No101 アイリの野望、覇王編 「四国の地」 毛利家の動向。 10歳10月~11月
アイリたちは海路で移動すると
一度、ワカヤマへ立ち寄り
オオサカからの兵站支援を依頼した。
鳴門海峡から北へ行くのは危険だと思い、明石海峡から四国北部へ行く。
明石海峡は、水軍が常時警戒態勢に入っていて、
いつでも海上からオオサカ領の西の隣領を狙うことも可能だ。
西の山名家は、今だヒデヨシ側なので緩衝地帯として残しておく。
今回の目的地は、四国の讃岐地方、前世で言う香川だ。
それと、次の目的地は西隣の伊予地方、前世で言う愛媛になる。
南の阿波地方、前世で言う徳島は川が多くて北へ行くには陸路が面倒なので
今回の上陸地点には選んでない。
その為に淡路島を北に大きく回り込むことになる。
既に水軍の支配範囲は、小豆島までを含んでおり、播磨灘の海路は占拠されている。
今回の上陸地点は、その小豆島から南へ行った先の四国。
アイリの前世記憶地図で言うと、高松の東になる。
アイリの前世記憶から想定して、高松あたりに主要拠点があると睨んでいる。
この国も、日本も栄える場所は似たような感じだ。
上陸後は、東に向かえばいいはずだと考えた。
アイリたちが接岸できる場所を探していると。
既に上陸を終わって警戒している海兵隊が見えた。
アイリは、接岸後にその海兵隊と合流。
出迎えるために、ここに残っていてくれらたしい。
既に、海兵隊本隊は東に向かっているとのこと。
四国へ先行潜入させていた諜報員から周辺領についての情報が入った。
ここ讃岐地方の領主は、三好家を名乗っている。
三好家と言えば、静岡で波多野家を名乗っていた三好長慶の同名者を思い出す。
領主の名は、チジヨ(千々世)。安宅冬康の同名者として浮かぶ。
確かに前世で三好家の3男、三好長慶に殺されたと言われる人物だ。
他にも南の阿波地方にも、三好家があるという。
2領持ちかと思ったら、別の領主がいた。
名は、マタシロウ(又四郎)。十河一存の同名者。確かに三好家4男だ。
不思議なことに、
段々歴史通りの場所か、その近辺に該当する家名や同名者がいるようになってきている。
西の伊予地方は、河野家だというからそれも歴史通りだ。
但し完全に領地を支配しているわけでなく豪族も残っている。
その南の土佐地方では、まだ豪族が競っている。
一応、一条家が領主らしい。これも歴史に類似する。
豪族の中から長曾我部家を名乗るものが出てきそうだと思った。
実は、淡路島は讃岐地方に属していたらしい。
既に水軍の手によって、淡路2郡を占拠していたことになる。
上陸した地点を拠点に、3郡目の占拠も終わったと言うから、海兵隊おそるべしだと言える。
「これはひょっとして出番が無いのかな・・・」
アイリの想定では、重要拠点を取れば終わりだと言える。
慌てて全軍の移動を開始することにした。
「全軍、西へ移動。」やや西北になるのだが、そこは勢いだ。
アイリは全く気が付いていなかった。
既にアイリの軍の武装は、この国で飛びぬけている。
あの武田軍や北条軍と戦った時よりも、倍の威力を持つ兵器や武器を装備しているのだ。
しかも、海兵隊は歩兵全てが長距離攻撃可能。
長距離の射撃攻撃だけでも、一度に数千単位になる。
それが3軍もいれば、数万単位だ。
更に長射程の大砲まで海兵隊に付けている。
これで負けないほうが、どうかしている。
案の定、アイリたちが東に付いた時には、すでに拠点は占拠した後だった。
領主は歴史での安宅冬康並みに、あっという間に退場になってしまった。
仕方なく陸軍を分散して、この地の全制覇へ向かわせた。
2軍づつで行動を指示。5方向への同時展開だ。
アイリの本軍は、さらに西の隣領に向かう。
この時アイリは、ヒデヨシの動向を探るべく中国地方に新たに特殊諜報員らに潜入を命じた。
毛利家にも潜入させることで、状況を把握したかったからだ。
戦いが長引いているということで、領民が心配だったというのもある。
距離が近い四国であれば、情報の入手が早くなる。
海兵隊は任務を終えて、水軍の武装船と共に西の海上へ向かった。
アイリが目安にしたのは、やはり島。
無数の大きな島が、中国地方から四国へつながるように存在する場所を目指し、
その島々と周辺海域を占拠後、南の四国の地へ上陸。
上陸地点からやや西南に向かえば重要拠点があると予測。
前世知識で言う松山になる。
それだけ指示して、自分は陸路を西へ占拠しながら移動することにした。
途中までは、分散した陸軍と同行になるが
アイリはその後の占拠はせず、とにかく西へ向かう。
既にアイリの地図は、仮支配地として認定しており。
領境がわかるからだ。
そこから先がアイリの出番になる。
せっかく遠いところまで来て、何もしないというわけにもいかない。
アイリ自身、新兵器や新武装の実戦運用をしてみたいのだ。
東側3郡は、豪族の支配地になる。
最初の郡に入り、敵を見つけるととアイリは、威嚇射撃を行った。
たった1発の、火箭と、大砲、それと数発の火縄銃だ。
それだけで敵は逃げて行ってしまった。
辺り一面に轟音が鳴り、大爆発したからだ。
このせいなのか、アイリの軍を見かけると敵はすぐ逃げてしまい全く戦いにならなかった。
それどころか領民も戦々恐々としてしまい、アイリは手段を変えた。
「領民には手を出さず、降参する兵も許す。」
これを大々的に、支配地域に広めた。
するとあろうことか、豪族が支配権放棄を願い出てきた。
アイリは何も苦労せず、3郡を支配地に収めた。
平和的解決で良かったはずなのだが何か納得できず、欲求不満になった。
その後さらに西へ移動、やがて西北に街道が曲がる。
その先がアイリが上陸を指定した場所になる。
北西とも言うくらいに北の方へ進んでいくと、海兵隊が待っていた。
海の方を見ると島がある。
このあたりに上陸したらしい。
更に進むと、領主の支配郡が占拠されていた。
その先が多分、重要拠点になる。
街道は、西になりやがて南西に向かう事になった。
確かに重要拠点はあったが、既に海兵隊が占拠していた。
予想通りではあったが、ここでもアイリは出番がなかった。
そのまま、この地で陸軍がやってくるのを待つ。
水軍は斎灘から周防灘まで支配範囲を広げた。
その先は九州になる。
さすがに四国と九州では、強さが違うだろうと支配範囲をそこで留めることにした。
瀬戸内海では、ヒデヨシの水軍であろうとみられる中型船数十隻との戦闘があったらしいが
それも蹴散らしたと聞いた。
アイリの水軍から見れば、規模のやや大きい海賊程度にしかならない。
これで計画通り、瀬戸内海の支配権を得ることに成功した。
水軍は、この戦いの為に仮のかたちで将官任命していた。
それを正式に将官として、家名を与えた。
それだけの成果を出したのだから文句はない。
ただアイリとしては、自分が何もしていないのは少し残念だった。
しばらく後に、陸軍が全領地を占拠して移動してきた。
アイリは、さらに西に移動させ、この領地の完全占拠を指示した。
領地の完全支配が完了したら、そのまま南へ進軍して四国を完全占拠するように伝えた。
四国をぐるりと左回りしながらの侵攻になる。
「10人でいろいろ考えて戦ってみなさい。」という課題付きだ。
強敵と戦ってきたアイリにしてみれば、四国の兵は武装度も低く弱い。
苦戦する事も無いだろうとの判断でもある。
指揮官としての実戦訓練としては、よい機会だというのもある。
「功績が上がれば将官に出来るし、家名も与える。」
そう言うことも伝えたから、やる気満々で出かけて行った。
後は任せて、この地でのんびりしながら特殊諜報員の帰りを待つ。
アイリは自分専用の輸送船を港に運んでもらい、そこでしばらく生活することにした。
アイリ曰く、大型豪華クルーザーだそうだ。
下手なところに泊まるよりも、装備が充実しているからいいらしい。
アイリが数日そうやって過ごしていると、待っていた情報が入ってきた。
毛利家は予想よりも苦戦して、領内が荒れ果てている。
領主の名は、モトハル(元春)。吉川元春の同名者だった。
歴史では、毛利家の次男だ。
3男の小早川隆景は、アイリの部下になっている。
毛利家の3人息子の話と言えば、3本の矢の話があるがあれは創作だ。
吉川元春は、豊臣秀吉が嫌いで適当にしか命令を聞かなかった。
言われた戦場には周りを行かせて、自分は動かないという徹底ぶりだ。
この戦いは因縁かも知れない。
しかし心配なのは、領民である。
特に戦いが長引くと、あのギフで味わった避難民と孤児たちのことが思い出される。
甲斐の時もそうだったが、やはり移民と言う形で避難民がやってきた。
アイリの支配領内では各領に孤児院を作り、避難民を支援している。
アイリはしばらく考えたのち、毛利家に使者を送ることにした。
「領民の避難誘導と孤児の救出をしたい。」というものだ。
海路で輸送船を使い四国に避難させる。
それと、
「もし危険だと思ったら、兵と領主も助け出す。」
「臣下になるのであれば、四国の領地を任せる準備もある。」
とも付け加えた。
これは武田信玄に言った話と同じだ。
四国の領主代理として家名を名乗らせるというもの。
アイリは、その為に輸送船を用意した。
情報から状況は悪く、ジリ貧状態だった。
既に残すところ3郡、重要拠点もとられ、撤退しながらの防衛戦を行っている。
このままでは逃げ場もなく、最終的には殲滅戦が待っているだろう。
アイリは使者からの返答を待った。
数日後、使者が返答を持ってきた。
「避難民や孤児については頼むが、自分たちはぎりぎりまで戦う。」
「仮に、この地を離れるならその後にならないと、領民に申し訳ない。」
アイリはそれを聞いて、内心安心した。
「領民をほかっておいて、自分達だけで逃げるような人物ではなかった。」
アイリは、返答通り避難民と孤児を助ける為、水軍と海兵隊を派遣した。
自力で距離が近い九州へ逃げる者もいるみたいだが。
九州も敵地だ。
アイリの支配領の方が、安心できるという者が多かったらしい。
アイリは九州方面にも、特殊諜報員に行かせた。
後ろから弱っているところを攻めるのは常套手段だ。
そう言う動きが無いか見張らせる。
既に水軍は下関付近まで支配範囲を広げている。
武装船の火箭攻撃なら、海からでも約2000メートル先まで射程内になる。
場合によっては、北九州辺りに海兵隊を侵攻させてもいい。
その前に、情報取得が大切だ。
情報では、九州北部は大友家。その南に龍造寺家で、更に南が島津家。
やや場所は違うが、歴史とほぼ合っている。
むしろこうなると歴史と大きく違ったのは
織田家と徳川家がいた場所を中心としたところの様な気がする。
仮に北へ行くほど、同じならそういうことも考えられる。
歪が大きいその場所に自分が転生したと言うのは偶然なのだろうか。
大友家と龍造寺家は仲が悪く、牽制しあっている様だ。
他へ目を向けることはないと安心した。
下関近くまで追い込まれる前に、非難希望者を救出で来た。
見つかった孤児も皆連れてくることが出来た。
あとは、領主たちの救出になる。
アイリはここで、武装船を海岸線に並べ、海側から火箭の威嚇射撃を行うように指示した。
少しでも侵攻を遅らせるためだ。
アイリは当初、ヒデヨシとの直接対立を避けるようにしていた。
しかし、今はそうはいっていられない。
いずれにせよトウキチロウの影が見え隠れしている以上、直接対立しているのと同じだ。
どうせ、ヒデヨシに九州や四国討伐などさせる気はない。
その為に海上を支配したのだ。
上陸していた海兵隊も大砲で射撃を行い、その間に残りの人達を救出した。
後は海兵隊が退却するまで、海上から攻撃するだけになる。
しばらく後に全員無事に戻ってきたとの報告が入った。
もちろん戦場近くに居た特殊諜報員も含めてだ。
ヒデヨシ軍は、どこから飛んでくるのかわからない爆発攻撃で混乱に陥ったらしい。
アイリは手の内を知られたくなかったが、これも運命だとあきらめた。
仮に手の内を知られても、その射程と威力に対する対応策はないだろう。
アイリは、まだ安定していない四国より、開発が進んでいるオオサカの方がいいだろうと判断。
避難民と孤児、領主一行を連れて、オオサカに戻った。
四国は、陸軍の10人に任せて、後は瀬戸内海から九州まで水軍に警戒させる。
九州での情報取得の為に、特殊諜報員には残ってもらった。
もちろんヒデヨシ領内にも特殊諜報員は潜ませてある。
四国組の特殊諜報員には、10人のサポートも指示してあるから大丈夫だろう。
数日後にアイリはオオサカに入った。
すでに、11月になった。
アイリにとっては大したことが無い出来事でも、妹には大きな経験になったみたいだ。
アイリの言う領民を困らせる戦争は良くないと認識したようだ。
それとアイリの戦争は領民を助けるものだと信用してくれたらしい。
誕生月だったせいか妹のスキルに成長の兆しがあった。
多くの避難民や孤児を目にして思うところがあったのかもしれない。
スキルの派生能力に「平和遵守」というものが加わった。
これは単に平和を守るというものではなく、
いかにすれば平和になるのかを、アイリから知ったことによる影響だと言える。
遵守の遵の意味には、ついていく、従う、手本とするなどの意味も含まれる。
今だこの国は平和に程遠い。領主は権勢だけを考える人物が多く、私利私欲の者も多い。
領民のことなど考えない方が、戦国乱世には向いているのかもしれない。
平和のために戦い、そして領民を救う。救った領民は皆、幸せにする。
これが、幼い妹にも理解されたような気がしてアイリは嬉しかった。
オオサカにいた小早川隆景と元毛利家の領主だった毛利元春こと吉川元春は知人だった。
歴史では二人は兄弟で、毛利の両川体制と言われ毛利家を支えた。
この世界では他人だが、何やら因縁があるのだろう。
アイリは、約束通り領主代理として家名を存続させた。
それと共に、先輩でもあり知人でもある小早川隆景に指揮官としての教育を頼んだ。
毛利元春は、仮だが将官になった。
アイリの予想通り、彼にも芽が出ていないがスキルがあった。
たぶん、限りなく類似の存在である同名者なのだろう。
助けてよかったと思った。
孤児たちは、オオサカにも作ってある孤児院で暮らせるようになった。
孤児院は遊べるおもちゃも多く、人気の紙芝居もある。
そしてお風呂に入れて、食事も美味しい。おやつも出る。
これはアイリが悲しいことを思い出さないようにと
出来る限り楽しいことを与えたせいだ。
それは孤児達もわかってくれていると思う。
乳母役の女性も母親のように接することで、やがて安心して暮らせるようになっていく。
妹もオカザキにいた時と同じように孤児院に遊びに出かけるようになった。
愛犬ハチも連れていくから大人気だ。
避難民には、支援を行い早く生活できるようにした。
毛利の残った兵達も登用した。新しい武装での訓練を行う。
そのまま元領主に仕えてもらっても構わない・・ただし元領主が勉強して指揮官になってからだ。
そこだけは、しっかりしているアイリだった。
しばらくこの地で、結末を見届けることにした。
四国に残してきた連中はうまくやれてるだろうか・・・。
それはちゃんと忘れない。
それなりに、アイリが目をかけて育てた連中だ。
成果を上げて、凱旋してくるのを待つことにする。
アイリは彼らが指揮官として経験をつめば、
次は正式な将官として更なる任務を与えるつもりだ。
水軍、海兵隊と協力しての九州制覇。
その時には再びアイリも出向くつもりだったりする。
アイリは、すっかり四国の領主申請と命名のことを忘れていた。
この後、慌ててそれを行うことになるのだが・・・。




