混乱。
いそいそお茶の準備を始める。数分もすれば紅茶のいい香りが漂ってくる。
茶菓子はどこにあるのだろう?そう思い周りを見渡すも何処にもそれらしきものはない。
「あぁ、ローザ。今茶菓子は切らしていてね。もともと甘いものはあまり好きではないからお茶だけいただくよ。」
そうか、茶菓子はないんだ・・・。ないと言われたらしょうがないので紅茶をそれぞれの前に置く。だが、やっぱり華がない。お茶菓子は必需品だよね。どうにかならないだろうか?この建物内の何処かにはあるのだろうが何分今日はじめてきたので何処にあるかわからない。はぁ。っと心の中で溜息をついているとはっと思い出した!
そういえば今日はクッキー作ってきてたんだ!レオンさんにお別れだからって初めてこの世界で作ったお菓子。余ったから持ってきてたんだ!私の好きな薔薇の花を使ったお菓子。
よし!それを出そう。今日の夜食べようかと思ってたんだけどまた作ればいいよね。
自分の小さなバックからクッキーを出しお皿に盛りつける。うん。上出来!それを机の上に置くとマーリラッド様が驚いたような表情をした。
「あれ?お菓子があったの?それにしても、見たことないお菓子だね?」
「いえ、私が本日おつくりしたものです。お口に合うかどうかわからないのですが・・・」
今まで無言だったイリナウス様もまじまじとクッキーを見つめる。
二人してほぼ同時に口に運ぶ。
「ほう。これはうまいな。」
「あぁ、甘すぎずほのかに花の香りがする。」
二人とも満足してくれたようだ。さらば私のおやつ!
「はい。その菓子には薔薇の花を混ぜ込んであります。」
「薔薇?」
「はい。少量の薔薇の花を生地に練りこんで作った焼き菓子でございます。」
薔薇をつかったお菓子。中学生のころ不意に薔薇を作ったお菓子を作ろうと思った。今までにないほど一生懸命にとりくんでどんなお菓子なら喜んでくれるだろうと・・・・?あれ?喜んでって私誰かにこのクッキープレゼントしたっけ?思い返してみると考えていたのは変なことばかり。
甘いもの嫌いだから甘さ控えめにしないとっとか前はゼリーだたから今回は焼き菓子にしようとか・・・・。
私、今までゼリーなんて作ったことないし、甘いものが嫌いな友達もいなかった!
考えれば考えるほど混乱してきてずきずきと頭が痛む。
ダメかもしれない。このままじゃ倒れてしまう。そう思ったが頭痛はますばかりすると一瞬ぱっと光がはじけたかと思うと頭の中で映像が流れる。
赤みがかった茶色の髪に浅葱色の瞳のかわいらしい少女。その少女は二人の青年を見つめている。
なぜかもやがかかったように二人の表情は見えないが黒の髪の青年と茶色の髪の青年が目の前にあるゼリーをおいしそうに食べている。
その様子をいとおしそうに、そして少しさみしそうに少女は見ていた。
誰なんだろう?と思うとまたぱっと光が瞬き、場面が変わる。
あぁ、見たくない。この場面は・・・・・
薔薇園のような薔薇に囲まれ緑が茂る場所でさっきの少女が倒れていた。その胸からは真っ赤な血があふれている。着ている淡いドレスをも染め上げるかのように。
そしてその少女をはさむようにしている二人の青年は虫の息だった。茶髪の青年の右手は少女の左手、右手は自分の胸に深々とささるナイフに。黒髪の青年の左手は少女の右手、左手は自分の胸に深々と刺さるナイフに。
その二人の青年が最後に言った言葉・・・
『彼女のいない世界に意味なんてない。』
その三人の死を悲しむように雨が静かに降り、やがて薔薇たちが囲みその少女たちの姿を隠す。
この映像は何なのか。あぁ、頭がいたい。誰か・・・助けて。
そこで私の意識は途絶えた。




