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No086 アイリの野望、激動編 「西関西方面軍」 細川家領主の動向。 9歳7月~

アイリが迎撃践祚想定して布陣を完了させた頃。

皇都周辺にいた特殊諜報員が、アイリの所在を知り戻ってきた。

皇都組と皇都隣領組だ。


「これで、生の情報が聞けるわ。」

アイリは特殊情報員たちの帰参をとても喜んだ。


位置関係も詳しくわからなかった場所が、この地にいることでわかるようになる。

皇都は、現在アイリのいる場所から北西の位置にある。

前世の地理情報からいえば京都ではない、やはり京都と大阪の間だった。


西の川を越えた先はシガ領からいうと西南の領になるらしい。

すると、京都の位置は西の領と言うことになる。

「そして南西の領がここだとすると南とはどこ?」

アイリは考え込んだ。


前世で言うと奈良のあたりだろうか・・・。

南だと言われる領からも特殊諜報員が戻ってきた。

位置関係からいうと奈良の南だと推定。


「やや・・・となると和歌山ってどこに所属するわけ?」

ここでも疑問がわいてくる。

とにかく領境線というのが、どうにも前世現代や歴史知識とは異なる。


領地も広かったり狭かったりで

ルールがどうなっているのか、皇王様に聞いておくのを忘れていたと反省する。

でも答えがなんか適当だったりするのが怖い。

以前も家名について聞いた時、それはただの慣例だからと言われた。


家名は領主しか名乗れないのではなく、領主が家名を名乗るということ自体が権力の象徴になる。

他との差別化だ。それにより迂闊に力もないのに家名を名乗ると目の敵にされる。

何時しか権力者の間で暗黙化した慣例と言うルールだった。


和歌山方面で、父に付けていた特殊諜報員が来た。

どうやら、和歌山方面までのルートがつながったようだ。

「父上は、いつ来てくれるのだろう」

アイリはそう思ったが、次の情報でそれは打ち消されることになった。


アイリが言う和歌山方面に、確かに領主館はあった。

防衛兵はそこそこいたが、あまりそこを守り続ける感じではなかった。

占拠後に、捕らえた兵から領主は北の山間部に入るという話を聞いた。

それを父が追っているらしい。


アイリが聞いて思ったのは、奈良の南にある領。

それは和歌山まで含めた領ではないかと言う事。

厳密にいえば、シガ領とは隣接していないが・・いや厳密には甲賀のとなりだ。

間接的には近江主要地の隣になるし、ミエ領とは完全に隣だ。

西南の領なんて、もっとシガ領と離れている。


大体の位置関係は分かった。

「自分の支配地にしたら、線引きしなおしてやる。」

アイリはまた一つ野望を持った。


奇しくも、危険視していた南と南西の領に自分たちが侵攻していた。

なるほど、シガ領への牽制の為、両方とも領主が軍を率いて北の方にいるわけね。

まさか相手も後ろから来るとは思ってもみない。


こうなると、父と合流して戦うというのは無理だ。

むしろアイリがいる場所は、東からの側面攻撃が発生する可能性がある。

「父上がそれを抑えてくれると考えるならのなら、いいとしよう。」


こうしてアイリは一人納得するのだった。




細川家では、領主が何やら悩んでいた。

自領が急に攻められたのだ。領主館は占拠され、妻が捕らえれらた。

妻と領主館にいた使用人などは解放され、今は領主の元に戻っている。


さっぱり訳が分からない。


領主は、もともと1郡しか支配できない弱小の小豪族だった。

その時は皇王様を守るという信念で頑張っていた。

やがてミツヒデが来て、同じ信念を持つことで力になってくれた。

そこから一つづつ支配地を増やし、やがて4郡の支配まで進んだ。


その時、トウキチロウと名乗る男が仕官希望でやって来た。

何故か皇王様を守るはずだった自分の信念は、全領支配へと変わっていった。

皇都で、皇王様の奥方が亡くなり、皇王様も病に伏していると聞いても気にしていなかった。

5郡を支配下に置き、現領主と力が均衡するとますます権力欲がわいた。


その頃皇王様の弟親王だと言われる方が亡くなった。

既に皇王様は、皇都にはいなかった。

このあたりからミツヒデとの意見が食い違いだし、やがてミツヒデを左遷させた。

重臣だったミツヒデの後に居座ったのがトウキチロウだ。


トウキチロウによって支配地が増え、細川家を名乗った。

やがて全領支配者になる。

全領地の完全支配は、この国ではまだ珍しく、非常に満足した。

ところが上には上がいて、織田家の領主は次々と領地を拡大していく。


気が付くと、この領主を妬むようになっていた。

トウキチロウから注意すべき相手だと言われ。

様々な手段を進言された。すべてトウキチロウに任せた。

周辺他領との同盟もそうだった。


同盟が出来上がると、何故か西の方にある領から連合の誘いが来た。

トウキチロウは、半ば勝手にそれを承諾すると。

他の同盟領もそれに賛同した。

その時までは確かに織田家を敵視し、妬んでいた。


トウキチロウは連合が出来ると、何も言わず突然いなくなった。

それまで持っていた織田家に対する怒りにも似た感情は消え、

自分は何をしていたのだと考えるようになっていた。



そこに来ての、織田家の奇襲だ。


何が何やらわからない・・・。

織田家は、皇王様の直臣で、右大臣近衛大将の任にある。

何時しか考えなくなっていた皇王様への思いは戻っている。

聞くところによると、ミツヒデも織田家に仕官しているという。


捕らえれらた妻が言うには、とても優しい少女で自分を労わってくれた。

領主の元に返すと言い、いろいろ準備してから境まで見送ったらしい。

決して悪い人物ではなく、すばらしい人物だという。

自分は妻にいつも織田家を悪く言っていたらしい。


織田家の領主は、妻にトウキチロウと言う男は危険だと告げた。

妻はトウキチロウのことを知らなかったのに、織田家の領主は知っていた。

自分は操られ利用されている。妻はそれを気にしている。


ミツヒデの最後の進言は、織田家のように商人街を作る事だった。

その後ミツヒデはいなくなった。


商人街はミツヒデの希望通り作られたが、自分は何もしていない。

きっとミツヒデが準備していたのが、後任のおかげで実現したのだろう。

あの男、トウキチロウが来てから自分は変わってしまった。


しかし、織田家に攻められた以上、対処しなくてはならない。

細川家領主は、それで悩んでいた。

部下たちは警戒して、とりあえず南へ向かうという。

いろいろ考えながらそれを了承した。


自分は本当に操られていたのではないか・・・。

領主の心に疑念がわくことになった。



南へと軍は移動し、

織田家の軍が布陣している場所というのが郡境から更に南だと知る。

ここに移動する間、徴兵した農民兵が進軍を拒むという事態が発生した。

織田家とは戦いたくないというのがその概ねの様だ。

軍法上それを許すことはできず。

無理やり従わせて、織田家と対峙することになった。


織田家側は迎え撃つかのように横に展開した見たことがない布陣だった。

しかも、槍兵がいない。

前方には何やら変なものが並んでいた。


警戒しながら、こちらも相対するように布陣する。

ミツヒデもトウキチロウもいない為、下の者を将官に任命している。


布陣が完了すると、織田家から使者が来た。

トウキチロウは危険な存在だから、そこにいるなら話をするという。

しかしトウキチロウはいない。

返答は本人はいないと返した。


しかしここまで気にするとは何だろう。

こちらの将官はじめ、武官連中は闘う気でいるらしい。

その後の使者のやり取りはなかった。


兵数はこちらの方が多く、勝てる戦いだと将官は盛んに言う。

自分はまだここに来ても色々考え悩んでいた。

下手をすると反乱軍扱いになってもおかしくない。

敵対していたのは事実だからもう遅いのかもしれない。


将官はしびれを切らして、全軍突撃の指示を出した。

武官はやる気になっているので、

やる気がない農民兵を追い越して、最前線で突撃していく。

将官までが最前線で突撃した。


すると前方から炎を上げて、何やら飛んでくるものがあった。

それは矢のように異様に早いが、大きい。

距離があるにもかかわらず、その大きな矢が最前線にいた武官たちの元に届いた。


それとともにパーンと音がして、広範囲でドカンドカンという聞きなれない音が聞こえる。

煙が上がって、あちらこちらで一瞬炎の様なものが見える。

それはしばらく続き、やがて止まった。

煙が消えると、農民兵は逃げ惑い、最前線にいた武官はみな倒れていた。


あっと言う間の出来事に驚いた。

織田軍から大声が聞こえる。

「戦うなら何度でも戦う。逃げる者は追わないから逃げていい。」

逃げ惑っていた農民兵はあちらこちらへ逃げていった。


残った兵にも動揺が走る。しかし数はまだこちらの方が多い。

ただ気がはやっていた将官や武官はもういない。

特に残った農民兵の動揺が大きく、だから戦いたくなかったという声が聞こえだす。

それを武官が抑えるのが大変だった。


織田軍はこちらを攻める気はないらしい。

こちらから攻めたら先ほどのようになるというのはわかった。


この後、膠着状態になる。



アイリは、細川軍が攻めてこなくなったのを見て。

「これは、にらめっこが続くな。ふぅ」とぼやいた。


あたりが暗くなってくると、アイリは一計を案じる。

「相手が動かないから、いろんな夜襲でも仕掛けてみましょうか。ふふん」


抜刀隊に夜になったら敵陣の横に回り込んで、後方をかく乱してほしいと指示する。

案内は夜目が効く縮諜報員に任せる。

「出来る限り、気づかれないようにお願いね。」


戦場で敵と対峙したまま、夜を迎えるのは非常に危険だ。

アイリは、かがり火を焚いて自軍の周囲を明るくしている。

花火祭りでやっていたような様相になる。

長期の野戦のために準備していた。


細川軍は動くに動けず。そのまま夜を迎えることになった。

こちらは、長期になるとは考えず何も準備できていない。

なんとか、焚き火程度のものが用意されたに過ぎない。


細川軍からはアイリの予想通り、夜になると逃亡兵が発生する。


その時、陣の後方で騒ぎが広がる。

「敵襲」「敵が襲ってきた。」「俺は味方だ。」

「仲間同士戦うんじゃない。」

混乱して、乱戦になっていく。


混乱に紛れて、前方にいた農民兵がさらに逃げていく。


夜が明けると。後陣は、ほぼ壊滅状態だった。

前方の農民兵もすでに半分以下になっている。

細川家領主は、たまたま中陣にいて周囲に防衛兵がいたから助かっている。


日が昇ると再び織田軍から大声で勧告が出る。

「逃げる者は追わない。今のうちに逃げないと後悔することになる。」

我慢していた農民兵は、これによってほぼ全員が逃げていった。


もうそれを止める気力は、武官にはなかった。

寝不足と精神的な疲労がそれを鈍らせていたのだ。


その日も対陣したまま夜を迎える。

先日の夜襲を警戒して、細川軍では皆起きている。


すると周囲から音がしだした。

ドンドン、ガンガン、バンバン

「敵襲か」「警戒しろ」細川軍は騒然となった。

音は、夜中暗いうちは、ずっと続いた。


次の朝を迎えると、細川軍は撤退の声が出始める。

あまりやる気がなかった領主もかなりまいっている。

後方から。ドドドドドと言う音が響く。

地面が揺れるような地響きだった。


「敵襲」「敵は後方から来ている」「何とかしろ」

もうやけくそ気味の声も聞こえる。


アイリは夜中音を出し続け、その間に騎兵を後方に配置していた。

音によって移動の音を消し、注意を音の出るところに向けさせる。

しかも相手は寝不足と精神疲労が重なる。


朝になって明るくなると同時に騎兵は突撃を行った。


混乱していると前方から歩兵が迫ってきた。刀兵である。


アイリは、騎兵の突撃で混乱するのを見たら、その時歩兵突撃だと指示していた。、

「すでに戦う気力もあまりないはず。出来るだけ捕縛してくださいね。」


あちらこちらで降参したり捕縛される兵が出る。

領主も逃げ惑っていたが、気が付いたら敵兵に囲まれていた。

ここに至って完全な敗北を知ることになる。

むしろ戦いが終わることで安心できたかもしれない。


領主はアイリの前に出ることになった。


アイリは言う。

「まだ戦う気があるなら、解放しますから。逃げてください。」

「但し、次はないと思ってくださいね。」

領主は捕縛を解かれた。


その時、ミツヒデがその場に来た。

「あなたは、トウキチロウに騙されていたのです。」

「それをよく考え、まだ織田家に抵抗するのか結論を出してください。」


領主は逃げる選択をしなかった。

ミツヒデに過去のことを謝り、トウキチロウのことをアイリに話した。

反省してアイリに降参し、領主返還の礼を取った。


アイリはそれで許し、しばらく領内を改善するのに力になれと言った。

斬首でも、追放でもなく、臣下として迎えるという。

領主は再びアイリに臣下の礼を取った。


アイリは、領主が臣下の礼を取った時点で鑑定の力が戻っていた。

領地は仮認定だが、領主が降参した時点で黄色でも赤色でもなかった。

トウキチロウの謎の力は、領主からの話で聞くことが出来た。


アイリは、トウキチロウには、暗示系か催眠系の力があるのだろうと知った。


元々悪人ではなかった領主はその力で、アイリを妬み利用されたのだろう。

今は青くなっているから、もう裏切ることはないと思う。


アイリの言う、信長包囲網の一角はこうして崩れた。



「それにしても厄介な相手だわ。」

アイリは自分の敵に位置する人物をそう言った。


それともう一つ、領主の話を聞いて気になったことがある。

トウキチロウとヒデヨシは最初からグルだった。

こうなると、周辺領主も何らかの影響を受けているかもしれない。


アイリは、父の元に駆けつけようと思った。

鑑定で詳細反応が出なくても、悪人かどうかがわかる。

敵対し続けるなら赤色は消えない。


それを確認する。もし善人なら無理に戦う必要はない。

細川家が臣下になった今、南の領主は孤立している。

回り中がすべてアイリの支配下にあることになる。

その上でどう判断するか・・・。


もちろん、黄色ならそれなりの対処になるし

赤色が消えないなら処分するしかない。


とにかく父の元に急ぐ、ここから東に向かえば山道を通らなくて済むらしい。


翌日アイリは、指揮官に告げる。

「私は、父上のところに駆けつけるから後はお願いします。」


アイリの軍は東へ移動になるのだった。





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