No071 アイリの野望、領主編 「花火祭りの終わり」 新たなるおもい? 8歳8月~
花火祭りは全部で10日間
花火大会があるのは最初と最後の日であとは露店が祭りを盛り上げる。
その中でも、人が集まるのはお笑い演芸をしている芝居小屋だ。
娯楽が無いこの国では、
いろいろな演芸を見せてくれるこの芝居小屋は人気になる。
昨年は、5人の芸人だけだったが今はアイリが補充したので
11人ほどになる。
お笑い劇などもできるようになってきたので、いっそう人気が出た。
この芝居小屋はアイリがかなり大きく作らせた。
本当の劇場を作るためのいろいろな試作でもある。
観客は座布団の上に座っている。
以前、椅子を考えたのだが立ち見が出たせいだ。
床に座布団ならかなり入れる。
気になったのは音響がないこと。
劇場を広くすると声や音が聞こえない。
そこで考え出したのが舞台に対する工夫。
お笑い劇などは、背景の工夫もあって見た目や、絵面でも楽しめる。
しかし漫才や漫談風、落語風になるとそうはいかない。
そこで正面の大きな舞台以外に中央にも円形の舞台を作り
そこで行うという工夫をした。
小屋の真ん中なら声が届く。
また、それにより正面の舞台から中央へと移動できるようにしてあり
劇を行うときに演出として使える。
役者が真ん中まで来て、演技をしたり出来るからだ。
こういった工夫も手伝い、どうやら大成功しているようだ。
これを参考に、オカザキに劇場を作る予定にしている。
アイリが視察すると言ったから、いつものメンバーも皆ついてきている。
たまには大笑いするのもいいだろう。
最近アイリの部屋は、ぬいぐるみがたくさんある。
射的でサヤカとキチョウとシホウが競い合うせいだ。
元からアイリ自作のぬいぐるみもあったからかなりの数になる。
ジロウも頑張っていたが訓練した連中には全く勝てない。
結局ジロウは、ぬいぐるみをくじ引きで引き当てた。
勝負じゃなくて、それが欲しかったのかとアイリは思った。
やはり、男装していても中身は女の子だ。
欲しいならいくらでもあげるのに・・。
食事は全て露店で済ませている。
アイリの露店が一番おいしくバリエーションもあるのだが
続くと飽きてしまう。
他の露店も回って、一喜一憂するのも祭りの醍醐味で面白い。
領民の露店であるフリーマーケットも見て回った。
現代と同じで使わなくなったものや自分で作ったものなどが並ぶ。
中には骨とう品などもあってそれも面白い。
自分で絵を描いて売っている人を見つけてアイリはスカウトした。
紙芝居屋をやろうと考えているからだ。
アイリも元オタクだからか絵が上手い。
しかし、いちいちアイリが原画を書く時間がもったいない。
趣味で楽しむうちはいいが、見世物として行うならそれなりの
事業計画が必要になる。
アイリは子供向けの娯楽施設を考えている。
そういった意味での人材登用だ。
また、一方で影絵劇や人形劇なども検討中ではある。
小劇場が出来たら着ぐるみショーも考えられる。
商人や職人の露店も品揃えを考えている。
普段見ないようなものが並ぶ。
この日のために作ったり、かき集めたりしているらしい。
儲けるというより、彼らなりに祭りの露店を楽しんでいる様だ。
太鼓を叩くショーを行っている集団もいる。
それはそれで面白い試みだ。
楽器を楽しむ様になれば、踊りが出来てやがて歌が出来る。
アイリのアニメソングで皆が楽しめるくらいだ
そう言う文化が出来るのはいい。
皆この祭りを楽しむため、いろいろ考えていると感心する。
オカザキは連日人にあふれ、
旅人が集まり宿屋なども繁盛している様だ。
食事処もあわせて利用客が増えた。
祭りの経済効果も出るだろう。
アイリは、初日の反省を生かしてちゃんと祭りの間も仕事をしている。
オイチが手伝ってくれるのは嬉しい。
仕事はかなりたまっているから真剣に取り組んでいる。
それでも皆の勉強時間はちゃんと見てあげたりする。
オイチはアイリの仕事を手伝いながら教えているから既に実地勉強でもある。
ジロウも軍術道場ではなく、アイリが直接教えている。
アイリは訓練も欠かさず続けている。
最近はマナリが訓練に加わった。
マナリなりに考えがあってのことだと思う。
ギンは仔馬を可愛がって乗馬を練習している。
これもギンなりの考えなのだろう。
シホウはかなり腕を上げている様だ。
今は、メイド隊の上位とも互角に近い。
努力する姿は本当にキチョウに似ていると思う。
シホウにも努力と言うスキルは芽生えるのだろうか。
アイリは楽しみにしている。
オカザキでもアイリとギンは同じベットで二人で寝ている。
オカザキの部屋はすごく大きいから、ギンのベットを入れても余裕なのだが・・。
やはり夜になると寂しさを思い出すみたいだ。
幼いうちに孤児になるのは相当つらい出来事なのだろう。
添い寝をしてあげると安心して眠る。
だから二人で寝るのをやめないことにした。
やがて祭りの最終日になる。
最終日は花火大会で締めくくる。
初日と比べて10日間の短い間で新作を作り披露された。
努力のたまものだと思う。
花火も初日より大きくきれいなものが含まれていた。
兵器の試作使用も混ぜ込んでいた。
皆に黙っていたが、これもまた、観客にとっては面白かったようだ。
アイリは、新作兵器の試作完成を確信した。
その場で量産試作への移行を指示したのは言うまでもない。
新作兵器の披露の時、キチョウやシホウにはそれを説明した。
横で聞いていたジロウも花火でなく兵器だと聞いてびっくりしていた。
幼少組はかなりはしゃいでいた。
アイリの冒険物語に出てくるあれやそれが連想できたらしい。
花火が終わると、終了の鐘が鳴る時間になる。
この鐘はかなり長い時間鳴り続ける。
鐘が鳴っている間に最後の露店を楽しもうと人が動き出す。
鐘が鳴り終われば終了なのだ。
最後の鐘はアイリが鳴らす。
それまでは希望者がいれば鳴らしてもよいことになっている。
思い出作りになるからと昨年以上の参加者がいた。
もちろん、皇王様一行や両親一行も参加した。
去年もやったから今年もやろうと思ったのかな。
去年は両親が二人で鐘を突いた。
それを見ていたのか今年は皇王様も聖姫様と二人で鐘を突くそうだ。
いや、みんな仲良くていいよね。
そんなことを思った。
正直言うと皇王様と聖姫様の仲を取り持った形になる自分はすごくうれしい。
あの時は流れからだったのだが・・・。
今になると懐かしい思い出だ。
両親が鐘を鳴らし、皇王様と聖姫様が鐘を鳴らし
そしていよいよ自分の番になる。
これで祭りも終わりだ。
祭りが終わる時に感じる、この寂しさとむなしさのような感情。
今回は自分の前にいつものメンバーにも鐘をついてもらった。
そしてアイリが最後に鐘を突く
ゴーン、ゴーン・・。
回りが静寂に変わり、どこからともなく拍手がわいた。
ああこの世界でも拍手という物は存在したんだ。
皆お互いに「お疲れ様ーまた来年ね」と声を掛け合っている。
アイリも周囲に「お疲れ様ーまた来年ね」と声をかけた。
幼少組もそれを真似て周囲に声をかけた。
サヤカはアイリの近くに来て
そっと「アイリ、お疲れ様でした。よく頑張ったね。」
とささやいた。
その後、数日かけて仕事を全て片付け
アイリは祭りの前に思っていた言葉を皆に伝える。
「さて、ギフに行きますか。」
キチョウからメイド隊に連絡が伝達される。
アイリに同行するメンバーの人選だ。
アイリも身内の同行メンバーを決める。
・・・・予定だったが、皆ついていくというから意味がなかった。
ギンなどは自分は最初からメンバーだと言わんばかりだった。
「だって妹だもの。」だそうな。
ギンを一人にするのは辛いから
本当は最初から連れていくメンバーにしていたんだけどね。
結局、ギフにいった全員が行くことになった。
孤児がその後どうなったのかも心配だし
避難民はどうなっているのかも気になる。
オカザキの孤児院も、もうすぐ完成する。
アイリは、ギフ領全体の視察ではなく
西南部を中心にその後の状況確認のための旅だと告げた。
メイド隊の同行メンバーも決まった。
やはり1軍は絶対、その他は6軍、7軍が同行するという。
「いや、多分そんなにいらないんだけど・・・。ふぅ」
そう思ったが、メイド隊の顔を見ると断れない気がした。
確かにローテーションで順番にしたのは自分だ。
但し今回の帰りはきっと早い。
あ、こんなところであまりフラグは立てないでおこう。
当然、特殊諜報員にも連絡した。
「だって彼らは私の影だもの・・・ふふふ」
特殊諜報員は、かなりの人数になった。
アイリが命令を下さないときは、ただの諜報員になっている。
それ以外にも訓練中のメンバーもいるし
近江、皇都、皇都の隣領に配置したメンバーもいる。
アイリにとっての忍者部隊でもある。
そう思っているのは、アイリ本人だけなのだが・・・。
一般諜報員も各地に分散している。
信濃、甲斐、関東方面も集中配置している。
それ以外にも、伝達が届く範囲であれば他領のどこにでもいる。
普段は行商人として動いている。
ちなみに特殊諜報員は、普段の姿は領民だ。
以前からそこにいたかのように溶け込んでいる。
その他大勢組に紛れ込むのが一番早い。
アイリ曰く「モブ化」というやつらしい。
もちろん、一般の諜報員と違い戦闘訓練を行い
特殊な技能や偏ったスキルを持っていたりする。
やや異様な集団だ。
これに関しては、身内でもごくわずかしかその存在は知らない。
詳細に関しては皆無だ。
アイリのことを信用しているから、誰も詮索はしない。
アイリ本人はそれを話し出すと
アイリ自身が隠しているスキルの説明にかかわるから話せない。
自分の能力が知られることをアイリは恐れている。
最初の頃は大したことが無い使えない能力だと思ったが
だんだん、成長しだした。
他の人のスキルと比べるとかなりの異質な存在なのだ。
だいたい、他人のことが丸わかりだという時点でもうアウトだろう。
そんな人間がいたら怖くて近寄りがたい。
それどころか今は遠方でも何をしているのかまで分かる。
一度鑑定して人物事典に登録したら関連能力で地図にも出てしまう。
地図に載れば継続情報が来るから人物事典の情報が更新される。
理解できないことは、補足情報が載っている世界事典で解明できる。
だからアイリは、自分の力を自分が一番恐れている。
そしてこのスキルは、まだ成長途中の可能性がある。
何かのきっかけの度に機能が向上したり追加されるからだ。
一番はっきりしているのは誕生月、次が何らかの条件を満たした時だ。
アイリが望むのは平和と幸福。
その為には戦いもする。持っている物はすべて利用する。
戦いをやめさせるために戦いをするなど馬鹿げているという人もいるだろう。
しかし歴史はそうやって平和の時を築いてきた。
そして再び惨状を目にした地へと赴く。
今できる範囲で、すくえるだけでも救う。
泣いていた孤児たちは出来るだけ幸せに育てたい。
この世界のこの国はいまだ戦国乱世である。
そう言う時代なのか、歴史の歪でそうなってしまったのかは知らない。
アイリが納める領の周辺でも戦いがあちらこちらで行われている。
近江のような例は、甲斐でもやがて起こるだろう。
アイリが知らない他の場所は、もっと悲惨かもしれない。
人間が覇権を求めるのは仕方ないかもしれないが
領民を苦しめてまでそれを行うのは許しがたい。
アイリの中で強い意志が芽生え始めていた。




