↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
44/64

第41話 小さな主催に大手は来るか

 送信から二時間とたたずに、デミタスの端末が鳴った。


「マスター。一通、お返事が届いております」


 椅子の脚が床を鳴らした。


「読め」


「配線ミナト様。冒頭は、ぜひ参加したいです」


「承諾である! 最初の一人を得たぞ。直ちに祭典の日を決めよ」


「その下に、確認したいことが十二個ございます」


 デミタスが画面を向けた。本番前に入力情報と遅延を試したい。自分のチャンネルから何が取得され、アバターへ何が反映されるのか知りたい。


 丁寧な文面のまま、要求は一つずつ具体的だった。


「問いにはラプラスが答える。ゆえに確定であろう」


『当然だ。取得入力はチャンネル識別子、公開登録者規模、配信開始状態、有効同時接続の段階値――』


「ラプっち、それ今全部言うとメール三通分になるんで」


 ノーラが空中の目玉を横へ押しやった。返信管理表の一番上へ黄色い印を付ける。


「参加したい、まではオッケーっす。でも確認したいことがあるうちは、まだ確定じゃない」


「来ると書いてあるではないか」


「来る条件を聞かれてるんすよ。返すのは明日、人間が読める長さにしてから」


 三森にとって、招待状は門を開く許可証だった。来ると言われれば、あとは門前で待てばよい。


 現代では、門の手前にまだ何枚も扉があるらしい。


 その一時間後、夜帳ヨルカが意味深な投稿をした。


夜帳ヨルカ @YorutobariYoruka ・ 6月19日

怖い場所から、正式な招待状をいただきました。


まだお返事の前なので、詳しいことは秘密です。

でも、逃げずに考えるところを見てくれていたのは嬉しい。


 続けて鉄砦ガンジも投稿する。


鉄砦ガンジ @TessaiGanji ・ 6月19日

数字の上での強さが、狭い通路でも強さになるか試さぬか――との挑戦状が届いた!


差出人は伏せる! 返事もまだだ!

だが、壁は厚いほど燃える!


 二人とも迷宮ミモリの名前は書いていない。書いていないが、伏せるには遅かった。


【一万人企画】迷宮ミモリから招待状が来たらしい


1: 名無しさん@おーぷん 2026/06/19(金) 21:02:47.19 ID:Pwf8Ag8Le

夜帳ヨルカ「怖い場所から正式な招待状」

鉄砦ガンジ「数字上の強さと狭い通路の相性を試せとの挑戦状」

配線ミナトは今日の夕方「入って確かめないかというメールが来た」


三人とも差出人を伏せてるが、迷宮ミモリが複数人コラボやるだろ


2: 名無しさん@おーぷん 2026/06/19(金) 21:03:02.66 ID:Wra8Ju1Wi

勇者来る?


3: 名無しさん@おーぷん 2026/06/19(金) 21:03:10.24 ID:Qlf5Yh8Ry

あの技術で個人勢三人はもったいないだろ

大手箱から誰か引っ張ってこいよ


4: 名無しさん@おーぷん 2026/06/19(金) 21:09:55.83 ID:Qku3Tz3Zh

ミナト1.8万

ヨルカ1.6万

ガンジ2.1万

ミモリ1.5万


見事に近いところで固めてる


5: 名無しさん@おーぷん 2026/06/19(金) 21:10:31.07 ID:Mxz3Gq7Lx

初主催だから、断られにくい相手を選んだようにも見えるな


6: 名無しさん@おーぷん 2026/06/19(金) 21:11:04.72 ID:Pgk3Pt9Ap

それ、規模が小さければ雑に扱っていいって前提になってないか


7: 名無しさん@おーぷん 2026/06/19(金) 21:11:12.38 ID:Mxz3Gq7Lx

雑とは言ってない

企業勢より確認する相手が少ないのは事実だろ


8: 名無しさん@おーぷん 2026/06/19(金) 21:18:40.95 ID:Aaz4Pi3Wt

個人でも立ち絵、音声、表示名を使うなら許諾は要る

会社を通さない分、窓口が短いだけだ

初回から企業五社と日程を合わせて事故るより堅実だろ


9: 名無しさん@おーぷん 2026/06/19(金) 21:19:02.51 ID:Wra8Ju1Wi

正論で勇者の可能性を消すな


10: 名無しさん@おーぷん 2026/06/19(金) 21:19:33.16 ID:Aaz4Pi3Wt

勇者は一人呼んで済む相手じゃない

四人組で企業所属だぞ


11: 名無しさん@おーぷん 2026/06/19(金) 21:19:38.80 ID:Wra8Ju1Wi

四人とも来ればいい


12: 名無しさん@おーぷん 2026/06/19(金) 21:19:44.27 ID:Ulz1Vd6Zw

初主催を殺す気か


 三森はスレッドを上から順に読み、途中で指を止めた。


「大手が来ぬから価値がない、と書いてある」


「そう書く人は出るっすね」


「あの五人は、我が選んだのだぞ」


『招待理由は個別に記述済みだ。公開されていないだけで、存在しないわけではない』


「見せてやりたい」


「絶対ダメ。返事の前に中身を出したら、断りにくくさせる圧になるんで」


 三森は端末を置いた。勇者が他人の主催へ客として出た配信を思い出す。あの時も、告知が出るまで参加者の名は伏せられていた。


13: 名無しさん@おーぷん 2026/06/19(金) 21:33:29.61 ID:Qlf5Yh8Ry

そもそも大手に声をかけて断られただけかもしれないだろ

断られた話は誰も投稿しないからな


14: 名無しさん@おーぷん 2026/06/19(金) 21:34:15.08 ID:Qku3Tz3Zh

呼べないことと、今は呼ばない判断は両立する

どちらにしても、受けると決めた人はまだゼロだ


15: 名無しさん@おーぷん 2026/06/19(金) 21:47:12.44 ID:Loz5Lc3Dh

で、ゴリ子は出るのか


16: 名無しさん@おーぷん 2026/06/19(金) 21:47:51.90 ID:Pwf8Ag8Le

ゴリ子は配信中に公式HPへログインしてる時だけ参加状態だぞ

運営が出場予定を組めるキャラじゃない


17: 名無しさん@おーぷん 2026/06/19(金) 21:48:03.55 ID:Loz5Lc3Dh

じゃあボス不在で終わる可能性あるじゃん

ゴリ子のいない迷宮ミモリの大会に何の価値が


18: 名無しさん@おーぷん 2026/06/19(金) 22:01:37.29 ID:Pgk3Pt9Ap

そこを含めて成立させるのが主催の仕事だろ

ゴリ子頼みなら失敗だ


19: 名無しさん@おーぷん 2026/06/19(金) 22:02:19.86 ID:Qlf5Yh8Ry

守護神は来ない、大手も来ない

残るのは同じ規模の五人が仲良く迷路を歩く配信


20: 名無しさん@おーぷん 2026/06/19(金) 22:09:44.30 ID:Qku3Tz3Zh

小さい主催が、小さいまま一回目を完走できるか

今はそれで十分見たい


 予想が参加者の名前へ届き始めた頃、ノーラが公式アカウントを開いた。


迷宮ミモリ @MeikyuMimori ・ 6月19日

複数配信者参加型の迷宮企画は、現在準備中である。

現時点で参加者は確定しておらぬ。

先方への問い合わせは控えるように。


予想だけで凸るのマジでやめてください。


「最後、また漏れておるぞ」


「こういうのは漏らした方が効くんすよ」


 ノーラは通知を閉じた。


「これで、勝手に相手へ聞きに行く人は減るっしょ」


「我が勇者を招かなかったと、誤解されておる」


「招いてないじゃん」


「今回は、だ。永遠にではない」


「『勇者は今回呼んでないだけ』って公式で補足したら、勇者さんのとこへ人が行くんで絶対ダメ」


 三森は口を閉じた。


 デミタスが返信管理表を開く。丸が一つ、空欄が四つ並んでいた。


「本日届きましたのは、一通でございます」


「分かっておる」


 端末を伏せ、しばらくして、また表を向ける。


「……通知とは、鳴らぬものだな」


 シルカは画面の隅に、輪郭だけの五体を横へ並べていた。名前の欄はどれも空白のままだ。


「埋まったら描く」


「埋まる前提で描いておけ」


「それ、断られたとき悲しい」


 ミラが湯呑みを置いて下がっても、三森は四つの空欄から目を離さなかった。


---


迷宮運営記録


- 配信回:非配信回(直近:第67回)

- 次回配信:2026年6月25日(木)20:00

- チャンネル登録者:15,842人(+646人)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。