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4つの恋の物語  作者: 朴 深雪
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5/6

ぱーと1 美香の場合④

「梨香ちゃんいる?」

玄関の戸を勢いよく閉めると叫んだ。

「まぁ、なんです。女の子が大きな声出してぇ~。梨香ならいませんよ。」

「え~、出掛けたの?」

「うん、今日は遅くなるって~。」

「そうなの・・・ふ~ん」

キッチンでコップにジュースを入れて階段を駆け上った。

自分の部屋に入るとテーブルにジュースを置いてベッドにドカッと座った。

「もう、梨香ちゃんたら~。男の人なら男の人ってはっきり言ってよ。」

クッションを抱きしめながらつぶやいた。

結局、今日はカフェに入って、普通に話して私の小説を渡しただけだった。

また次回までに読んで、アドバイスしてくれるって言った。

市川さん・・・その人の名前は市川涼さんという。大人で優しくて・・・

しかも涼さんと同じ名前だし。

次の日曜日にも会う約束をしたから楽しみだな・・・って小説のアドバイスが楽しみなわけでって、1人で誰に言い訳してるんだろう。

それにしても市川さん、梨香ちゃんのこと褒めてたなぁ。いい子だって。

妹としては姉を褒められて嬉しいんだけど・・・

何か気になっちゃうな・・・

まさか、市川さんと梨香ちゃんって・・・

「美香、ご飯よ。」

下からママの呼ぶ声がしてきた。

「はぁーい。」

また梨香ちゃんが帰ってきたら聞いてみようっと。

どうせ、どうだった?って言われるだろうし。

「さっ、ごはん、ごはん。」

空になったコップを持って下に降りた。


次の日。

結局、梨香ちゃんには聞くことができなかった。

学校から帰ってくるころにはいるかなぁ。

また後で聞いてみよう。

「おっはよー!!ねぇねぇ美香。昨日はどうだったの?」

晶がにこにこしながら聞いてきた。

晶の家は私と同じ方向にあって、途中から一緒の為本屋の前でいつも待ち合わせしていた。

「晶の方はどうだったの?丸山くん達の応援に行ったんでしょ?」

「そう!!勝つことは勝ったんだけど、ぎりぎりー。和登ったら『お前ら!ここまで成長して~(泣)』なぁんて言っちゃってんの。レギュラーメンバーばっかりで試合してたのに・・・。引退して身体がダラダラしてるってことだよね~。」

晶が気難しい顔をする。

「まぁまぁ。皆受験もあるからしかたないよ。勝ったから良かったんじゃないの?それにしても何だかんだで、晶と丸山くんは仲良しだよね~。」

「はっ?なに言ってんの?ただの腐れ縁でしょ!」

晶の顔がさらに気難しくなる。

「ってか、そんなことより。どうだった?小説渡せた?アドバイスもらえた?」

「うん、いい人だったよ~。小説は渡したけど、アドバイスや指摘はきっと来週かな。」

「へぇ。じゃあ、読んどいてくれるってことだねぇ~。」

「うん、そう言ってたよ。」

「で、で?美人だった?りょうちゃんさんだっけ?畑山涼と名前がかぶってるって喜んでたじゃん。」

晶が興味津々に聞いてくる。

「うん。背も高いしかっこよかったよ。涼ちゃん“くん”。」

私がくんに力を込めて言ったけど、晶はそこはあんまり聞いていないみたいで満足気に言った。

「へぇ~。かっこよかったんだ~。良かったね。りょうちゃんく・・・ん・・・?えっ!?くん?・・・

お・男の人だったの~?」


「良かったじゃん。出会いだよこれは!fight美香。」

晶は私の背中をポンッと1回叩いてそう言った。

その後も市川さんのことたくさん聞かれたな~。

とは言っても、梨香ちゃんの彼氏?好きな人?となると話は別・・・

姉妹で揉めたくないし。

梨香ちゃんは何でも出来るし、頭いいし美人だし。自慢のお姉ちゃんだし。

勝つ自信は全くないよ。

「はぁ~、困っちゃったな・・・」

「何が困ったの?」

急に声がする。

「り、梨香ちゃん!?」

「さっきからずっと後ろから見てたけど、1人でぶつぶつ言ってるのがまる聞こえだよ。相田さん家の下の娘さんは変な子だって言われるよ。」

そう言って首をかしげた。

「ねぇねぇ、梨香ちゃん。」

「んっ?」

「市川さんって梨香ちゃんの彼氏?」

梨香ちゃんの服を引っ張る。

「えっ?なに急に。何でそんなこと聞くの?」

梨香ちゃんは一瞬びっくりした顔をしたけど、にやっとして言う。

「まさかあんた、涼ちゃんに惚れちゃった?」

「違うよ、ちがう!!」

梨香ちゃんのセリフが図星過ぎて慌てて否定する。

でも、そう否定しながらも自分の顔が熱くなってくるのがわかる。

好きっていうか、惚れるっていうか。

会ったばかりだし、いい人だなって思ってるくらいだし、まだ・・・

「ふ~ん。あんたが涼ちゃんにねぇ~。まぁ、涼ちゃんはいいやつだし、見た目もかっこいいし分かるけどね。」

梨香ちゃんがつぶやく様に言って、1人でさっさと歩いて行ってしまった。

「ちょ、ちょっと。梨香ちゃん待ってよ~。何で怒ってるの?」

「別に怒ってないし。」

振り返りもせずにスタスタ歩いていく。

もう、絶対に怒ってる

梨香ちゃんは小さい時から、怒ると大声出すとか叩くとかはなかったけど、徹底的に無視されるんだよね・・・

それが逆に怖かったりするんだよね。

やっぱり、梨香ちゃんは市川さんのこと好きなのかも。

姉妹で同じ人を好きなんてだめに決まってる。

私は市川さんのこと好きにならないようにしないと。

うん、市川さんは小説の先生。

私は何度も心の中で繰り返す。

そしてその日から梨香ちゃんとはあんまり話さなかった・・・。

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