めたヒデヨシとトウキチロウが何をしてくるのかわからないからだ。
トウキチロウが紛れ込まないように西からの移民移動は、一時止めている。
アイリの鑑定が無ければ見破れないからだ。
その為、対策で防衛兵や後詰軍以外に、アイリの特殊諜報員が領境に張り付いている。
隠れて入ってくるものは、即刻処罰対象という厳しい指令を出した。
時間をかければ、善人まで操れるトウキチロウの変な力に対する警戒でもある。
「奴は必ず動く。」アイリはそう思った。
京都を取っている間か、その後かはわからない。
その為、方面軍に随行する以外の特殊諜報員が総動員で集められた。
それは戦闘が得意な者も多い。
アイリは他にも対策を行っている。
実はアイリ自身は、京都へ行かない。
シガ領のヤイズに長くいた時
仕官採用したタカカゲとムネシゲに指揮官補としてアイリの軍を任せる。
京都侵攻の総司令官は、ミツヒデだ。光秀としての最後を飾ってもらう。
タカカゲは、小早川隆景の同名者で、ムネシゲは、立花宗茂の同名者。
二人とも西で謎の軍に負けて領を追われた者達。
後になって気が付いたがヒデヨシ軍だったのだろう。
タカカゲは、ミツヒデ並みの経験者で技能も高い。
ムネシゲはまだ15歳で若く、第二世代になる。
アイリの司令官も次々10代の第二世代が育ってきている。
タカカゲはともかく、ムネシゲは大抜擢だ。
ヤイズから以降、アイリは二人を側近として連れ歩いた。
一時期のジロウの様なものだ。今はナオトラなのだが・・・。
まだ、芽が出ていないスキル持ちでもある。
ちなみに歴史では、ギンこと誾千代とムネシゲこと宗茂は、
仲が悪い夫婦としての記録があったりする。
側近としてアイリの仲間たちと近い距離にいたときは、結構仲良かった気がするのだが・・。
アイリの方面軍にも一緒に連れていて、アイリの隣で直接指揮を見ている。
同じ指揮官補だが、タカカゲのほうが上位になる。
ミツヒデが京都で消えた後、ミツヒデが率いていた軍を指揮するのはタカカゲになる。
ムネシゲは仮の指揮官として、大阪にアイリの軍を戻す役だ。
アイリの軍は一番強く経験者揃いだから、上が多少頼りなくても問題はない。
アイリは京都に向かう振りをして、仲間とメイド隊、抜刀隊を引き連れて大阪に帰る。
サイエンは、ポルトガル人から買った銃と火薬を元に研究中だ。
大砲の実戦試用で満足して、次の課題に取り組んでいる。
アイリが以前話していた火縄銃の改善である。
長距離射撃と殺傷力の向上が次の課題になる。
その次は精密射撃が可能になる事。
ライフリングと銃弾の形状がアイリからのヒントになる。
それと、信管と撃鉄もそうだ。
完成したら、ポルトガル人に4億で売るのもいいかもしれない。
それは冗談だが・・。
決して2億を根に持っているわけではないと言っておく。
アイリが何故そこまでするのかは、すべてトウキチロウ対策だ。
一方で歴史に対する対策でもある。
背格好が似た女の子を使い、アイリと同じ服装で従軍させているから
知らない人から見れば、アイリは京都に存在する。
アイリが刺客対策の時、偽装工作として使った手だ。
そこにも周辺に特殊諜報員がいる。
影武者の女の子は京都で消えるから、アイリはそのまま京都にいることになる。
特殊諜報員もそれに合わせて、偽情報を広げることになる。
アイリの目を盗んで大阪に来ても、京都に刺客を差し向けても対策できるようにしている。
アイリは大阪にいる間メイド服で、メイド隊として領境周辺の監視を行う。
もちろん、鑑定をしまくる。
ここまでやって、何もして来ないならそれでいい。
アイリはその間、内政をやるだけだ。
そして城の建設を進める。
まずは広い範囲に盛り土をして、その周囲を石垣で使ったように成型した石で囲う。
盛り土が崩れないためだ。
盛り土を土台として上に大きな屋敷をいくつか建て、屋上を作り、屋根だけ乗せる。
二階建て構造の砦になる。
高さからいえば、盛り土を合わせて3階建てだ。
そう言う建屋が周囲に長屋のごとく連なる中心に、さらに盛り土を行い土台にする。
その盛り土の土台にも同じ作りの建屋が立つ。
これがアイリの大阪の領主館を兼任する。
アイリの領主館は、高さからいえば4階建てになる。
この国の技術レベルでできる最大の工夫がこれだった。
これによって一応、城的な体裁になるとアイリは思った。
周囲の砦の建屋は、兵の屋内駐屯だけでなく、食料や武器庫も兼ねる。
もちろん1階からの射撃攻撃が出来るようにしてある。
盛り土の上にも弩や投石機も並ぶ。
盛り土のない平地でも同じような2階建ての砦の建屋を連ねて建てる。
各建屋の屋上には、飛距離の長い火箭や弩が準備される。
上からの遠距離攻撃が出来るわけだ。
火箭を使うから雨対策で屋根を付けることにした。
発射時に雨に濡れなければ、それなりに飛んでいく。
アイリが、なんちゃってレインコートを作った時のように撥水効果がある樹液を塗るだけで
さらに雨対策の性能は上がる。
建物の周囲は石壁と堀で囲い、中には遠距離曲射攻撃の兵器を敷地内に配置する。
堀は水路で近くの川から水を引く。これは平時に水路として輸送にも使用できる。
城内にも水が引かれ、いざとなったら、ろ過して飲み水に出来る。
水浴びも可能だ。
もちろん敷地内には、井戸がたくさんあるから心配ない。
川が近いから少し掘れば井戸になる。
高さを活かし、壁と堀に阻まれることで
相手が攻撃できないのに、こちらからは攻撃できるということになる。
石壁はわざと隙間を作り、弩や火縄銃でねらい撃ちが出来るようにする。
もちろん出入りのために門は必要になる。
逆にそれを罠としている。門は4方向にあり、嘘の門と本物の門がある。
嘘の門を入れば、落とし穴に落ちて袋叩きだ。
もちろん中からはね橋を下ろせば、そこが使える。
中からの突撃門に変わるわけだ。
正解の門に入っても狭い通路になっていて、大軍は押し寄せられない。
その通路は下に下がり低くなるから周りから見れば、上半身むき出しの鴨にしかならない。
これは通用門として普段使用する門になる。
もちろん門自体は、閉じればそれなりには頑丈だ・・・この国にしてはなのだが。
攻城兵器などを持ち込まれたら、門がやばいのは確かだ。それは仕方がない。
盛り土の上など、高い位置への荷物移動は滑車と歯車を使った、簡易エレベータで行う。
人間の移動もそれで可能だ。もちろん階段もある。
降りるときは滑り台も使える。これはアイリが遊び心で加えたものだ。
堀、壁、で囲まれ、砦の建物が周囲に並び、盛り土の上にも同じように砦の建物が並び
更に中心の盛り土の上にも、武器を揃えた屋上がある領主館が存在するという構図になる。
外から見れば異様な形だが、
アイリに言わせれば、完成すればこの国初めての城だ。
だからこの全体をもって「大阪城」と呼ぶ。
アイリは従来の300人が駐屯できる砦の百倍の兵が駐屯出来ると想定している。
それだけ広大な敷地を使う。
西側からの主街道は海沿いの一つだけだ。
北から大廻りして、山道を越えてくる以外は、ここはアイリの支配地への入り口になる。
東への玄関口だ。
領境の川を越えてやっと侵入できたら、こんなものが待っていることになる。
海側は、水軍が駐屯し、武装船が並ぶ。
今回、武装船の武装にも見直しを行い、
今までの連弩と投石機をやめて、大砲と火箭を取り付けた。
大砲があれば、中型以下の木造船など当たれば、ほぼそれでバラバラだ。
火箭を使えば、海上からの対陸上支援が可能になる。
水兵は連射可能になった弩と刀を使い武装度が跳ね上がる。
水兵による上陸戦闘も可能だ。アイリはこれを、海兵隊と呼んだ。
これからは、単なる海上戦の水兵ではなく、海兵隊が主力になるだろうと予測している。
それは今回の関西における作戦で、海路からの奇襲による上陸戦の有効性を示したからだ。
今後はそういう方針での育成訓練に変わる。
水軍を単なる海賊対策や輸送支援ではなく積極的に運用する。
四国や九州、果ては大陸に乗り出すときに必要になると考えた。
目先は、西の中国地方になる。遠くない先の話でもある。
こうして、また新しいことを、いろいろ企むことも楽しいアイリだった。




