◆◆◆ 第19話:時間が停止した? だったら時計の針を無理やり回せ! ◆◆◆
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「ふわぁ〜、運命のハンモック、最高に寝心地よかったー!」
上位次元のさらに奥深く、神々や概念が棲まう『真理の神域』。
そこに進出したシーラ一行は、運命の女神を編み込んで作った巨大ハンモックでたっぷりお昼寝を満喫し、スッキリと目を覚ましていた。
「さてさて、次のお茶会の準備をしなくちゃ。お湯を沸かして……」
闇の兵士がティーポットを傾けた、まさにその瞬間だった。
ピタリ。
ポットからこぼれ落ちるお湯が、空中で完全に静止した。
それだけではない。風の音も、舞い散る光の粒子も、瞬きすらも。世界から一切の「動き」と「音」が消え去り、空間全体が色褪せたような灰色に染まったのだ。
灰色の空間の上空に、巨大な歯車を背負い、手には『宇宙の絶対時計』を持った白髭の神霊が現れる。
世界の時間を管理する『刻の神・クロノス』である。
『……ふむ。運命のファトゥムが敗れるとは予想外であったが、案ずることはない』
クロノスの声だけが、直接脳内に響き渡る。
『我はすでに、この神域の時間を【完全に停止】させた。いかなる物理的腕力があろうと、「時間」という概念が進まなければ、コンマ1ミリすら動くことは不可能。貴様らはこのまま永遠の静寂の中で、彫像として——』
「うーん……なんか急に、空気がすっごくネバネバするね!」
『なっ……!?』
クロノスは自分の目を疑った。
時間が完全に停止し、物理現象が一切起こらないはずの空間で、シーラが「どっこいしょ」とハンモックから立ち上がったのだ。
ただし、普段のような素早い動きではない。まるで水中か、分厚い泥の中を歩くように、全身の筋肉をプルプルと震わせながら、「無理やり」動いている。
『ば、馬鹿な!? ゼロ秒の世界で動いているだと!? 時間が存在しないのに、なぜ空間を移動できるのだ!?』
「あー、もう! 歩きにくくてしょうがないなぁ!」
シーラは力任せに空間の「ネバネバ(停止した時間)」をかき分けると、空中に浮かぶクロノスの目の前まで力技で跳躍した。
「あのね、お爺ちゃん!」
『ひっ……!?(時間が止まっているのに、話しかけられた!?)』
「時計が止まっちゃったなら、手でゼンマイを巻いて針を回せばいいだけでしょ!!」
『……は? 何を……いや、待て! 私が持っているのは宇宙の絶対時計……時間に触れることなど——』
「いくよーっ! 気合と根性のォォ……『強制・早送り(早回し)』ぃぃぃっ!!」
シーラは、クロノスが抱えていた『宇宙の絶対時計』の巨大な長針と短針を、両手でガシッと物理的に鷲掴みにした。
『や、やめろォォォッ! その針を強引に回せば、宇宙の時間の流れが——』
ギュルギュルギュルギュルギュルッッ!!!
シーラが渾身の力(気合)で時計の針を猛スピードで回し始めた瞬間、灰色の世界が凄まじい勢いで色を取り戻し、狂ったように時間が加速し始めた。
空中で止まっていたお湯は一瞬で蒸発し、周囲の光の粒子はコマ送りのようにビュンビュンと飛び交う。
『あわわわわっ! 時間が! 概念が物理的な腕力で早送りされていくぅぅぅっ!』
絶対時計の持ち主であるクロノス自身も、早送りの影響をモロに受け、白髭の老人から青年へ、少年へ、そして最終的には「喋る可愛いハト(鳩時計のサイズ)」にまで若返って(?)しまった。
「あははっ! ほらね、針を回したら動くようになったよ!」
シーラが時計の針から手を離すと、世界は再び正常な時間の流れ(と快適な暗闇)を取り戻した。
「シ、シーラ隊長……ついに『時間の停止』すら、空気のネバネバ扱いして力技で突破しちまった……!」
「時計の針を無理やり回して時間を動かすなんて……もう神様でもどうにもならねえっすよ……!」
動けるようになった闇の兵士たちが戦慄する中、シーラは足元で目を回しているハト(元・時の神)を拾い上げた。
「よーし! 時計の針もいっぱい回したし、ちょうどお昼ご飯の時間だね! みんな、お弁当にしようー!」
時間が停止しても、それはシーラにとって「ちょっと歩きにくい空気」でしかない。
宇宙の絶対時計すらも、ただの手巻き時計として物理的に回してしまう闇のヒロインの気合は、神々の領域を次々と(物理的に)破壊していくのである。
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