No021 アイリの野望、内政編 「秘策工房」 領主館模様替え?6歳1月、
正月休み・・いや聖祭日がやってきた。
とにかく1年間、西へ東へ北へ南へと大変だった。
「ふぅ、髪の毛で身体が増やせるスキルが欲しい。」
孫悟空ではない。
アイリは、6歳になる。
幼児から正式な幼女へのクラスアップを果たす。
「幼児年齢だった時の幼女と、これからは格が違うわよ・・うふん」
変なポーズをとる。横でサヤカが笑いをこらえていた。
聖祭日の初日、両親を前にしてアイリは言う。
「父上、母上、今回は、領主館にいたのでお土産ないです。」
「夏に渡しちゃいましたしね。」
あからさまにがっくりしている二人を見て
アイリは、にやりと笑う。
「ですが、父上と母上だけには贈り物を用意しましたよ。・・ふふふ」
下げてから落とす。これで効果倍増だろう。
「まぁまぁ、何を用意してくれたのかしら・・楽しみだわ。うふふ」
「まことか・・残念に思って損をした気分だが嬉しいぞ。」
二人揃って目が輝く。
「準備させますから・・ご覧ください。」
メイド隊に荷物を運んでもらう。かなり大物もある。
「アイリ工房で冬用の新作を考案しました。」
父へは、革のハーフジャケット。母には、革のロングコート。
2重にしてあり、間に綿を入れてある。
母のは、襟に毛皮ファーを付けてある。
「ウサギは食べちゃダメだけどね・・」どうやらウサギだったらしい。
他にもある。
両親お揃いの格子模様の綿入り丹前。いわゆるドテラだ。
染色して、夏の時の浴衣と同じ色にしてある。
仲の良い二人には、夏に続いて冬のアイテムを提供した。
洋装と和装にしておかないと選択肢がないだろう。
外着と部屋着に分けてもらうこともできる。
そして、大物登場・・いや単に大きいだけだが。
ここでベテラン演歌歌手が出てきてもらっても困る。
「実はこれは数が作れ無いものです。特別だと思ってください。」
見せたのは、羽毛の掛け布団。厚めの綿入り敷布団。綿入り枕のセット
「掛け布団は、軽くて暖かいものですよ。」
「水鳥の羽毛を中に使っています。ですから貴重品です。」
こちらの枕はとにかく硬いからアイリは枕を使っていない。
幼児の時はそれでもよかったが、成長するとさすがに枕は欲しい。
それでついでに布団を作った。作るならと羽毛布団を考えたのだ。
羽毛布団は3つまで何とか作れた。
水鳥と言えば鴨なのだが、鉄砲がないので数が狩れない。
アイリは網を使った捕獲罠を使い大量確保に成功したわけだ。
まあ長い竿の間に網を張って、鴨をそっちに追い込むだけなんだけど。
擦れてないせいか見事に成功した。鴨肉はすごく好評だった。
真似する猟師が出そうだ。
両親には、良く用意できたなと感心された。
布団は嫌でも使ってもらえるだろう、使ったら感触に感激するはずだ。
夏に大量に配ったので皆にはない。
とりあえず、カンドウ爺には丹前を渡しておいた。
今回はこれでおしまいとなる。
両親は羽毛布団を使った翌日の朝、すごく興奮して報告してくれた。
ついでだが、年あげ早々
屋敷内に畳を持ち込んで茣蓙と取り換えた。
この地には肉厚の畳がなく、まるで茣蓙の様なものが床に敷いてあった。
「なんちゃって畳より本物の畳のほうがいいよね。」
これも随分我慢していたのだが、さすがに領主館に長くいると気になった。
アイリの記憶という技を使い、事前に制作の指示を出していたものだ。
ちなみに、アイリのキヨス館の部屋は、板張りに絨毯仕様だ。
窓も簾の代わりにレースのカーテンに変えてある。
そして、なんちゃってベットを入れてある。
もちろんルームメイトのサヤカも、お揃いのベットだ。
部屋にはテーブルとイス、おまけにソファーも置いてある。
あちらこちらにクッションやアイリ手製のぬいぐるみが散乱している。
現在、鍛冶工舎でスプリング制作中、そのうちマットレスが出来る。
領主館での滞在が長くなるようなら、部屋を模様替えするつもりだ。
ということで、アイリの次期、百科店販売品の秘策の数々はこれらになる。
衣服だけでなく寝具や家具類なども含め、既に百貨店ではなくホームセンターだ。
井家屋とか弐戸利と命名して専門店にしてもいいかもしれない。
基本的に高級品になるのでお値段以上と言えるかどうかは置いておく。
まあ、羽毛布団はないのだけど・・・綿増量掛け布団で代用だ。
他領に輸出しても問題がない製品の選別を行い。
布製品類、紙、塩、陶器製食器類、鉄製調理器具などは
行商を通じで外貨を稼いでいる。
アイリ曰く「他領貿易」らしい、確実に黒字貿易だ。
ちなみに
遠距離海外貿易が出来たら、絹を主体にする予定だ。まだ、先の話だが。
造船工舎で中型船が出来て、かなり遠くまで海運で行けるようになったらしい。
大型船の建造も始まっている。
日本歴史で比較するとアイリが言う中型船とは弁才船と千石船の2種類だ。
あくまでもタイプとしての目安なのだが・・・。
共に漁師が使う小型船しかないこの国ではとても珍しい。
日本歴史では、弁才船などは廻船ともよばれ水運に使われていた。
現在、アイリの指示で河川や水路の水運に使っているのは皆このタイプだ。
牛と荷物を乗せた荷車をそのまま乗せて、人も数人乗れる程の大きさがある。
日本の歴史では海運事業は遅れて、江戸時代になって大きく発展した。
千石船はその時代の主役商船だ。
アイリの海運事業には、すでに千石船規模のものを使っている。
なんちゃって帆船でもある。
対して、アイリの言う大型船とは、比較するなら安宅船規模以上といえる。
軍船は室町時代ごろから安宅船を使っていた。これは、千石船より一回り大きい。
信長の鉄甲船は規格外だと言われるが安宅船に鉄板を貼ったものだ。
アイリは、これを例にして軍船とするつもりである。
大型船の建造目的は、海外貿易だけでなく軍船の建造を含めている。
この分野に関しては、アイリは一気に時代を進めていると言える。
ただ、アイリにとって船の動力は蒸気であり、風を受けるものではない。
技術院と鍛冶工舎には、すでに蒸気技術を伝えてある。
蒸気釜とタービンだ、動力伝達にはすでに歯車があり応用が利く。
何時になるかわからないが、超大型蒸気船や機関車が欲しい。
ただ、先にできるのは木炭自動車になるだろう。
これに関しては、前世知識があるアイリであれば日本歴史を凌駕できる。
先行投資をしておけば、近い将来には完成するはずだ。
歯車があることで、水車や風車を使ったものは完成している。
オランダ風車は有名だが、あの風車の当初の目的は木材加工だった。
各国が海に出るのを競っていた航海時代に、造船のため木材を切っていた。
それらは、アイリも利用させている。
他にも
カラクリに興味を持った職人に、課題として与えた井戸の水汲みポンプ
これは、もうすぐ出来上がる。アイリが絵をかいて構造を伝えたものだ。
鋳物のやり方を教えたので量産化は容易だろう。
他にも日本歴史を凌駕する技術を伝えてある。活版印刷だ。
使用する紙とインクの問題はあるが、版画と墨だけでは不都合がある。
印刷技術も早くから手を出すことで、これも将来完成するだろう。
「実は、紙の質が良くなったら、鉛筆が欲しいんだけどね。」
打ち合わせに使うとき筆では面倒だからだ。
武器防具の開発が終わった以上、開発陣には新たな仕事を指示してある。
優秀な職人を遊ばせるわけがない。
量産化は行程さえしっかりできれば、並みの職人でも可能だ。
そして火薬製造の可能性が出てきた今
銃や大砲などの開発検討が進められている。
カザマ領では
アイリによって異様な文化や技術が展開され、それが定着しつつあった。




