◆◆◆第36話:難解な密室トリック? だったら壁ごとぶち破って風通しを良くしちゃえ!◆◆◆
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「すぅ……すぅ……機械のおじさんが静かになって、やっとゆっくり眠れる……」
SF世界のポンコツサーバーを物理でシャットダウンし、三度目の正直で深い眠りにつこうとしていたシーラたち。
しかし、その静寂は突如として鳴り響いた「雷鳴」と「不気味なバイオリンのBGM」によって破られた。
『——吹雪に閉ざされた孤島の洋館。そこで起きる連続密室殺人事件!』
おどろおどろしいナレーションと共に、平和な暗闇の空間が「古びた洋館の薄暗い一室」へと強制的に上書きされていく。
『暴力で解決する野蛮な時代は終わった。次なる新連載は、読者の知的好奇心を刺激する【本格ミステリー】だ!』
鹿撃ち帽を被り、パイプを咥えた神霊が、部屋の宙に浮かび上がった。
あらゆる謎とトリックを司る『推理の神・ディダクション』である。
『ようこそ、絶望の館へ! 貴様らは今、鍵も窓もない【完全密室】に閉じ込められた! この扉は外側から、氷のブロックとピアノ線を使った極めて複雑な物理トリックによって施錠されている! 私が仕掛けたこの「完璧な謎」を論理的に解き明かさない限り、貴様らは永遠にこの部屋から出ることはでき——』
「ねえ、ちょっと!」
ディダクションの長々としたトリックの自慢話を遮り、シーラは不機嫌そうに鼻をつまんだ。
「この部屋、狭いし、なんかおじさんのパイプの煙で空気がすっごくモワモワしてるんだけど!!」
『……は? 何を言っている。ここは完全密室。空気が籠もるのは当然であり、それこそが絶望を煽るスパイス——』
「こんなに空気が悪いところで寝たら、風邪ひいちゃうでしょ!」
シーラは立ち上がると、扉の鍵穴やピアノ線の仕掛けには一切目もくれず、洋館の分厚いレンガの壁の前に立った。
「窓がないなら、新しく作って風通しを良くするしかないね!!」
『……はい? いや、待て。ミステリーにおいて「壁を破壊して脱出する」などという行為は、ジャンルの根底を覆す最悪の禁じ手——』
「いくよーっ! 気合と根性のォォ……『強制・間取り変更』ぃぃぃっ!!」
シーラは巨大剣『ナイトメア・ブレイカー』をフルスイングし、分厚いレンガの壁に向かって全力の一撃を叩き込んだ。
ドッッッバゴォォォォォォォォォォォォォォン!!!!
『ぎゃああああああああっ!? 密室が! 私の考えた完璧な密室の壁が、ただの物理的暴力で木っ端微塵にィィィッ!』
シーラの凄まじい一撃により、洋館の壁一面が跡形もなく吹き飛び、そこから外の新鮮な空気(と吹雪)が猛烈な勢いで流れ込んできた。
さらに、壁が崩落した衝撃で扉の周りに仕掛けられていた「氷とピアノ線の複雑なトリック」も、何の意味もなくガラガラと崩れ去ってしまった。
「あははっ! すっごくいい風が入ってきたー! あ、ついでにそっちの壁も壊して、もっとお部屋を広くしちゃおう!」
ドガァァァァン!! バキィィィィン!!
シーラが楽しそうに壁や柱を次々とぶち壊していくと、謎解きの舞台となるはずだった洋館自体が物理的に倒壊し始めた。
『あ、あああ……密室という概念が……ただの「風通しの良い更地」に……これではトリックも推理も成立しない……』
ディダクションは崩れ落ちる瓦礫の下敷きになり、パイプの煙と共に「犯人は……お前だ……」とつぶやきながら消滅した。
「あ! おじさんがトリックに使ってた『氷のブロック』、ちょうどジュース冷やすのにピッタリじゃん! いただきー!」
「シ、シーラ隊長……ついに『完全密室』すら、壁をぶち破って風通しを良くするっていう物理的リフォームで解決しちまった……!」
「どんな複雑なトリックも、現場ごとぶち壊せば無意味……隊長の気合の前には、本格ミステリの頭脳戦もただの解体作業っすね……!(戦慄)」
「よーし! 洋館も無くなって、また真っ暗で広い空間に戻ったね! 今度こそ、ジュース飲んでお昼寝だーっ!」
どれほど精巧なトリックであろうと、どれほど完璧な密室であろうと。
シーラの「空気が悪いから壁を壊して換気する」という究極の物理的欲求(と気合)の前では、ただの窮屈で壊れやすい箱でしかなかった。
知性と論理のジャンルすらも豪快なリフォームで更地に変え、闇のヒロインの無法者戦記は、いよいよどんな世界観であろうと意に介さず、お昼寝(平和)のために爆走していくのである。
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