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No043 アイリの野望、領主編 「東伐戦、初戦」 マサツグとカネツグの先鋒。7歳12月、

マサツグとカネツグにとって、かなり久しぶりの実戦である。

これまでの間を訓練に費やしてきた。

指揮官訓練や兵種能力を利用した運用、アイリ軍術など。


二人合わせて3000の軍をもって先鋒に任命された。

これは、アイリに是非にと願ったためだ。

最初の任務は、浜名湖を渡った先の郡の占拠になる。


郡役場を占拠後、次の郡の郡堺まで一番最初に行くことだ。

奇襲作戦でもある。

行軍は早く、隊列は崩さず。相手が反応する前に事を終わらせる。

これがアイリからの先鋒としての任務命令だった。


アイリは諜報員を使って情報を収集している。

自分たちの元にも報告が入る。この情報は非常にありがたい。

アイリの言っていたことがよくわかる。「情報は大切な武器です。」


どのあたりに敵がいるとか、どんな相手なのかとか

どこへ行けばいいのかなどがわかる。

今までのように、がむしゃらに戦うのとはわけが違う。


敵地に入った後、散発的に戦いは発生したが

織田軍の兵装と兵の訓練度はすざまじい。

特にこの軍は実戦経験者で編成された最強の軍だと言われた。


しかも、投石機とかいう兵器は戦いを変えてしまった。

弩にしてもそうだが、敵が接近する前に混乱してしまう。

後は歩兵が突撃すれば終わりだ。


マサツグは言う。

「のう、カネツグ、アイリはなんてすごいんだろうな。」

カネツグの答えはこうだった。

「兄様、自分の娘をそう評価しますか。」

「私は以前、アイリと一緒したことがありますが、あれは英傑ですよ。」


マサツグは納得している。

「たしかに、お前の言うとおりだな。」

「幼い娘だと思ってはみるが、とても人知の類では計れない。」



ほどなく伝令兵が二人の元に来た。

「郡拠点である役場の占拠は終了しました。この先のご指示を願います。」


アイリから指揮官は、後陣にいて兵に命令することと言われたが

最前線で戦っていた二人には慣れないらしい。

「郡役場周辺の郷役場の占拠、その後郡境まで進軍する。」

「占拠は歩兵を主体にして実施、先行して射兵は前進する。」

これを聞いた伝令兵は、歩兵の各隊長へ連絡後、射兵の隊長に連絡する。

小隊単位で命令が共有できるように伝令兵は他の伝令兵に伝え

各小隊へ知らせる。


「占拠後は、歩兵2班を残して残りの歩兵は進行せよ。」

慣れないとはいえ訓練の成果だろうか、新しい戦い方は身についている。

「郡役場には、歩兵1小隊を残す。」

これらの歩兵とは槍兵だ。

こういった場合、マサツグから中隊長へ直接命令が飛ぶこともある。

小隊を選んで命令するのは中隊長の役割だ。


マサツグとカネツグは、残りの軍を移動させた。

「全軍移動せよ。」

アイリからの命令の半分は終わった。

聞いていたように、ここまでの敵は準備が出来ていなかった。


それとアイリの秘蔵部隊の存在。

領民への扇動が仕掛けられているとは聞いたが

敵対する領民はほとんどいない。中には歓迎してくれる者までいる。

「兄様、以前もアイリはこのように領民を先に手名付けておりました。」

カネツグはそう言った。


領民を敵に回すと戦後の処理が大変であること。

領民がこちら側にいれば、徴兵への参加を渋り敵の不利になる事。

敵の徴兵のやる気をなくさせることが出来るということ。

これらはアイリから聞いていた話だ。


「うむ、すざまじいな。謀略というものがこのようなものだとは。」

マサツグはアイリの謀略の凄さを感心した。

「敵将に対する調略があれば、領民に対する調略もあると

 以前話したときにアイリは言ってましたな。」

カネツグはマサツグに返す。


郡境に来ると敵兵が集まってきていた。

こちらの様子を聞いて慌てて防衛に入りだしたのだろう。


出来るだけ早く郡境まで行き、そこを確保してください。

アイリからの任務を思い出す。


「敵本軍が出てくる前に叩いてくれよう。」

マサツグはそういう

「あれは先陣ではなさそうですな。防衛兵の集まりかと見えます。」

カネツグはそう見た。


「投射兵準備せよ!」マサツグの号令と共に太鼓が鳴る。

「投石は何にしましょうか?」カネツグが言う。

「火計は次の郡以降必要になるだろう。いやからせでもしておくか。」

「では、そのように投石兵に伝えます。」

カネツグは、マサツグに聞いてこれを準備しろと伝令兵に言う。


カネツグの選択は、目つぶしと石だ。目つぶしは煙幕にもなる。

「投石開始、後に弩兵と弓兵は攻撃を行う。」カネツグの命令が飛ぶ。

再び太鼓が鳴る。

数百ほどの敵兵は、何も知らずに近づいてくる。

その場に石が降り、粉が周辺を舞い散る。


運悪く直撃を受けた者はその場に倒れる。

「弩兵射撃開始!」太鼓が二度鳴る。

弩が無差別に直線上の敵兵を倒していく。

「弓兵曲射開始!」太鼓が再び鳴る。

今度は矢が上から降り注いでくる。これで完全に混乱状態に陥った。


「歩兵突撃せよ!」太鼓が連打される。

一斉に槍兵が前進する。刀兵は周囲を取り囲む様に散開する。

槍兵が正面から、刀兵が左右から斬りこむ。

状況を見ていた二人は、「殲滅戦へと移行せよ。」と命令する。

後は蹂躙するだけだ。


「射兵前進!」

この間に、弩兵、弓兵、投石兵は距離を詰めるために移動する。


「弓兵、投石兵投射用意!」カネツグの命令

「歩兵はその場を維持して戦え!」マサツグの指示

それぞれが伝達される。


「投射開始!」

弓兵の曲射と投石が敵兵の後方範囲を攻める。


投射終了後に命令される「歩兵突撃!」

「とどめをさせ!」

これでほぼ殲滅戦終了となる。


敵の攻撃が届かない距離からの攻撃。

これは戦いの仕方を変えてしまった。

敵にも弓を扱う者はいるが、飛距離が全く違う。


投射兵と言われる遠方へ攻撃する兵の数もこちらは多い。

投石機や弩だけでなく、弓も今までとは全く違う形だ。


数百ほどの兵は沈黙した。

マサツグとカネツグは、領境を越えた地まで前進し、そこで布陣する。

味方の中軍を待つ為だ。

2郡目は中軍との連携になる。


これらもアイリからの指示だ。

「作戦会議と言っておきながら、ほとんどアイリの策だな。」

マサツグは笑う。


二人の先陣任務は成功し、アイリの思惑通り戦争は進行した。

初戦大勝である。




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