No041 アイリの野望、領主編 「南紀戦線」 妹のスキル?。アイリ海賊と戦う。7歳11月、
月が替わり、妹アイルの誕生月になった。
瑠月とは11月だ。愛瑠と書いてアイルと呼ぶ。
父上の単純な名づけで愛の下に月の名がついている。
私も同じなのだが・・・。
ここ、何日か妹のところへ遊びに行っている。
アイリ作のおもちゃに反応しだしたのが面白いのもあるが
スキルの覚醒が気になるからだ。
アイリ自身、誕生月にスキルの何らかの異変が起きた経験がある。
確率的に行って誕生月は何らかの影響を感じる。
アイリはスキル所持を理解していたのに、初めて使用できたのは
1歳の誕生月の時だった。
これが覚醒だとすれば妹にも何か起きるかもしれない。好奇心である。
妹をあやしていると報告が入った。
ミエで戦闘が始まったらしい。
いやな情報が2つ入る。
一つは
戦闘予定の豪族の支援をその後ろにいる元領主が行っているらしい。
一番敵対していたはずの豪族を助けるとは・・。
領主の座から落ちたのが気に食わなかったのか
次は自分だと感じたのかもしれない。
二つめは
海賊の横行、確かに歴史でも海賊はいた。
九鬼水軍など元海賊だと言われたくらいだ。
海賊と言ってもちゃんと陸地を納めている。
言い方を変えると郷士と言える。
九鬼水軍は志摩にいるはずだったがいなかった。
むしろアイリ水軍が九鬼水軍だと言える。
九鬼水軍は織田家に編入されて織田水軍と呼ばれる。
うーん、想定すると海賊の拠点は熊野か太地とかかな。
アイリは前世知識と歴女知識を探る。
太地あたりだとクジラ漁と称して、イルカ漁をしていた。
もちろんクジラ漁もしていたが四国のほうが有名だ。
海獣漁が盛んだというのは、海戦にかなり慣れていると言える。
熊野には熊野水軍がいたという話を聞いた事がある。
これは言いかえれば、熊野海賊でもある。
この世界のこの国でも類似の存在はいるだろう。
海賊連中が、海岸線から上陸して悪さをするらしい。
志摩までは来ていないから自領民を対象にする。まさしく賊だ。
敵地とは言え、領民から苦情が出ていると情報に入った。
これは、郡を占領しても駆逐しておかないといけない相手だ。
アイリは指示を出す。
もしもの場合は、私が水軍を率いて駆逐します。
特殊軍船の用意をお願いします。
渥美半島の先から水軍を出して志摩経由で南紀へ行きます。
投石兵と弩兵を主体に刀兵を乗せていけるように。
今回は海戦である。
中型船には、投石機1機と投石兵1班3名。
刀兵1分隊(4班で構成)12名、弩兵1分隊12名、
投石兵は3人で1機を動かすため1班が基本構成だ。
弩は3人で2つの弩を順に運用する為、同じく基本構成は班になる。
基本的に射手は1名だが、状況に応じて2名になる。
これに支援水兵が、2班6名乗る。
水兵とは。操船や陸戦での支援兵の役割を持つ。
この中型船が20隻
兵の輸送時とは異なる。人が満載というわけではない。
機動を重視した操船を優先する為、これが水軍の基本的な構成だ。
接弦戦闘に槍兵は向かないので編成にはいない。
中型船はやや大きいとはいえ
場合によっては、河口から川への侵入も可能だ。
大型船には、投石機2機と投石兵2班6名
弩兵3分隊36名、刀兵3分隊36名
支援水兵4班12名
大型船には左右に小舟を3隻づつ乗せている。
上陸時や接弦戦闘後の掃討戦のためだ。
落水した兵を救助するためでもある。
この大型船が4隻
特殊軍船は旗艦として私が乗ります。
メイド隊3軍30名、
メイド隊は海戦では薙刀ではなく、短刀と体術による戦闘になる。
ここで持たせる短刀は、なんちゃって日本刀相当の物だ。
一般の短剣より長い。
戦闘水兵2分隊24名。
特殊船に装備された武装を使う部隊だ。近接戦闘もこなす。
海上戦用の刀兵でもある。
支援水兵2分隊24名。こちらは漕ぎ手を含む。
そして私と、船長で計50名
特殊軍船とはアイリが蒸気機関をあきらめたときにのこと
漕ぎ手を使った帆船を考えて試しに作らせたものだ。
風だけでなく人力で機動力を補う戦い方をする。
ガレー船とは形がやや違う。物語によくある海賊船に近い。
試作なので正式名称はなく通称名で呼ばれる。
しかもアイリ指示の武装船でもある。サイズは大型船よりやや大きめになる。
突撃接舷のため前方には、突起が出ている。
鉄砲や大砲がないこの国で鉄甲船はいらない。
武装主体でいいと考え、連弩と小型の投石機を備え付けた。
連弩は特殊な巻き取り機で弓を弾き運用する。
弓矢というより銛や槍に近い大きなサイズの矢を使う。
連続性は薄いが、その分威力は高く一度に多く射出することが出来る。
投石機は、基本のシーソー式だが支点に対して重りまでの距離が短い
その分重りが重くなっている。縄引きは巻き取り機を使用した。
巻き取り機をカラクリで止める方法にして、切り縄ではない。
ストッパーを解除すれば投射可能だ。これにより投射火計が使える。
投射火計とは
アイリがよく使う火が付いた藁玉や火薬、油壷を運用し、投石機で飛ばす。
範囲に火を放つ攻撃方法だ。
最近になって、油壷は引火性を高くするために、新油壷を開発した。
クジラ油にアイリ酒造製のアルコール濃度が高い酒を少し混ぜてある。
いざというときの海戦用新兵器だ。
火計だけでなく、毒性のある液を入れた毒壺。
ニカワや粘りの強い樹液を入れた粘壺。
かゆみや蕁麻疹を発症する樹液を入れたものや
小麦粉などの粉末を入れた目つぶし用など多岐にわたる。
他にも毒を持つ蛇を入れたり、蜘蛛や蟻を入れたりなど
アイリ曰く「生物兵器」などもある。
よくもまあこんなに嫌がらせを考えたものだ。
投石兵の運用のためにも投石機は改良している。
特殊船に取りつけてあるのは最新式の投石機だ。
この船が出来たときに、アイリ水軍の基本軍船にできないかと考えて
武装をいろいろ盛り込んだ。試作船なのでまだ一隻しかない。
船が大きいので小型船を左右に4隻づつ乗せてある。
指示が終わると。
忘れていたかのように、再び妹をあやし始める。
しばらくするとアイリが変な声をあげる。
「あーーーでた!」おしめ交換ではない。
両親も姉のアイリもスキル持ちだ。何か持っているだろうと予想していた。
鑑定での反応はなかったので、ひょっとしてと思っていたのだ。
今、鑑定に反応してスキルが確認された。
やはり生まれ月に関係があったようだ。正式には満1歳ということだろう。
生まれながらのスキルを所持していても、
鑑定に反応するのは発現した時、覚醒と言えばいいのだろうか。
妹アイルのスキルは、「統治」だった。
この子が大きくなったら、アイチ領を任せることもできる。
そうなれば自分が拠点を移動しながら、戦略を駆使することもできる。
可能性はいろいろある。
もし、自分が戦乱の世を納めたら、それを維持してくれる役割を持つのかな。
それならアイリはこの国では信長に徹して、妹に家康になってもらえばいい。
「早く大きくなってね。・・・ふふふ」アイリは妹を見つめてそう言った。
その後、
数日たった時、情報が入る。
1郡は侵攻完了、2郡目に入ったとのこと。
大きな抵抗はあるものの、こちらの兵装と兵の訓練度にはかなわないようだ。
しかし、海賊の横行のため領内が安定しないという。
まるで火事場泥棒のような輩だ。
収穫後のこの時期に戦争騒ぎを利用しての犯行だ。
確信犯である。悪人は許せない。
こちらは占領地を略奪しないのに自領民が進んで略奪を行うなど
言語道断だ。
追っても海に逃げてしまうので手に負えないらしい。
海賊の人数は、かなり多いとのことだ。
アイリは、自ら出撃を行う決意をした。
「海賊討伐に行きます。3軍まで同行願いますね。」
メイド隊にそう告げると準備するようにと伝えた。
あらかじめ指示していた内容だが、時期の確定はしていなかった。
関係各所に指示を出す。
「水軍準備、私が渥美半島の軍港についたら出航です。」
翌日、アイリはメイド隊と共にオカザキの地を離れる。
いつものように皇王様と両親には挨拶をしてきた。
途中、トヨハシに立ち寄ると領民が励ましてくれた。
陸路で南下して軍港に入る。
東への対策で大型船の運航が出来るようにしてある軍港だ。
志摩を攻めたときにも利用した。
指示通り、既に準備は整っている。
アイリは、旗艦に乗ると、船長に指示を出す。「出航!」
銅鑼が鳴り、次々と船が出ていく。
水軍での指揮は銅鑼である。
どの状況下で銅鑼が何回鳴れば何をすべきか決めてある。
全25隻からなるアイリの水軍が出撃する。
見送りの人々が手を振る。
予定通り、シマ郡に寄り情報を受け取る。
陸3軍は2郡目を攻略中、抵抗はあるが問題ないとの報告。
元領主が支援して、兵の数を増やしても
性能差は大きいのだろう。
心配なのは、抵抗が激しいことによる死傷者の数だ。
敵の被害が圧倒的に多いとはいえ、こちらにも被害が出ている。
気にして現場に行くわけにもいかない。
自分が行うべきは、他にある。
志摩半島から海岸沿いに南下。
陸地を狙っているなら、それほど沖へは行かないはずだ。
岸壁と砂浜が交じり合うような入り組んだ沿岸地帯。
前世で言う熊野灘と言われるあたりだろうか。
かなり南下したと思う。
船が多数見えてきたと。物見から報告が入る。
「海賊と認定!、数は中型規模8、小型多数、30ほど。」
アイリが水兵として雇った遠視のスキル持ちだ。
遠視と言っても年を取ると出てくるやつではない。
とおみという能力。マサイ族のように遠くが見えるらしい。
水軍の戦いでは、遠くが見える者は非常にありがたい。
「戦闘準備、各船の弩兵と投石兵に指示。」
銅鑼が3回鳴らされる。
水軍においての投石は、最初から投射火計だ。
投石機はシーソー型だが陸の物よりは小さい。
飛距離が出ないので比較的に接近してからの運用になる。
アイリの旗艦だけは、新型の投石機だ飛距離が出る。
アイリの旗艦が攻撃後に、各船からの攻撃が始まる事になる。
「船長もっと引き付けて、相手が気が付いたら全速接近してね。」
相手も気が付いたようだ。
「漕ぎ手、全速力で前進。」船長から指示が出る。
風力と人力で一気に距離を詰める。
「今です。連弩投射。」アイリの合図で前方の連弩が射出される。
「このままの距離間で、側面に回り込んでください。」
続けて船長に指示する。
敵船団の横を時計回りに回り込む。他の水軍船も遅れて到着してきた。
敵に対して船が側面を向ける位置になる。
「側面位置ですね。左舷の連弩発射。投石開始!」
海賊と思われる船団が混乱しだした。
アイリの旗艦が行く手を遮るように海賊船団の周囲を回り込む。
同時に攻撃を行い牽制する。
遅れてきた他の軍船がその混乱している海賊船団に直線突撃する。
前方に向けて弩と投石機による攻撃が始まる。
アイリの船が完全に回り込み、他の軍船と反対側に位置する。
挟み込む形になる。
その隙に弧を描くように、水軍の中型船が回り込む。
包囲する形にするためだ。
「全船連続投射!」銅鑼が連続して鳴る。
海上での包囲が完了し、投射戦が開始される。
海賊の中型船8隻は、こちらの中型船より一回り小さい。
1隻やや大きいのがいる。それが首領の乗る船だろう。
小型船は多い。
質より量なのか、上陸して悪さをするためなのか
数をきちんと数えると32隻だった。
海賊とはいえ、やっていることは山賊だ。
大した抵抗もできなく次々と燃えていく。
連弩で穴が開いた船も多い。
それにより混乱が酷い。ただ右往左往している状態だ。
遠距離攻撃の手が無いのだろうか。
海の戦いでは大砲の様な大型火器が多数ない限り
船を完全に沈没させるには至らない。
火をつけても延焼しきるには時間がかかりすぎる。
「接弦戦闘開始!」銅鑼が再び連呼される。
海賊船に水軍の中型船が突撃して横づけになると。
縄の先に鉤が付いたものが敵船に投げられる。
捕獲と引き寄せだ。接弦と同時に刀兵が乗り移る。
こちらの船が大きいので飛び移るという感じだ。
大型船も敵船にぶつかるように接弦した。
同様に接舷して、次々刀兵が乗り込んでいく。
アイリの船は一番大きな海賊船に狙いをつける。
船首正面でぶつかり、衝撃を与えてから接弦する。
縄の先に鉤のついたものを次々投げて固定して引き寄せる。
「接舷したわね。行きましょうか。」アイリは言う。
メイド隊と戦闘水兵が敵船に乗り込んでいく。
その後をアイリも乗り込もうとしたら船長に止められた。
「せっかく青龍偃月刀を持ってきたのに・・むぅ」
いや船上でそれを使うのは、間違っている気がするのだが・・。
「最高指揮官の姫が危険なところに行くのはいけません。」
船長にダメ出しを出されてしまった。
相手が混乱しているとはいえ、直接戦闘が初めてのメイド隊を心配する。
メイド隊は短刀と体術で相手を翻弄している。
海賊が次々倒れていくのが見える。訓練の成果なのか、意外に鮮やかだ。
足場が悪い船の上でも気にせず戦っていた。
海に飛び込んで逃げた海賊は、弩兵が執拗に狙い続ける。
敵船の海賊全部を処分するのに、かなり時間がかかった。
悪人は処分。これがアイリの命令だ。赤色や黄色しかいないから仕方がない。
数が多かったのは周辺海域の海賊団が群れていたせいだ。
そのまとめ役の海賊船をアイリは知らずに攻めた。
戦闘が終了すると情報取集のため、近くの上陸できそうな場所へ移動する。
結構大きな川の河口が見える。
「たぶんあれ熊野川、するとここは新宮市あたりかな。」
戦いながら、追撃しているうちにかなり南下していたようだ。
鑑定で海岸線を見ていたから
世界地図のマッピングにより大体の位置はわかる。
河口付近で上陸できそうなところで上陸する。
船から小型船を下ろして乗り込んだ。
今度は船長に止められない。
メイド隊もアイリに続く、陸なので薙刀装備だ。
アイリはもちろん「なんちゃって青龍偃月刀」を離さない。
鍛冶工舎でアイリ用に作られたおもちゃのようなサイズだ。
中型船は河口に入って接岸する。
大型船は、小舟を下ろした。
投石兵や水兵は皆、留守番になる。
私の前世知識があっていれば、このあたりが2郡目かな。
部隊を整えて状況調査する。
遠見スキルの水兵も同行を頼んだ。
とにかくこのあたりは、海岸線以外はほとんど山だ。
山の中で戦闘などできない。
この河口付近は平地がある。
やや上流に移動して川幅の狭いところで待機することにした。
しばらく待って情報が入らなければ帰港しよう。
多分ここは通り道だろうと予想して待つ。
情報が入らないまましばらく待ったが、世界地図が反応した。
「あ・・終わったわね。」
多分豪族の処分が終わり、支配地認定されたのだろう。
ミエ領のイセ地区南2郡の地図が仮表示された。
位置確認のためマーカーを表示、軍のいるあたりがわかった。
ここから更に北に行った場所、あれ自分たちが南に来すぎてた。
アイリのいる場所は領境だった。
しかも、それを超えて敵側の岸にいる。
「あーこの川が境なのね」
領境の砦が無かったので気が付かなかったようだ。
となると尾鷲のあたりと熊野の辺りで2郡だわ。
そんなことを考えていると、マーカーが南へ移動してくる
「これ、掃討戦での追撃移動かな。」
まだ敵が残っていると予測する。
遠見の水兵が北からこちらに向かう兵が見えると言ってきた。
マーカーの位置より南だ。
「ヤバイ、それ敵兵だ・・・。」
アイリはのんびりムードをやめて指示を出す。
「川に入れる投石兵を乗せた舟は入って、投石準備。」
伝令を飛ばす。投石兵は船に乗ったまま攻撃するしかない。
中型船なら渡川が出来るサイズだから川へ入り投射出来るだろう。
「陸にいる私たちは、対岸から戦闘準備です!」
「弩兵は並んで射撃用意!」
アイリ達にも見えるところに敵兵らしき姿が見えた。
「まだ待ってね、相手はこちらが敵だと気が付いてないかもしれない。」
そう自分たちは敵領地にいるのだ。
「出来るだけ引き付けてから攻撃するわ。」
敵の後ろには、味方がいる。追いかけているはずだ。
こちらは人数が少ないが、時間を稼げば挟み撃ちにできる。
ただ、あまり時間をかけすぎると、今度は自分たちが挟み撃ちになる。
敵らしき兵が射程範囲を過ぎた。距離的には充分だろう。
「ちゃんと狙って投射!攻撃開始!」銅鑼が鳴る。
船から火計投石も行う。
投石兵が船に乗ったままでよかったのかもしれない。
投射する補給物資は、すべて船にある。
言い方を変えると上陸した弩兵は、矢の数に限りがある。
持参してきた分しかない。補給するためには、船に乗るしかない。
「とにかく矢がなくなるまで引き付けてから狙って!」
アイリが弩兵に指示を出す。
敵兵は、対岸にアイリたちがいるから渡川もできない。
中には棒立ちする者もいる。次々と狙われることになる。
海に逃げた海賊を狙い撃ちして射撃がうまくなったのだろう。
弩兵の戦果が大きくなる。
投石も効果が出てきた。逃げようとする先に火がかかる。
火が包囲して逃げ場がなくなっていく。
後ろに戻ろうとする敵が出始めた時。
味方のマーカーが近づいた。
「きたー。間に合った。」
敵兵の後方では、味方の軍兵が追いつき掃討戦を始める。
敵はかなり多い。
自領で立て直し、再戦するつもりで戦力を温存して退却したのだろう。
まさかこちらに先回りしているとは知らないから。
いや、偶然だけど・・。待ち伏せのつもりじゃなかった。
逆にかなり焦って動揺していた。
海側に逃げる敵兵は、海からの攻撃にもさらされる。
射程が長い連弩が発射された。きっと、船長の機転だ。
何故か敵兵は、降参しないで抵抗を始める。
アイリは不思議に思った。
残るは敵の指揮官らしき男を守る集団だけになった。
もうアイリ側からの攻撃はできない。弩の矢が尽きたのだ。
対岸にいる軍兵に任せるしかない。
もしもを考え、弩兵には乗船できる船があれば戻るように指示した。
対岸に移るかもしれないと刀兵に告げる。
今まさに、浅瀬を探している最中だ。ダメなら船で渡るしかない。
時間がかかったが、最後まで抵抗していた集団も沈黙した。
アイリのスキルが反応する。
「え?なに・・何かの機能が追加なの?」
いやそんな感じはない。
これは、世界地図の表示反応だ。
「あれあれ、なんかやっちゃったのかな。」
占領した2郡が表示されたのは知っている。
多分だが、豪族を倒した時点で支配認定されたからだ。
役場も関も全部占拠してあるのだろう。
今は完全支配地認定になっている。
この反応は、本来残っているはずの南3郡の反応。
仮の支配認定だ。
「ひょっとして、あの指揮官らしき人、元領主の豪族さんとか?」
それなら必死の抵抗も、降参しない理由も合点がいく。
となると仮認定というのは、元領主の豪族を倒したけど
実効支配には至ってないという事かもしれない。
であれば、領地に布令を出して
領地の主たる豪族さんは、打ち取ったから戦争は終わったよと
3郡の領民に知らせたら終わりになるのかな・・・。
アイリはこの後、味方と合流して戦勝を労う。
しかたなく確認のため敵司令官の鑑定を行うことにした。
豪族、元領主、状態死亡だった。予測が的中したようだ。
「何してんだろこの人、おとなしく居館にいればよかったのに。」
よほど自信があったのだろう。
自信が出るほど兵を集め、敵だった豪族と協力して抵抗したのだ。
負けると思っていなかったと思う。
この国の豪族って猪武者が多いし、勝てそうなら前に出てもおかしくはない。
今までの戦いは、こちらが奇襲してたから居館での防衛戦になったけど
普通の戦いなら戦場に出るんだろう。何となく納得した。
アイリは、指揮官3人にとりあえず話した。
説明は無理だが、南3郡の豪族も倒したと。
アイリがこの地にいること自体驚いていた3人はさらに驚くことになった。
合流した諜報員と伝令兵に、この3郡への説明を頼んだ。
役場に使者として行ってもらう。穏便に済めばいい。
第一軍だけは、更に南の3郡に進軍してもらう。
戦勝宣言と豪族の討伐完了、
そしてこの地がアイリの支配地になったことを知らせてもらう事にした。
目立つほうが効果があるため、軍旗を多めに持たせる。
軍を動かすのは、抵抗勢力がいるかもしれないからだ。
大変だけど、支配者を失ったまま放置したら領民が困るかもしれない。
「苦労を掛けるけどお願いね。」
第一軍のゲンタは了承してくれた。
第二軍三軍には
北の2郡に防衛用の兵を2小隊づつ残して、アイチへ帰るよう伝えた。
アイリは海路で帰ることにする。
官吏院に使者を出す。5郡の内政官を送るようにと。
アイリが帰り着くのと変わらないかも知れないが
とりあえず何が起こるのかわからないからだ。
帰りの海路でまた海賊と戦うのは辛いけどね。
今回は掃討戦が連戦になってしまい、アイリもさすがに疲れた。
肉体ではなく精神的な疲れだ。
「早く帰ってお風呂に入ってベットで、ゆっくり寝たい・・。」
めずらしくそんな言葉が出た。
そんなアイリの気持ちに関係なく、色々あって帰り着いたのは、
それから10日を過ぎていた。




