私、旅路の選択肢
セナはあれからすごく有名な生徒になった。実習授業でのダンジョン探索、この前にフシと共に行った初めの洞窟はもちろんそれを超えるダンジョンも魔法使いとして適した行動をし、難なく探索を終えた。
その名声は学院外にも広まり課外授業である街の外での戦闘、魔法行使を行ってもこれまでのフシとの対戦などが役に立ちこれも無事おわった。
そして遂には学院の卒業が迫っているのだが、
「セナ、これは確実に決めなくてはダメなことだよ?これは君のためなんだから。」
「いやフシはわかってないんだよ、これがどれだけ僕を苦しめるか……」
仰々しい言い方をしながらフシに反論するセナ。
現在ふたりはセナの将来の職を決めるためセナの寮の中で意見を交わしていた。
「だからねフシ!僕は後宮の魔法使いは嫌だ!」
「どうして?後宮なんてみなが憧れる場所でしょう?セナは違うのかい?」
不思議そうにセナにそう問いかけるフシ。人は皆がそうではないとわかっていたとしてもこういった場所で働くのを喜ぶものだと思っていた。
「そうだけど!そうじゃないの!僕が言いたいのは後宮なんて場所に就きたいかじゃなくて……」
「?」
フシに対して物申す!みたいな勢いから段々と声量が下がり自信なさげにフシを見上げるセナ
「・・・・・ハッキリ言わないと伝わらない?」
フシは疑問に思う今は別に念話を使ってはいないし、何も全て言う必要は無いがこういったことは言葉にする方がいいからだ。
「そうだね、すまないがハッキリと言葉にして欲しいと思うよ。君の将来のことだ」
「ッ〜〜~はぁそうだよね、フシって変なところで察しが悪いというか、いやこの場合僕が常日頃からアピールが足りなかったのかな?」
なにか、ブツクサといいながら何やら言っているセナ、フシからすればなんの事なのか分からなかったが何やらアピールをしていたらしく、思い返してみてもフシに該当する思い出は特になかった。
「わかった!今度はちゃんと言葉にするからフシこそ聞き逃しちゃダメだよ」
セナは深呼吸をしフシを目前に捉えハッキリと口にする
「僕はぁぁ!フシと!一緒に行きたいのおぉぉ!」
まるで部屋全体がセナの言葉で震えるがごとく、そんな錯覚を起こすほど大きな声だった。
セナはフシの言葉を待ったがいつまで経っても帰ってこないので恐る恐る顔を見ると少し驚いたように目を開いただけでそれ以外は特に表情は変わってはいなかったが、何一つ動いていなかった。
「フ、フシ?えーっとなにか言ってくれると嬉しいんだけど……」
怯えたように声をかけてもフシは反応する素振りを見せず不動となっていたので、我慢できなくなり体をつかみ上下に揺らす
「フシィ!いい加減何か言ってよ!僕の一世一代の宣言に対して当事者として何か言うことはないのっ!」
「あばばばば」
何とか意識が回復したフシはとりあえず揺らすのを止めるように声をかけ自身の答えをセナに伝える
「正直に言えば、私はセナが着いてくることは反対だよ、」
「……それは僕が弱いから?」
「そうだね、その理由もあるけれど他にも理由はある。」
「……その理由って?」
フシのセナが弱いからという一つの理由にショックを受けながらも何とか別の理由を聞き出す。
「他の理由としてはセナの人生を無駄にして欲しくはないからだよ、私の旅の理由は友人に土産話を聞かせるためだ。あくまでそれが理由、だから後宮勤めという栄光を目前にそれを捨てるというのは私はして欲しくない。」
「ッッ!そんなの、理由になってない!僕はフシについて行きたいの!フシと一緒にいたいの!・・・・・そんなのフシの唯の勝手だよ。」
悲しそうに訴えるようにフシに叫ぶセナ。その叫びに一切反論しないフシは勝手だと分かっているからか、それともその叫びに口を出す訳にはいかないとでも思っているのか、何分も時間が過ぎた後やっと口を開く
「そうだね、これは私の勝手な理由だ。だから話し合おうこれで、お別れだとしても一緒に行くとしても、これが最悪にならないように、君と喧嘩するのは吝かではないけど仲直りできないのは私は辛いから。」
その答えにセナは不安を心に残しながらも少しだけ息を吐くまるでフシと別れないかもしれない未来が見えた安堵からかそれともすこしでもこれから喧嘩するために心の重荷を軽くするかのように。
「スゥーフゥー、うんわかった。話そう、これが最悪にならないために互いがすこしでも最高だと思える結末を迎えるために」
そこからは話し合いというかほとんどセナが叫びフシが受け止め時々反論するそんな奇妙な喧嘩のような風景でそれでもどこかどちらも楽しそうなそんな話し合いが朝まで続き、セナが息を切らせながら答えを出す。
「ゼェーッフゥ、スゥーハァー、こ、これでいいよね、フシ!」
「フゥ、しょうがないな、君は。ならこれからもよろしくねセナ」
「!っうん!これからもよろしくねフシ!」
こうして、セナは学院側に後宮勤めはしないと意志を伝え、当然反対意見が飛び交ったが、何年も培った氷雪の女王としての眼力で反対意見を黙らせ、悠々と学院を卒業していった。これから一人と一羽の土産話旅が始まった。
「あ、それから私の正体教えてなかったね、私不死鳥だから改めてよろしく」
「・・・・・?・・・・・・・はぁ?はぁ!?き、き、きいてない!聞いてないよそんなの!」
「だからー、今言ったんだよ?」
「ッ〜〜~、そういうのはもうちょっと早く言ってよねっ!」
フシは楽しそうにセナに追われそこから不死鳥とその弟子の旅が今始まった。
セナが去った後学院内でちょっとした伝説となったが、セナ・グリュナーという名ではなく氷雪の女王の名しか残ってなかったので色々と噂に尾ひれがつきまくったとかなかったとか。




