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No067 アイリの野望、領主編 「ミエ領の旅8」 山賊退治と直虎の道。 8歳6月~

アイリは、アノウ周辺郷の視察を進めるとともに

各領の教育院やアイリ直轄事業へ指示を出した。


指示は次の通りである。

アイチ領ですでに始まっている学校制度を広げ

開発が進んでいるミエ領のアノウにも学校を開設。

アイリ直轄事業の育児院や幼年教室を中心に展開する。


その次は、ギフ領のハシマ、シズオカ領のハママツに設営。

その後、ミエ領のシングウ、シズオカ領のヤイズへと続き。

最終的には、すべての自由貿易郷に展開。


また、各自由貿易郷には、合わせて孤児院を開設。

それを教育院の管理下に置き、孤児を教育させる。

全領地の郡や郷の役場は、孤児を見つけたらそこへ送り届ける。

孤児の生活の面倒は、アイリ直轄事業で支援する。


「子供たちは、未来の領民。大切に育てる。」

これがアイリから、教育院はじめ全領地に対するメッセージだった。


この後、育児や教育から手が離せた親が生産事業に従事したことは言うまでもない。

子供たちは、学校を卒業すると優秀な奉公人になる。

領内の生産率が飛躍的に向上していくことになるのだった。

アイリが職業訓練校を作り、内政官はじめ優秀な職人が増えていくのは

その後のことになる。


アイリが周辺視察をしている間、マナリはギンの基礎教育の先生になった。

人に教えると自分の能力も上がる。

ギンは、乗馬の訓練も始めた。まだ乗れないが仔馬を大切にしている。

小さなメイド服とワンピースが届き、今はそれを交互に着ている。

出かけるときは、アイリと同じワンピースにポシェット姿になった。


問題児だった直虎ことジロウは、メイド隊に負けじと訓練を続けている。

ここにいるメイド隊は3軍までの精鋭だから、自分との力量差を感じたのだろう。

同年代のシホウに軽くあしらわれている。


ジロウがアイリの元で落ち着いてきたとき

アイリはジロウに気になっていた点を聞いた。

何故、男であることにこだわるのか。


父親は元豪族であり、長く子がいなかった。

やっとジロウが生まれると、跡継ぎが出来たと喜んだらしい。

しかし女の子である。


戦乱のこの地を乗り越えるためには、強くなければ生きられない。

父親は、男として育てる決心をした。

しかし父親は、戦乱を乗り越えることが出来ず。

戦いに巻き込まれることになる。


戦況は思わしくなく、父親は危険を感じ、ジロウを逃がした。

アイリと言う領主がいるところは平和だそうだ。そこへ行け。

ジロウは泣き泣き、その言葉に従うことになる。


やがて、父親の支配地は占拠された。

この国の戦争は敵に対して完全殲滅である。略奪など当たり前の世界だ。

たぶん生きていることはないだろう。

ジロウはそう思ったらしい。


だが、父親が自分に託した信念は曲げたくないそうだ。

男として生き、つよくなり、戦乱を乗り越えていく。

アイリの領に来て、兵になって出世して、やがて軍を率いる。

できれば、父の仇もとりたい。


目標が達成できるまでは、自分は男として生きる。


アイリは、なるほどと思った。

その後、指揮官としての勉強もさせることにした。

きっとその強い思いは、努力する力につながり

やがて何らかの技能やスキルを生み出せるとおもう。


ジロウは刀を好んで使う。父親がそうだったのかもしれない。

刀が好きなら、将来はアイリの抜刀隊を任せても面白いだろう。

抜刀隊員は個人技能力の高い集団だから、指揮官にする人材はいない。

ジロウが指揮官になれれば、彼女の目標の一つは達成できる。


アイリは、そういった意味も含めてジロウへの見方を変えた。


やがて、ここでの視察目標が終わり、いよいよ伊賀方面に向かう。

アイリは念入りに準備をするように指示した。

イガ郡への道はアイリも始めていくところだ。

行く道は長い山道になる。


この地に置いていくつもりだった幼少組は

皆、アイリと一緒にいたいという。

特にギンは心配だった。やっと落ち着けたばかりだ。

「お姉ちゃんが行くなら、ギンも行く。」

そういってお願いされたら、アイリには断れなかった。


ギンはアイリをお姉ちゃんと呼ぶ。

それはアイリが保護者として、妹のように育てると誓ったからだ。

血のつながりが無くても、アイリの思いは変わらない。

「うん、ギンがそう言うなら一緒に行こうね。」

短い間でも二人の距離は近かった。


アイリは夜寝るときは、いつもギンと一緒だ。

アイリのベットは広く、布団も大きい。だから二人で寝ている。

風呂も必ず一緒に入り、アイリはギンを洗ってあげる。


日中は忙しいから、マナリに面倒を見てもらうが

夜になるとアイリが面倒を見ている。

それこそ妹のように接している。


ギンはまだ乗馬が出来ないから、アイリが二人乗りをする。

アイリの愛馬は成長して大きい。良く言うことを聞いてくれる。

アイリより身体が小さなギンなら、アイリでも二人乗りが出来る。

ギンの仔馬もつないで連れていくことにした。


アイリたちは一路西へ向かう。

やがて山道につながる街道に出て、ひたすら移動だ。


山道の移動中は、景色が変わらず退屈になる。

いつものように九九が始まる。

「ににんがし、にさんがろく、にしがはち・・・。」


道中は役場もなく野宿だ。

平地なら1日の距離でも2日かかる。


キャンプのようになり、幼少組は楽しそうになる。

ギンも楽しそうで何よりだ。

暗くなるのが早いから夜は長い。

アイリは、いつもの冒険物語を始める。



朝は早い、明るくなると移動になる。

イガには郷役場はなく村が点在するだけになる。

今向かっているのは唯一郡役場がある街だ。


険しい山は少ないが、盆地状態になっている場所を開拓した。

開発を進めて、かなり大きな街が出来ている。

郡の全てをここで賄う必要があるからだ。

自由貿易郷ではないが、開発特区として力を入れた。


周辺には農地もあり、人が多くなってくる。

アイリにとって初めての地だが

初期からの支配地でもあり、アイリのことを領民は知っている。

領主様が来たと言って大騒ぎだ。


時々アノウから行商人が来る以外に外から人は来ない。

娯楽が少ない性か、アイリたち団体がくるとお祭り騒ぎになった。

馬に乗るメイド服の集団は、すごく目立つのだろう。


山道とはいえアノウから直接街道を作ったせいで

この地には、作務衣姿に便所下駄が目立つ。

どうやら今それが流行しているらしい。


アイリは、ここが飛び地になっていないかと危惧していたが

大丈夫だと分かって安堵した。

この街を中心にしていろんなところに道が伸びる。

各村々からも移動できるようにしている。


アノウとの街道以外にスズカ郡につながる街道もある。

アイリはここの視察が終わったら、その道でスズカに向かう予定だ。

ここでも人材登用は行う。

初めての地は人材が埋もれている可能性が高い。


人が多くいるから予想通り多くの人材登用が出来た。

特殊なスキル持ちも確保して、アイリは嬉しくなる。

ここでも商人や職人が定着していて食事処も見かける。


アイリは、ここでは木炭事業を支援している。

ここで作られた木炭は、アノウやスズカへと送られてそれで経済が回る。

他には生活木工品も作られる。

木工もアイリが事業支援している。

便所下駄の木の部分はここで作られ、アノウで完成品になる。


こういったアイリの工夫もあって、ここは繁栄できている。

領民もそれを理解している様だ。

アイリの元に感謝とも取れる挨拶に来る。


この地へ来たのは、実は他にも目的がある。

アノウで聞いたのだが、どうやら山賊が出るらしい。

防衛兵もいるのが、普段は領民と見分けがつかず。

完全に駆逐できていないようだ。


アイリは、すでに先行して特殊諜報員を動かしている。

そろそろ、場所が絞れている頃だと予測している。

後はアイリの鑑定で、黄色い連中を捕まえるだけだ。

人が集まるここでも、黄色いのを見つけて捕縛して回る。


その中に、アイリは見つける。

「ゴキブリ見つけた。」

捕縛者の中に山賊の一味がいたのだ。

「この人山賊だから、尋問お願いね。」

防衛兵に引き渡して、尋問をさせることにした。


これで特殊諜報員からの報告を待つだけでなく

拠点の絞り込みが進むだろう。

アイリが郡役場で人事監査を行った後

尋問の状況を聞きに行った。


ここから、北へ行ったところに村があり

その先にどうやら拠点があるようだ。

タイミングよく特殊諜報員からの報告も入る。

既に怪しい場所で特殊諜報員が探っているという。


これで完全に居場所がつかめた。

2つの情報を合わせ、アイリが地図でそれを見る。

「北へ向かいます。メイド隊は準備をお願い。」

北にある村へ向かい、そこからは徒歩で移動する。


「夜になるまでに、決着をつける。ふふん」

さすがに幼少メンバーには留守番を言い渡した。

郡役場の宿舎で待機。

オイチ、マナリ、ギンはしぶしぶ従う。


ジロウは行く気満々だ。

何事も経験を積むのは、大切だからと連れていく。


サヤカは戦場まで行く気だから、山賊退治くらいは当然だという。

軽弩の腕も上がり、最近では連射で的の真ん中に当てる。

いつしか射撃の技能が発生していた。素質が芽生えたのだろう。


予定通り村で馬を降り、アイリの地図で見つけた場所へ急ぐ。

「見つけた。」黄色い集団だ。

街に来ていたのは、様子を見るための物見役だったようだ。

何やらどこを狙うのか相談中だった。


特殊諜報員も駆けつけ、皆で気づかれないように周囲へ分散し囲む。

アイリの合図で突撃となった。

山賊は20人ほどで、かなり想像より多かった。

しかし、虚を突かれてあっという間に逃げることもできず捕縛。


アイリは鑑定で、頭領と思しき人間とその幹部連中を見つける。

「あやや・・・そこからね。」

彼らは、隣の近江に属する甲賀あたりの住人だった。

尋問してみると、

始めは伊賀が栄えているので、嫌がらせのつもりで犯行していた。

成果が出ると、おいしいことに気が付き稼ぐようになったらしい。


近江の地は戦乱の真っただ中。

甲賀あたりの田舎までは、直接戦争の火の粉が来なくても

兵として男手は取られ領地は疲弊していく。


兵になるのが嫌で、南の領境で隠れていたところ。

伊賀方面では、急に領民が裕福になりだした。

自分たちとあまりに違う境遇が羨ましくなり犯行に及んだ。

と言うのが始まりだった。


アイリは言う

「なら、うちの領へ移民して来れば問題なかったじゃない。」

アイリの領では、各地から移民がやってくる。

中には逃げるようにしてくる人もいる。当然貧乏な人が多い。

そう言う人には、支援金を貸し付けして生活できるようにしている。


仕事を見つけ、生活できるようになってからお金を返せばいい。

農民なら農地を貸して収穫できるようになってから返せる。

そう言う話を山賊にした。


皆その話聞いて、自分たちの迂闊さを反省していた。

彼らは、人殺しなどの行為は一切していなかった。

ただ単に領民を脅かし、にげる時に残したものをかすめ取る。

そんな程度の山賊だった。


もともと自分たちも農民だ。戦う手段など無い。

だから兵士を見ると逃げ回っていた。

何時しかそういう仲間が増えてきて、生活の手段になった。

これが山賊騒動の正体である。


アイリは捕縛者たちを連れて、イガへと移動した。

「しばらくは、牢屋の中で考えなさい。」

「本当に反省できたら、領民になれますよ。」

アイリは以前、一度黄色なった人物は戻すのが難しいと言っていた。


なのに、なぜ彼らには諭したのか。

人物事典の経歴情報から、悪人に染まり切っていないことを見抜いた。

もう少しアイリの行動が遅かったらやり直しは難しかったかもしれない。

完全な悪人になればもう戻れなくなる。


アイリの言葉を聞いてから黄色が消えている。

きっと彼らはやり直しが出来るだろう。

それは彼らの中の何人かが既に信奉と言う文字が出ているからだ。

「あなた様を信じて、自分たちは立ち直ります。」

別れ際にそう言った人物がいた。元頭領だった。


アイリはここでの仕事が終わり、宿舎に泊まると

翌日早々に、スズカへの街道に向かう。

見送る領民が手を振ってくれた。


アイリは、ここへ来てよかったと心から思った。

「やっぱり、領内を視察するのは大切だね。」


アイリのそんな言葉を聞き、ジロウはなにやら思いにふけっていた。

父親がアイリと言う領主のところに行けと言った。

この人は、ただの領主ではなかった。

領民に慕われ、共に平和で豊かになろうという。


父親の最後の言葉に等しいアイリと言う領主。

自分が仕えるのは、この人しかいない。

ジロウは、心の中で大きく決心した。


後にジロウは努力を重ね。

剣術だけでなく、指揮官技能が芽生える事になる。

それは、アイリがナオトラ(直虎)と改名させた時でもあった。








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