No080 アイリの野望、激動編 「近江侵攻戦5」 平穏。 9歳1月~
アイリの軍の転換期とも呼べるものが近くに始まります。
1月、アイリは9歳になっている。
初めてと言えるオカザキ以外での聖祭日で数え年を迎えた。
以前ギリギリの時もあったが間に合っていたから、ノーカウントにしていた。
実はアイリが聖祭日を戦場で迎えることになって気にしていたのは、神社。
聖祭日に祭祀として行う神社でのお祭りだ。
アイリは、シズオカに行ったときフジカワで富士山を見て神社をここに作ろうと考えた。
シマには伊勢神宮だとかアツタには熱田神宮だとかいっていた。
各地に神社を作る計画は実行され、アイリが目を付けた場所と自由貿易郷には神社がある。
聖祭日には、その神社の境内を開放して自由に露店が出せる。
夏の花火祭りが夏祭りなら、冬の聖祭日は冬祭りだと言って乗り気だった。
アイリは、それを楽しみにしていた。
まさか近江の東部6郡を取るのに、ひと月かかるとは予想していなかったのだ。
それはアイリがいろいろな事態に振り回され、警戒しすぎていたというのもある。
過ぎてしまったものは仕方がない。
今アイリは、まだ領主として地域命名を考えていた。
年が明けると、止まっていた時間が動き出す。
皇都に派遣していた特殊諜報員は、工作の為に皇都周辺領に移動させていた。
近江隣領にも工作の手は伸びている。
彼らには工作だけでなく、情報取得もお願いしていた。
現在まだアイリは、草津の地にいる。
皇都周辺や近江隣領から距離が近くなったことで、それらの情報伝達が楽になった。
年が明け、様々な情報を聞いたが、驚いた情報が入ってきた。
皇都から更に西に行っていた特殊諜報員から来た情報だ。
西に短期間で3領を支配した大領主がいるとの事。
聞いた情報から、アイリの前世知識で岡山、鳥取、兵庫の辺りだと想定。
その領主が名乗った家名は、「豊臣家」
領主の名は「ヒデヨシ」だった。
驚いたのは、それだけでない。
近江周辺4領の領主が、豊臣家と同盟を結び連合になった。
アイリが驚いたのは、豊臣秀吉の完全同名者の存在。
これは、トウキチロウと合わせると、同時期に豊臣秀吉が2人いることになる。
しかも、その片割れのトウキチロウがいた細川家が連合に入った。
細川家の領主は、たぶんトウキチロウの手によって操られ
近江周辺領主と盛んに使者のやり取りをしていたはず。
これらは特殊諜報員だけでなく、ミツヒデから聞いた情報も含まれるから信憑性が高い。
その4領がヒデヨシと手を組んだ。
これはある意味、トウキチロウとヒデヨシが手を組んだと言える。
昨年末から、どうやら謎が多すぎる。
しかしわかることは、
プチ信長包囲網は強固になって、マジ信長包囲網になった。
アイリは、この謎に挑む。
わけではなく、領主として地域命名を考えることにした。
まぁ出来ちゃったものは仕方がない・・・。
言っておくが、これは子供の事ではない。
アイリは、とても楽天的な幼女だった。
早く地名を付けて、6郡をどんどん開発するのが今のアイリの使命だ。
名無しの放置では、領民に面目が立たない。
結局、命名が苦手なアイリは、前世の知識で
近江は、シガ(滋賀)領にした。
北から、
キノモト郡(木之元)、ナガハマ郡(長浜)、マイバラ郡(米原)
ヒコネ郡(彦根)、ハチマン郡(八幡)、クサツ郡(草津)
近代名だと東近江やら近江八幡やら
やたらと近江と言う名が重なったから安直にしただけだった。
東部4郡は今だ支配外だが、いつものように命名だけしておく。
北から、
イマズ郡(今津)、マイコ郡(舞子)、カタダ郡(堅田)、オオツ郡(大津)
大津以外は取っても美味しくなさそうだが、大津を取ると連合に近く危険になる。
何せ前世での大津は京都の隣だ。
皇都の位置は知らないが、ミツヒデが近江攻略する足場にしたのが大津らしいから。
細川家の隣にはなると思われる。
よって南からの西部侵攻はやめて、領地経営に専念することにした。
京極家はいわば緩衝地帯として放置する。
向こうから来なければ、動くことはない。
アイリの持つ兵器類は、迎撃戦に強い。
マイバラ(米原)は、重要拠点として、自由貿易郷にした。
アイリの領から一番近く、東部の中心にすると考え、早くから開発をしている。
官吏院と各実務院を置き、アイリの各事業も開設展開中だ。
ちなみに、甲賀もとったが伊賀で苦労したので、
開発特別区にはしたが、郡役場はない。
ハチマン郡に属し、郷役場を配置している。命名はコウガ郷だ。
ハチマン郡の南にある野州川周辺に自由貿易郷を作ろうかと計画している。
それが出来たら、甲賀は支援郷にする。
南の瀬田川が領境と郡境を兼ねる為、特に大きな砦を造ることにした。
北はミツヒデに聞いた、シオズ(塩津)を西の京極家対策で郡境の砦にする。
北の領境はキノモトの北方になるので、浅井家対策でそこにも砦を造る。
北の二つの砦ができれば連携して防衛できる。
砦が完成したら北に行っている攻撃軍は、クサツへの移動を指示している。
援軍3軍は一度ギフに戻し、指揮官訓練と再編成の後、再びマイバラへ移動させる。
ミツヒデも援軍の指揮官補に同行させて、指揮官の勉強をしてもらいたい。
援軍の指揮官補3人は、アイリの指揮を直下で見て戦場を経験したことで
指揮技能が向上している。
敵として経験したミツヒデにもそれはある程度影響した。
しばらく努力すれば、正式な指揮官として4名増えることになる。
北でアイリと一緒に戦った7,8,9軍の指揮官も実戦経験を積んだことで
やはり指揮技能が高まっている。
そのうち単独行動も可能になるだろう。
琵琶湖の南湖は対岸との距離が近く危険なので軍港を作り
琵琶湖での湖戦が出来るように準備する。
それ以外でも各郡に、最低1つは港は作る予定だ。
湖戦の為だけではなく物流や漁業のためでもある。
それ程琵琶湖は大きい。
だから早めに、造船にも力を入れたい。
アイリが命名を終え、皇王様に領主申請を行うと
皇王様から、また上位の官位が授けられた。
アイリはそれを建前上、ありがたく受けることになった。
これによりアイリは、従二位、右大臣になり、職位は近衛大将になる。
奇しくも歴史での信長と一緒だ。
以前アイリは、腹黒い麻呂的な人が何か言いそうで嫌だった。
そういう連中は、トウキチロウに駆逐されているからいいだろうと納得した。
5領を支配する大領主で、右大臣、近衛大将というのは、
皇王様の計らいで全国に知られることになる。
実は皇王様と言うより、諜報院が拡げているのだが・・。
このおかげで、アイリの支配領域には、さらに多くの人が集まることになる。
今まででも、かなり多かったのがさらに増加していく。
ここシガ領にも、アイリがいると聞いて開発途中なのに人が集まりだした。
その多くは、シガ領と命名した周辺領からの領民たちだ。
もちろん仕官希望者も沢山来ることになった。
工作扇動のせいで、周辺領を見限り領民やら元家臣やらがやってくる。
浅井家や京極家からも、当然のように移民が来た。
仕官希望者も多くいるが、それは直接アイリと戦った経験者たちだった。
アイリに許され逃がされて感謝していたらしい。
アイリは、北の戦いで降参したり捕縛した兵は皆開放して帰している。
関が原で監禁していた京極兵も解放したが、
ミツヒデがアイリに仕官したことで、そのままアイリに仕官している。
ミツヒデの元部下だったらしい。
シガ領周辺だけでなく、信濃、甲斐、関東方面からも人が来ているらしい。
シズオカは今、移民バブルになった。
一緒に孤児も増えたのだが、これで農地の開発が更に進むだろう。
特に移動しやすかったのか、アタミでの人の集まり方がすごいらしい。
甲斐や関東だけでなく更に東や北からも移動してきたのかもしれない
アタミは、飛び地になるため、特に開発と防衛を重視した防衛都市だ。
自由貿易郷並みの経済特区でもある。
軌道に乗り出したばかりとはいえ、
近隣から見たらかなり発展して裕福な場所に見えるのだろう。
もちろん仕官者も多くいるらしい。
アイリは面談できないため、どうせ採用して勉強させるからと、
皆訓練所行きにしている。
シガ領が安定しだすと
元近江の避難民で、ギフに来た領民に故郷に戻りたい人は戻れると連絡した。
既に皆、新しい地でやり直ししているから、希望者はあまりいなかった。
既に1月中旬を過ぎたが、周辺領主からの直接的な動きはない。
この間ずっとアイリは、クサツに滞在し続けている。
クサツでは、アイリのためにと多くの人が協力して、短期間で仮の居館が建てられた。
もちろん、兵士たちの労働力のおかげだ。
3万を超える労働力のおかげで、
特区ではないのに、このクサツでは開発が著しく進んでいる。
開発は、隣のハチマン郡にまで手を伸ばしつつある。
クサツの領境では、巨大な砦の建設に着手できた。
時を同じくして、北の砦建設や開発も兵士が協力しているらしい。
クサツの開発の陰には、オイチとギンの力もある。
オイチの内務官に匹敵する技量とギンの天才的な内政支援によるものだったりする。
もちろんアイリも直接陣頭指揮を執っている。
アイリは特に今、人が多く集まるクサツで盛んに人材登用をおこない
内政官もどんどん増やしている。
忙しい合間を見て、仕官希望者の面談も進めている。
アイリに着いてきていたマッドサイエンティストことサイエンは、
一緒に来た研究者や職人たちと武器や兵器の改善に勤しんでいる。
この集団。すごく楽しそうなのが、怖い。
なにやら、アイリからいろんな話を聞いて、新兵器の構想も考えているらしい。
いや、火箭の改善だけでも充分ヤバイと思うのだが。
サイエンは、アイリから話を聞くと嬉々として研究に没頭した。
アイリからの話とは、もちろん鉄砲や大砲、そして爆弾である。
爆弾は、火縄を使わず着火する構想も含めている。
いわゆる信管の技術が含まれることになる。
これは、禁忌に触れそうで危ないのだが・・・。
その他にも、いくつかの化学兵器の話しをしようと思ったが
これは完全に禁忌に触れるからとやめている。
まあ禁忌というより人道的にどうかと思うけどね。
代わりに多段装兵器と焼夷弾は話した。
多段装兵器は、ロケットのように飛んでいき、空中で破裂し、
中に入っている矢が雨のように降るという物だったりする。
焼夷弾は言わずと知れた、周辺に油をまき散らして炎を上げるという物。
投石機で油壺と火藁を使えば、遠距離火計は出来るのだが二度手間になる。
それを、一度でやってしまおうというわけだ。
このあたりは、古代兵器で似たものがあるから
近代並みの技術が無い状況なら、禁忌に触れるような代物ではないと思う。
アイリがシガ領の領主になったことで、一番助かったのは、
アイリのスキルが正常に機能することだった。
地図が表示され、鑑定をすれば人物事典に情報が出る。
これはアイリにとって一番喜べるものだ。
これによって、新しくスキルが発芽した仲間たちの情報が得られた。
サヤカの固有スキルは、「照準」
アイリが、サヤカを見て動体視力など視力系が強いと思ったのはこれだった。
射撃と言う技能が発現していたのは、スキルの影響であるという想定も当っていた。
もちろん基礎能力は、視認による命中率向上。
「どおりで、異常なまでの命中率だわ。」
今でも、弩を持たせたら右に出る者はいない。
鉄砲を持ったら無敵になるだろう、スナイパーも夢じゃない。
眉毛が濃くて相手に背を向けない、あの男並みになると考えられる。
それは冗談だが、ますます雑賀衆のサヤカと類似存在的な感じがする。
スキル成長すると
目でとらえなくても、感覚でもスキルの恩恵があるらしい。
それにより、感覚系の能力が著しく上がり、広範囲を察知できる。
「そっか、なんか感覚も鋭いと思っていた。あれは目がいいだけじゃないんだ。」
これは、応用すれば、レーダー装置と言うことになる。
サーチの魔法みたいなのが、普通に使えることだ。
「しかもこれって、メクラ撃ちとかできちゃうってこと?」
暗視スコープなど無くても、夜でも敵を察知すると命中できることになる。
「うはー、スキル2段階目って、全部やばいな。」
ますます、眉毛が濃くて相手に背を向けない、あの男・・・ゲフンゲフン
シホウの固有スキルは、「上昇」
これは、努力スキルのような技能向上のバフ系だが、効果範囲がヤバイ。
シホウの認識範囲下の人物に適応とある。
いわゆる、他人を強くすることが出来るのである。
但し、自分が所持する技能に限定される。
「支援系って、そういうことだったのか。・・ほほう」
認識範囲とは目に入る範囲ではなく、本人の意思が関係している様だ。
「いやこれ、ある意味、指揮官向けじゃん。」
指揮技能の向上の速さは、これの影響もあったのかと思った。
北の戦いでメイド隊の11軍~20軍をまかせたのは正解だった。
確かにメイド隊の下位部隊であるにもかかわらず、その戦功は高かった。
スキル成長すると
認識範囲の拡張と全能力の向上。技能習得速度の向上。
ようするに、認識できる上限が高くなり、技能だけでなく身体力も上がる。
それに、シホウ自体だけでなく認識範囲下にある相手の技能習得も早くなる。
これはシホウの、接する態度や励ましなどの言葉に発奮するということだ。
やる気満々になると言っておこう。
「指揮官だけじゃなく、人材育成にも向いてるって・・。」
やはり2段階目は、すごかった。
歴史で四方様と呼ばれていた信長の妹の類似存在だろうと予測していたが。
その四方というのが範囲に影響するというのは、やはり何かが関係しているのだろう。
ナオトラの固有スキルは、「破陣」
基礎能力は、指揮系技能、軍術系技能の向上と習得速度の向上
派生として、身体能力と感覚が向上する。
動きが良くなり、気づき、閃きが発生するらしい。
「しかし、指揮系なのに、何故自身の単体能力の向上なのかな・・・。」
成長すると
指揮下にあれば、全対応力が上がるとある。
どうやら支援系の力も持つようだ。
対応力とは、指揮下にいる兵の感覚が鋭くなるから対応力が上がるらしい。
だがそれ以上にやばいのがあった。
敵の全攻撃に対しての無効効果。
「ナニコレ!」
文字そのままだと無敵モード炸裂としか思えない。
実際には感覚が鋭くなり、危険を察知しやすくなることで
危機回避力が向上する。
考え方を変えると
サヤカのような物理的なサーチではなく。
相手の意図をサーチ出来るという物。
「エスパーかよ。これは、ないわ。」
いかなアイリでも、ナオトラを敵に回したら、
作戦が察知され回避されてしまうことになる。
しかもそれは、本人にとって単なる勘だ。
何か嫌な感じがするとかいうやつだ。
ある意味、正に無敵っぽい。
「破陣おそるべし・・。」
但し、人を率いることで発揮される能力とあり、
その数が多ければ、更に能力は向上するとある。
「たしかに、人を率いる指揮官向きだわ。」
人が多いほど力を発揮するとは、
ボールを集める物語に出てくる、みんな俺に力を分けてくれー!と言う感じなのか。
率いている人の感覚を鋭敏にとらえ
総合的に自身の感覚を向上できるとでも考えればいいのだろうか。
鋭敏な感覚と勘が、そのスキルの正体のようだ。
エスパーというより超感覚だね。
花火祭りの時、露店のくじ引きで欲しかったぬいぐるみを一発で当ててた。
実はあれも能力に関係しているのかもしれない。
スキルの無駄遣いではあるけどね。
しかしスキル2段階目のチート力は、みなヤバイ。
以前、アイリのスキルが向上した時
嬉々としていろんな人を鑑定しまくた。
その時にスキル持ちの他の人も見てみたが
2段階目に、こんなチート能力がある人物は見られなかった。
それどころか、スキル成長自体が無いものもあった。
1段回目で終わりだ。
その代わり関連技能が増えるという感じだった。
スキル発芽前の人物も、ほとんど見られなかった。
結局、アイリのスキル向上前と鑑定結果があまり変わらなかった。
むしろわざわざ再鑑定したのが残念だった。
まあそれでも、新しい情報を楽しんでいたのは事実だが・・・。
何故アイリの周りにいる仲良し組だけがこうなのかは、アイリもわからない。
アイリはわからないことを考えるのは、やめにした。
もう1月の下旬に入る。
戦場にありながら、内政の日々をアイリは送っていた。
それはある意味、平穏であった。
北の砦は完成して9軍は南に移動してきた。
同時期、ギフに戻った指揮官補たちの援軍は、領内から募兵の採用者を集める。
そこで軍を再編成しながら自身の指揮能力の向上に励む。
募兵採用は、体力検査だけだ。
各地の中隊長にそれを任せ、採用者は全てギフに集める。
指揮官補はそれを選別し訓練を行う。
そう言った行動もまた、指揮官訓練である。
滞在期間が長くなったことで
アイリは、仕官面談者やメイド隊の予備隊員をクサツに集めた。
相変わらずメイド隊や抜刀隊、指揮官候補などの面談を行い人材登用をつづけた。
不足気味だった防衛兵も補充出来て、シガ領の防衛体制も整いつつある。
4領から支援物資が届き、それがシガ領の開発を進めていく。
同行していた防衛隊の中隊長の中から
優秀なものを大隊長にあげ、攻撃軍の後詰軍としての統率を任せた。
これにより軍制は少し変わる。
騎馬兵は騎馬訓練を騎乗にかえ、メイド隊のように真の騎馬部隊になる訓練もさせた。
やはり走り回るだけと言うより柔軟に動く方が有利だからだ。
このあたりは、今回の戦いでの経験が生きて改善している。
兵器は、異様な集団でのおかげで改善が進んでいる。
以前から取り組んでいた鉄砲の試作も完成した。
それは、アイリの知る火縄銃だった。
ここまで来るのがすごく長かった。
それに満足せず、さらなる改善を進め量産型が出来た。
一応これは試作改良型としておく。
そこからさらに改良を加えたものを思案中だ。
弩がかなり使える為、それ以上の効果を求めたからだと言える。
アイリが教えたのは、ライフリングと銃弾の形状。
これが完成すると、直射の世界が射撃に変わる。
アイリは、敵対する相手には容赦しないと決めている。
だから、火縄銃の殺傷力を高める工夫を教えたのだ。
爆弾や大砲も同じだ。
それと共に信管からの派生である撃鉄も教えた。
これも、禁忌に触れるかも知れない。
日本の江戸時代には、すでに海外では撃鉄という技術があった。
アイリが今いるこの世界の歴史が、本当は何時ごろなのかは知らない。
一気に近代まで飛ばなければ大丈夫だろうという実験でもある。
ちなみに、試作改良型の火縄銃はサヤカに持たせた。
その火縄銃は、たぶん信長後期ぐらいの出来だろうと予測した。
試作改良型とは、量産型で充分実用に耐えうるものだ。
サヤカは最初爆音に驚いていたが、すぐに慣れて相変わらず命中度がすごい。
この銃でも狙いどころが良ければ一撃必殺の武器だ。
北の戦いで敵兵がアイリを狙って襲ってきたときがあった。
軽弩の殺傷力が無くてなかなか倒せず、サヤカが残念がっていたから渡してある。
その時は、軽弩の連射で皆が頑張り、最終的に活躍したのはマナリだった。
マナリは公言通り、アイリとギンを守った。
マナリはその後も訓練を続けている。次も絶対に守るそうだ。
サヤカも新しい武器で負けじと頑張っている。
オイチも戦いは、苦手だと言いながら訓練をしている。
ギンは天才だから、何でもそつなくこなす。
仕事も手伝ってくれるが、内政官にはならないという。
何になりたいのかと聞いたら、お姉ちゃんのようになるという。
以前と変わっていなかった。
1月末
新しい情報が入る。
気になっていたヒデヨシの動向を探らせていたものだ。
どうやら、兵を集め西へ向かうようだ。
ここへきてアイリは何となく読めてきた。
4領はアイリに対する防壁で、自分は勢力拡大を目指すつもりではないかと。
つまり、考え方によっては4領は使い捨てにしてもいいから実効支配をしようとしない。
アイリが京極家は緩衝地帯だというのと同じ思考だ。
となると、4領が兵を集めるのは防衛主体を意味する。
「なるほど、攻める気配が無いのはそういう事か・・。ふぅん」
既にアイリも皇都へ行く気がなくなっている。
官位も上がってしまったし、皇王様は安全地帯にいるほうがいい。
名目上皇都を目指していたところに、シガ領の領民の話を聞いてシガを取っただけだ。
すでにそれは出来ている。
アイリはここで方向性を大きく変えることにする。
恐らくヒデヨシは、アイリにとって最大の敵になる。
早い時期での直接対決は、利にならないと判断した。
4領を制してからでは、かなり疲弊するからだ。
「少なくとも今の指揮官には、方面軍を任せられるようになってもらう。」
アイリの指示がなくても、それぞれの方向に軍を向け独自の考えで動く。
信長が行った派兵の仕方だ。
アイリは大きな戦略を考え、あとはそれぞれに戦術を任せるものになる。
「月が替わったら、攻撃軍は一度ギフに戻ります。」
この後アイリがどういう策を練ったのか、指揮官達はギフの地で聞くことになる。




