◆◆◆ 第20話:絶対の未来予知? だったら何も考えずに殴っちゃえ! ◆◆◆
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「あー、美味しかった! ハトのお爺ちゃん(時の神)が時間を早送りしてくれたおかげで、お弁当の漬物もいい感じに浸かってたね!」
神域の広場で、運命のハンモックに揺られながら完璧なランチタイムを終えたシーラ。
すっかり満腹になって立ち上がろうとしたその時、彼女たちの足元に無数の幾何学的な魔法陣が浮かび上がり、空間が眩い光の書庫へと変化した。
空中に浮かぶ無数の本棚の中心から、巨大な一冊の『全宇宙の予言書』を抱えた知の化身——『全知の神・オラクル』が姿を現す。
『……満腹中枢が刺激され、血糖値が上昇したことで貴様らの思考速度は0.3秒遅延している。運命と時間を力技で超えたイレギュラーよ、だが私の目は誤魔化せない』
オラクルが予言書をパラパラと捲ると、そこに「これからのシーラたちの動き」が映像として浮かび上がった。
『我は全知。宇宙の始まりから終わりまで、すべての事象と可能性を記録する者。貴様が次に「右足を踏み込み、大剣を上段から叩きつける」ことも、すでにこの本に記されている。完全な未来予知の前に、気合などという不確定要素すら計算の内だ』
オラクルの言葉通り、シーラはちょうど右足を踏み込み、巨大剣『ナイトメア・ブレイカー』を上段に構えようとしていた。
「えっ? おじさん、あたしが次に何するか分かるの? すごーい!」
『いかにも。ゆえに貴様の攻撃は永遠に当たらない。私の予知によれば、3秒後に貴様は——』
「うーん……じゃあ、何も考えないで動けばいいんだね!」
『……は?』
シーラは構えていた大剣を、ポイッとその場に投げ捨てた。
そして、目をカッと見開き、口を半開きにして、完全にアホ面のまま(しかし満面の笑みで)直立不動の姿勢をとったのだ。
「隊長!? なに急に魂が抜けたみたいな顔してるんすか!」
「違うっす! あれは……極限まで思考を放棄した『完全なる無』状態っす!」
『フン、馬鹿なことを。どれほど思考を放棄しようと、物理的な筋肉の収縮から未来の軌道は予測可能……な、なにぃ!?』
オラクルが予言書に目を落とすと、今まで鮮明に映し出されていた未来の映像が、突如として「砂嵐」に変わっていた。
『予言書が……読めない!? バカな、知性ある生命体が「完全に何も考えずに」複雑な行動をとることなど、論理的に不可能だ!』
「…………(アハハハハッ!)」
言葉すら発さず、ただ笑顔のまま、シーラは突然その場で「コマ」のように猛烈な勢いで回転し始めた。
右へ行くのか、左へ行くのか、跳ぶのか、転がるのか。
脳からの指令ではなく、もはや「脊髄」と「気合」の反射のみでデタラメに空間を跳ね回る。
ビュンッ! ガガンッ! ボヨンッ!
壁を蹴り、天井でバウンドし、スーパーボールのように神域の書庫を超高速で乱反射するシーラ。
一切の論理も目的もなく、ただ「気合で跳ね回る」という暴挙を前に、全知の神の計算能力は完全にショートした。
『あ、あああ……右か!? いや上!? 予測演算エラー! 未来の可能性が無限に分岐して……ウギャアァァァッ!!』
予測を放棄してただ突っ立っていたオラクルの顔面に、デタラメに跳ね回っていたシーラの『超絶無意識・気合のドロップキック』が、文字通り「偶然」クリーンヒットした。
ドッゴォォォォォォォォォォォォン!!!
『全知の……私の脳内が……真っ白に……』
オラクルは予言書を放り出し、白目を剥いて壁にめり込んだ。
「あははっ! 目が回ったー!」
ドスン、と着地したシーラは、ケロリとした顔でVサインを作った。
「シ、シーラ隊長……ついに『完全な未来予知』すら、何も考えないっていう究極のアホ(褒め言葉)で突破しちまった……!」
「思考ゼロなのに気合だけは100パーセント……隊長の野生の勘は神様を超えてるっすね……!」
「よーし! このおっきな本(予言書)、表紙がカチカチで平らだから、お茶会用のテーブルにぴったりだね! もらっていこーっと!」
すべての未来が記された宇宙の予言書は、シーラの手によって「便利な持ち運び用テーブル」へとジョブチェンジさせられてしまった。
いかなる全知の神であろうと、何も考えていない(のに気合だけは異常にある)闇のヒロインの行動を予測することなど不可能である。
未来すらも物理とノリで粉砕し、シーラたちはいよいよ神域の最奥へと歩みを進めるのであった。
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