↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最後の吸血鬼は、太陽を取り戻す  作者: さかさき まる
第二部 太陽を探す吸血鬼

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
20/33

あいつがシリウスをダメにした





 ジンの手元には氷の剣がある。しかし、おかしな話だ。わざわざ大気を集め続けないと氷の剣が維持できていない。


「氷のドラゴンが、太陽を食べるなんて、死ぬ気だったの?」


 ぶわっと殺気が広がる。突風が起き、雪が舞う。ルーナーはそれでも動かず、ジンを見据えた。黒髪が白い世界で揺れていた。


「そうだよ。死んでもいいほどの決意でやったんだ。人間を滅ぼすためにね、だから」


 ジンは、氷の剣を掴み、ルーナーに向かって振り上げた。しかし、ルーナーは、軽く腕で剣を防ぐ。弾かれた氷剣が、風を切る音をたてて地面に落ちる。


「邪魔だけはしないでくれ。ルーナー・ヴァン・ルージュ」


 しばらく無言が続いた。お互い譲れないものを守るため、相手を睨み続ける。


「……おかしな話だね」


 先に口を開いたのはルーナーだった。


「ジン、お前は、父さんと母さんを見捨てた。それなのに今更太陽を食べて人間を滅ぼすなんて」


 ジンは遠い昔を思い出すように、しばらくルーナーを黙って見つめた。


「お前は、人間の欲望によって殺された両親を助けようともせず、そのまま見捨てた。それなのに、今になって、人間を滅ぼすだと?」

「違うだろう。先に俺たちを見捨てたのは、シリウス・ヴァン・ルージュ。当時の王だったはずだ」


 ルーナーは、黙り込む。正直、当時十六歳だったルーナーは、その時の記憶が朧げだった。覚えてるのは、人間の欲望によって、父が死に、母が後を追ったことだけ。


「知らないのか? お前の父は、人外の王だったんだぞ」


 そうだ。シリウスは、偉大なヴァン・ルージュの最高傑作。ルーナーは、小さく息を吐いた。白い息が霧散する。


「王は、お前たちドラゴンだろう」

「普通はそうだな、ただ――シリウスは強大だった。吸血鬼なのに、ドラゴンよりも強く、気高く、人間どもから俺たちを守れるほど」


 初めて聞く情報に、ルーナーは警戒するのを忘れて、ジンを見た。ジンも、ルーナーの警戒が解かれたのを見て、一瞬視線をアイリスに移す。


「シリウスは、人間が無意味な称号(ドラゴンスレイヤー)のためにアイリスを殺そうとしたのを助けた。王国の軍を壊滅させてくれたんだ」

「父さんが……? ありえない」

「お前からしたらそうだろう。俺たちとしては、お前の存在があり得なかったけどな」


 ジンは、氷に包まれたままのアイリスを、そっと触れる。何よりも大切なものだと、その手つきだけで分かった。


「隣の国の国王を殺したのもシリウスだった。あいつほど、人間を嫌ってる奴はいなかった。だから、俺は、人外の王として、あいつを認めた」


 ルーナーはジンの口から聞かされる真実が理解できずに、黙り込むしかなかった。


「あいつがいれば、いずれ人間は滅ぶ。そう信じていたのに――」


 雪が降り積もる。ジンの身体に触れる前に消える。その光景を見ていたルーナーは、強い憎悪でこちらを見るジンに気づくのに、少し遅れた。


「ステラ、あの女。あいつがシリウスをダメにした」

「勝手に呼び捨てにしないでくれ」

「ハッ。そう言われても仕方ないだろう。王国の国王を殺して、この国も壊滅させようってやつが、一人の女を連れて帰ってきて、お前まで生まれた!」


 そう。ステラ。ステラ・フォン・アルデバラン。ルーナーの母親は、アルデバラン王国の王女――人間だった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。