◆◆◆第39話:悪役令嬢の断罪イベント? だったらシャンデリアを引きちぎって、会場ごと「辺境」に変えちゃえ!◆◆◆
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「すぅ……すぅ……幽霊のお姉さん、涼しくて気持ちいい……」
ホラー世界の怨霊を「冷感抱き枕」として再利用し、極上の睡眠を満喫していたシーラたち。
しかし、突然鳴り響いた「華やかなワルツのBGM」と共に、暗闇の空間がまばゆい光を放つ「豪華絢爛な王宮のダンスホール」へと強制的に書き換えられた。
『——フフフ、野蛮な殴り合いの時代は終わりました。次なる新連載は、華麗なる知略とロマンスが交差する【悪役令嬢モノ】ですわ!』
天井からひらひらと薔薇の花びらが舞い散り、豪奢な扇子を持ったドレス姿の神霊が現れた。
乙女ゲームのシナリオと身分制度を司る『令嬢神・ロザリア』である。
『ここは物語のクライマックス、【断罪イベント】の会場! 貴女は今、ヒロインをいじめた悪役令嬢として、すべての権力とステータスを剥奪される運命にあります! さあ、この圧倒的な社会的ピンチを、貴女はどう言葉で弁明し——』
「静粛に!! 悪逆非道なる令嬢シーラよ!」
ロザリアの言葉に合わせるように、ホールの階段の上から、キラキラとした金髪の王太子(ヒーロー役)がシーラをビシィッ! と指差した。
「貴様の悪行はすべてこの書類に記されている! 僕は貴様との婚約を破棄し、光の届かぬ【最果ての辺境】へと永久追放する!!」
周囲の貴族たちから一斉に浴びせられる、冷ややかな嘲笑と非難の視線。
物理的な腕力が一切通用しない「社会的な死」という絶望的なシチュエーション。
「た、隊長! ヤバいっす! 俺たち、急にフリフリの服を着せられたと思ったら、いきなり国から追い出される展開になっちまいました!」
「ここは腕力じゃどうにもならねえ! 証拠の書類を出して、言葉で無実を証明しないと——」
「えっ!?」
絶望する兵士たちをよそに、シーラは寝起きの目をパチクリとさせた後、パァァッ! と顔を輝かせた。
「光の届かない辺境!? それって、暗くて静かで、ずーっとお昼寝できるってこと!?」
『……は?』
「やったー!! 王子様、ありがとう! あたし、今すぐその辺境に行くね! バイバーイ!」
シーラは弾んだ足取りで、さっそくダンスホールの出口に向かって歩き出した。
『ちょ、ちょっと待ちなさい!』
令嬢神ロザリアが慌てて扇子を閉じて叫ぶ。
『断罪イベントで喜んで出て行く悪役令嬢がどこにいますか! ここは泣き叫んで命乞いをするか、隠し持っていた証拠で逆転裁判をするのがジャンルのお約束でしょう! 近衛兵! 彼女を取り押さえて、二時間続く「悪行の読み上げ」を聞かせなさい!』
「えーっ!? 二時間も!? あたし、今すぐ暗い辺境に行って寝たいのに!」
出口を近衛兵たちに塞がれたシーラは、不満げに頬を膨らませた。
そして、ダンスホールの天井で眩い光を放っている「超巨大なクリスタル・シャンデリア」をジッと見上げた。
「……あ! そっか!」
シーラはポンッと手を叩くと、着せられていた窮屈なドレスのスカートを力任せにビリッ! と破り捨て、動きやすい服装(ただの布切れ)になった。
「わざわざ遠くまで歩かなくても、ここを『光の届かない辺境(瓦礫の山)』にしちゃえばいいんだよね!!」
『……はい? いや、貴女まさか、社交界の象徴であるこの王宮を——』
「いくよーっ! 気合と根性のォォ……『強制・辺境お取り寄せ(解体作業)』ぃぃぃっ!!」
シーラは凄まじい脚力で跳躍すると、天井からぶら下がっていた重さ数トンの巨大シャンデリアの根元を両手でガシッ! と鷲掴みにし、そのまま力任せに「ブチィィィィッ!!」と引きちぎった。
『なっ!? なにをしている! 王室の権威の象徴を、物理的に引っこ抜くなァ!』
「そぉぉぉぉれっ!!」
ドッッッッバゴォォォォォォォォォォォォォォン!!!!
シーラが引きちぎった巨大シャンデリアを「モーニングスター」のように振り回し、王太子や近衛兵、さらにはダンスホールの壁や柱ごと、すべてを粉砕しながらフルスイングした。
煌びやかだった王宮は一瞬にして崩壊し、天井が落ち、照明はすべて割れ、あっという間に「光の届かない、ただの暗い更地(辺境)」へと変貌してしまった。
『ぎゃああああああああっ!? 私の! 私のドロドロした政治闘争の舞台が……ただの暴力による解体工事で、本当に辺境の荒野にされてしまったァァァッ!』
令嬢神ロザリアは、崩れてきた瓦礫(元・身分制度の象徴)の下敷きになり、綺麗なドレスをボロボロにしながら「これが……真の悪役……」とつぶやいて消滅した。
「あははっ! ほらね! 電気を消して壁を壊せば、ここも立派な辺境だよ!」
「シ、シーラ隊長……ついに『身分を奪われる断罪イベント』すら、会場を更地にして物理的に辺境を創り出しちまった……!」
「社会的な追放を喜んで受け入れた上に、首都を更地にして辺境に変える……隊長の気合の前には、政治力も身分制度もただの建材っすね……!(戦慄)」
「よーし! これで静かになったし、涼しいお姉さん(怨霊)を抱っこして、二度寝の続きだよー!」
どれほど緻密な政治闘争であろうと、どれほど絶望的な社会的追放であろうと。
シーラの「暗いところで寝たいから会場をぶち壊す」という究極の物理的欲求(と気合)の前では、ただのまどろっこしい茶番でしかなかった。
ドロドロの乙女ゲーム展開すらも豪快な解体作業で終わらせ、闇のヒロインの無法者戦記は、いかなるジャンルの法則にも縛られることなく、我が道(お昼寝への道)を貫き通すのである。
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