No064 アイリの野望、領主編 「ミエ領の旅5」 黒幕その後とオタクへの道? 8歳6月~
翌朝、アイリたち7人は小型船で離れた郷役場へ向かう。
5人は事前にメンバーが決まっていたので
残り2人を決めるのに、メイド隊はジャンケン大会になった。
アイリが、船で往復程度の半日工程だから
好きにしていいよと言ったせいだ。
本来ならメイド隊一軍の上位二名が自然にメンバーになる。
しかし、アイリが参加自由と言うと難しくなる。
この長い旅の間にアイリはメイド隊にジャンケンを教えた。
とにかく何かあるとすぐ武力で上下を決めたがるからだ。
まぁそれで順番が出来ているから文句はないのだが。
勝負で決めるならジャンケンで勝負したらいいと思い立って
ジャンケンルールを教えた。
その後何故かメイド隊で、ジャンケンが流行ってしまった。
半分娯楽的な要素もあって結構楽しそうだ。
最近では、いろんな戦略も流行っている様だし、楽しめるならいいことだ。
結局ジャンケンに勝った2名が同行する。
予想通り視察は大したこともなく、船で往復するだけだった。
昼に戻れたから館で食事をとる。
午後は、後回しにしていたここの郡役場に顔を出す。
それもアイリが以前人事をしているから、挨拶的なものになる。
居館から近いから、歩いていくだけだし
全員は必要ないから、午前と同じ人数でいいよと言ったら。
アイリ指名の5人のメンバー以外、残り2名を決めるジャンケン大会になった。
ルールで午前に参加した2名は、ジャンケンはできないらしい。
大人数の女性がジャンケンで騒ぐ姿は、何とも見ていていいものがある。
結局午後の仕事もあっという間に終わったので、そのまま街中を散策した。
もちろん、鑑定をするためだ。
人は多いが鑑定済みの人ばかりだ、当然アイリが送り込んだ人間達である。
特殊諜報員の伝令が来る。
例の皇都近くの黒幕が絞れそうだとの話。
アイリが手段を問わずといったところ、
皇都派遣組は、皇王様事件の犯人を絞ることから始めた。
犯人との接触がある可能性からだ。
あの事件では関係ない人命が失われた。
結局黒幕からすればメリットがなく、面倒になっただけだ。
ところが、黒幕に乗せられた実行犯はそうはいかない。
当然、それなりの対価を要求する。
しかも、実行犯も悪人だからその後も要求し続ける。
こうなると二人の間に、交渉の動きが行き交うことになる。
皇都組はこの動きを察知して、実行犯だろうと思われる人物を追う。
まずいと思う黒幕が最終的に判断するのは、実行犯を消すこと。
刺客を放つわけだ。
皇都で皇王様の身近にいた人物が消えることになる。
これが実行犯だと特定できる。
ところがこの黒幕は、
部下を信頼し、信奉させて使うほどの力はないようだ。
お金や待遇で動く者を釣る。
それは赤い連中からも聞いた話だ。
実行犯を消すために、新しく第三者を篭絡し利用する。
ところがその第三者も、悪事に加担できる悪人の素養を持つ。
性根から実行犯同様にしつこく要求を繰り返す。
これは堂々巡りになる。
黒幕の指示で、皇都で関係人物が次々消されれば。
それを追いかけ続けている側からすればやがて気が付く。
指示を出すのはどこまでいっても一人だ。
直接でも人を介しても行きつく先は本人。
細川家領地に潜む特殊諜報員にも皇都組の情報が届いている。
皇都は都と言っても、とても小さな郷程度の広さしかない。
領民などもいない。
何故なら皇王様自ら領地経営などしないからだ。
今、そこにいるのは皇王様に半ば見捨てられた麻呂的な人くらいだろう。
経済力も権力もない、ただのお飾りの官位しか持たない人たちだ。
しかも皇王様は今不在だ。
当然、他領主の関係者はそこにはいかない。
既に経済的には立ちいかなくなってると考えられる。
何故なら他領からの貢ぎ物もなく、皇王様側からの給金も出ないからだ。
となると行商人も職人も稼げないから、行かない場所になる。
経済的に窮地に陥った麻呂的な人物が、
あがいて何か動いているかもしれない。
むろん、黒幕によって麻呂的な人たちが、利用されて
お互いを粛正しあってるかもしれないが、それは自業自得だ。
人間というのは、何かのきっかけで黄色になる。
それを黒幕は利用しているのだろう。
しかし、「一度黄色になるとそれは簡単に直らないのよ。ふふふ」
黒幕のやり方では、黄色の連鎖を産むだけだ。
一度美味しい思いをした黄色は、続けて美味しい思いをしたくなる。
信奉させられず、要求が満たせなくなったら、
恨まれ、やがてそれは自分に牙をむく。
普通ならその状況で、隣領と行き来する人がいるのはおかしい。
結果、皇都と隣領を行き来する人物を見張ればいいことになる。
そこには黒幕に行きつく道があるはずだ。
伝達にタイムラグがあるから、現在はどうなっているのかわからない。
しかし、何とか糸口は見つかった。
伝達員にお礼を言って、任務中の皆にも感謝を伝えてほしいと頼んだ。
「なるほど、そういうことになっているなら赤い人が発生しないわけだ。」
自分の身辺整理でこちらに次弾を仕掛けている余裕はなかったのだろう。
「策士、策に溺れるというやつね・・ふふふ」
過剰に警戒していたのが、少し馬鹿らしくなった。
人間は、成功するとそこに執着する。
黒幕は裏から手を回して、自分にとっての邪魔者を消すことが出来た。
成功したことで自信を持ったのだろう。
しかしそれは間違いだった。もう後戻りは無理だと思う。
今は自滅するか、アイリの手の者に消されるか時間の問題だ。
少し気分が良くなってきた。
そうだ、前世では隣の郡は松坂牛の松坂市があった場所だ。
「今日は、すき焼きパーティーにしましょう。」
居館への帰り道で、
牛肉を探しまくり、大量に買い出しを済ませたのは言うまでもない。
その日の夕食は皆、
あまり食べられない牛肉のすき焼きで大騒ぎだった。
メイド隊全員も同じ食事だ。
山盛りの牛肉を見て、マナリはびっくりしていたが
ひと口食べたら、その後は何も言わず、ひたすら食べることに集中していた。
忍スキルは、どこへ行ったのだろう。
実はシホウも、アイリの部屋で食事を共にしていた。
どうやら初めてすき焼きを食べたらしく、涙目だったりする。
「たくさんあるから遠慮しなくて、どんどん食べてね。」
アイリは気分よく肉を皆にふるまった。
幼女のアイリは、すぐにお腹が膨れてしまったのだ。
だから後半はアイリが給仕役をしていた。
アイリの部屋は、6人部屋になった。
その夜は、少女組に混ざり、シホウも勉強会に参加したいと言う。
勉強会が終わると、アイリの冒険物語が始まる。
娯楽の時間だ。
何故か勉強会の時より真剣な目つきだった。
布団が所狭しと並ぶ、もうこの部屋くらいの大きさだと
床一面布団状態だ。
布団が密着することになると
アイリの隣は、キチョウが絶対だと譲らない。
サヤカも頑張っていたが、他の皆も食い下がる。
もう片方を誰にするのか・・ジャンケン大会になった。
翌日から、ローテーションになったのは何故だろう。
しばらく拠点にして、周辺の視察を行う。
予定通り、全ての郷を回った。
ここでの仕事が終わることになる。
次の目標は、前世で津市だった場所になる。
今は、アノウとアイリが命名した自由貿易郷だ。
そこは、ミエ領最大の都市になる。
その途中で前世の松坂だったあたりに寄る。
そこでの周辺視察が終われば、アノウまでは近い。
マツサカまでの移動距離は長い。
しかし平野部が続く、山道ではないから気が楽だ。
マナリはこの短い時間で、乗馬できるようになった。
毎日どこへも行かずに、朝からずっと乗馬を訓練していたらしい。
仔馬もすごく大事にしているから、早く懐いたのだろう。
目標までの道中は馬で走り回るわけではないから、
馬で移動させることにした。
トバ港郷に別れを告げて、北へと移動を開始する。
とりあえずはマツサカまで行こう。
距離があっても平野部での移動速度は速い。
街道の質もあるし、出来るだけ最短距離に街道を作っているのもある。
ここからは、巻きで行こう。
何せミエ領、最大の難関である伊賀方面がまだ待っているのだ。
全くミエ領は広すぎる。
アイリ一行は、北へと向かった。
マツサカまでの郷は既に視察済みだから移動だけだ。
マツサカも半分挨拶の様なもので終わる。
その後、北へかなりの距離を移動し続けた。
皇王様と通った懐かしい景色が広がる。
当時はまだ街道の整備もできていなかった。
今このあたりは農地も増え、役場などがある街でなくても人が多い。
領民も向こうから挨拶してくれる。
この様子だと一日で移動できそうだ。
日が暮れる前に、マツサカまで行きたい。
オイチとマナリは移動中に歌を歌っている。
気分が良くてそんな歌が出るのだろう。
それは、アイリの冒険物語の主題歌だ。
冒険物語を話して、主題歌まで歌ったのがうけたらしい。
子供はアニメソングを覚えるのが速い。
どの世界でもいつの時代でも同じなのだと思った。
アイリの冒険物語に出てくる人物では
オイチは、3倍速の人がかっよくて好きらしい。
マナリは、白いのが強いからいいという。
人の好みは面白い。
このシリーズは長いからまだまだ話はあるが・・。
一緒に話を聞いている成人たちには、
可変翼ロボの冒険物語がいいかもしれない。
歌もたくさんあるし、恋愛ものだ。
三角関係とかびっくりするかもしれない。
私もかなり、長い間はまった記憶がある。
オタク歴女の社会人時代でも、カラオケで歌ってたくらいだ。
そんなことも思い出した。
記憶がある程度戻ってきた結果、
今はオタク歴女から、肝心な歴女が抜けてアニメオタクになっている。
まあアイリ本人が楽しいなら何でもありだが。
このままだと新兵器で火箭ができたら
ミサイルポットとか命名しそうだ。
発射のたびに用もないのに
鑑定視線を敵にきょろきょろ送ったりして。
いやしかし、そんな自動追尾機能はない。
この先アイリが、ロボットを作りたいとか言い出さなければいいのだが。
からくり人形が作れたから、やれそうな気がする。
よく考えれば結構使えたり・・でもそれは禁忌に触れないのかな。
日暮れまでに、なんとかマツサカに入れた。
今日はここの宿舎で泊まり、
明日は周辺視察をしながら目標の地へ移動する。
マツサカは比較的大きい街だ。
宿舎の部屋でも結構広い。
その日の夜、アイリの話す冒険物語は新作になった。
オイチとマナリだけでなく
サヤカ、キチョウ、シホウの成人組が真剣に聞いていたのは、
アイリの狙い通りだった。
予想外なことに、
メイド隊もアイリの部屋に集まって聞いていたりする。
アイリは異世界でも連愛話的なものが通用するんだと思った。
いやそれは、三角関係なんだけど・・・。
それより空飛ぶ飛行隊や変形とか、
普通なら、この国の人がどう理解できるんだと思うのだが・・。
実はアイリの工夫で非常に鮮明な描写が加えられていた。
工夫とは・・・紙芝居だった。
食が少ないアイリは、食事をさっさと済まして、ササっと絵をかいて作った。
さすが並みのオタクではない。そう言うところに手を抜かない。
皆、就寝まで興奮していた。




