◆◆◆第52話:大人気の2.5次元ミュージカル? だったら分厚い『緞帳(どんちょう)』を引きずり落として「極上の掛け布団」にしちゃえ!◆◆◆
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「すぅ……すぅ……金平糖、美味しかったなぁ……むにゃむにゃ……」
ソシャゲの課金石(数万円分)をお茶請けとして完食し、極上のベッドフレーム(トラックの荷台)で再び深い眠りについたシーラ。
しかし、突如として空間に「ブゥゥゥーーーッ!」という耳障りな開演ブザーが鳴り響き、ピンスポットライトの強烈な光がシーラの顔面を直撃した!
『——起きなさい! 画面の中のピクセルで満足する時代は終わりました!』
暗闇の空間が、満員の観客の熱気に包まれた「巨大劇場のステージ」へと強制的に上書きされる。
首からメガホンを下げ、台本を丸めて持った神霊が現れた。
生の熱狂と舞台化を司る『演劇の神・テスピア』である!
『フハハハ! 新たなる集金の舞台は、若手俳優たちによる【2.5次元ミュージカル】よ! S席チケット代1万5千円、ランダムの缶バッジとアクリルスタンドで客単価は青天井! 貴女は今から、この重さ10キロの煌びやかな衣装を着て、ワイヤーアクションで空を飛びながら、3時間ぶっ通しで歌って踊るのよ!!』
テスピアがメガホンを振ると、シーラの寝袋の周りに、大音量のオーケストラピットの生演奏と、観客たちの振る色とりどりのペンライトの光が押し寄せてきた。
「た、隊長! 起きてください! 今度は世界がミュージカルの舞台になっちまいました!」
「寝起きでいきなり歌って踊らされるなんてブラックすぎるっす! しかも客席のペンライトとスポットライトが眩しすぎて、とても寝られる環境じゃねえ!!」
『さあ、幕開けよ! 笑顔で歌いなさい! 貴女の汗と涙が、劇場のグッズ売上(利益)に変わるのよォォォッ!』
強烈なスポットライトに照らされ、大音量の音楽が鳴り響く中、シーラは寝袋からフラフラと立ち上がった。
「……ねえ」
シーラは、自分を照らす強烈な照明を眩しそうに手で遮りながら、舞台の天井付近……ステージと客席を仕切るための、『巨大で分厚い真っ赤なベルベットの幕(緞帳・どんちょう)』をジッと見上げた。
「あの天井からぶら下がってる、赤くて分厚い布……すっごく重みがあって、光も音も通さなそうないい生地だね!!」
『……は? 何を言っているの。あれは劇の始まりと終わりを告げる、由緒正しき劇場の緞帳——』
「ちょうどよかった! プラネタリウムのテントだけだと、まだちょっと眩しかったから、もっと分厚い『掛け布団』が欲しかったんだよね!!」
『……はい?』
シーラは凄まじい脚力で舞台の空中へと跳躍すると、ワイヤーアクション用の機材を完全に無視し、天井から吊り下げられている重さ数百キロの『巨大な緞帳』の端っこを両手でガシッ! と鷲掴みにした。
「いくよーっ! 気合と根性のォォ……『強制・最高級ベルベット掛け布団(引きずり下ろし)』ぃぃぃっ!!」
メリメリメリメリッ!!! ズバァァァァァァァァァンッ!!!
『なっ!? なにをしているの! 数千万円する特注の舞台幕を、力任せに金具ごと引きちぎるなァァァッ!』
シーラは数百キロある超分厚いベルベットの緞帳を、力任せに天井のレールから完全に引き剥がすと、そのまま自分のトラックの荷台の上に「バサァッ!」と被せてしまったのだ!
「わぁ〜! この布、すっごく分厚くて肌触りも最高〜! しかもこれ被ってたら、客席のペンライトの光も、オーケストラの音も完全にシャットアウトしてくれて、真っ暗で超静か!!」
舞台と客席を隔てるための「最強の遮光・防音布」である緞帳は、シーラの気合によって、彼女一人を包み込む『究極の安眠用掛け布団』へと強制ジョブチェンジさせられてしまった。
『ぎゃああああああああっ!? 私の! 私の華やかなミュージカル公演が……開演直後に主人公が「緞帳」を布団にして寝たせいで、強制的に「閉幕」してしまったァァァッ!!』
主役が舞台幕を布団にして爆睡し始めたため、物理的に劇を続けることが不可能になった演劇の神テスピアは、「チケット代……払い戻し……」と青ざめた顔でつぶやきながら、膨大な赤字(負債)と共に泡を吹いて消滅した。
「あははっ! 最高級の掛け布団、重くてあったか〜い! おやすみなさーい!」
神霊が消滅したことで、満員の客席もオーケストラの演奏も幻のように消え去り、空間は再び「緞帳の布団に包まれた、完璧な暗闇」へと戻っていった。
「シ、シーラ隊長……ついに『劇場の緞帳』すら、力ずくで引きちぎって『最高級の掛け布団』にしちまった……!」
「スポットライトが眩しいからって、舞台幕を布団にして強制閉幕させる……隊長の睡眠欲の前には、2.5次元の熱狂もただの上質な寝具屋さんっすね……!(戦慄)」
どれほど華やかな舞台であろうと、どれほど熱狂的なファンがいようと。
シーラの「眩しいから分厚い布団かぶって寝たい」という究極の物理的欲求(と気合)の前では、ただの肌触りの良いベルベット生地でしかなかった。
舞台化の魔の手すらも極上の掛け布団として取り込み、完全無欠の睡眠要塞をさらにアップデートした闇のヒロイン。彼女の「寝かしつけ(物理)」の連鎖は、もはやどんなメディアミックスにも止められないのである。
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