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なんか知らんけど世界が騒いでる~転生したら最強赤ちゃんでした~[カクヨムに連載中]  作者: Kurara-Lunaria


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第9話 普通とは?

◆王城・訓練場


石造りの広い空間に、乾いた音が響いていた。


カン、カン、と剣がぶつかる音。

踏み込みの重い足音。

息を吐く音。


訓練場には何十人もの騎士がいて、それぞれが剣を振り、打ち合い、汗を流している。


窓から差し込む光が、舞い上がる砂埃を照らしていた。


「こちらです、ルーク様」


リリアに案内されながら中に入る。


……すごいな。


思わず足が止まる。


ただの練習なのに、空気が張り詰めている。

一人一人の動きに無駄がなくて、見ているだけで分かる。


強い。


(ちゃんと“戦う人間”の動きですね。今までの環境と全然違います。)


その中でも、一際目立つ場所があった。


広めに空けられたスペース。


そこでは――


ギィン!!


鋭い金属音が響いた。


シリウスと、一人の男が剣を交えている。


お互い一歩も引かない。


速い。


踏み込み、振り、受け流し。

全部が繋がっている。


騎士団長だろうな。


そう思いながら見ていると――


勝負が動いた。


シリウスの一瞬の隙。


そこを、正確に突く。


カンッ!


剣が弾かれた。


「……そこまでだ」


低く、落ち着いた声。


勝者は、騎士団長だった。


シリウスが軽く息を吐き、剣を下ろす。


「やっぱり強いな……」


「まだ甘いな。だが悪くない」


短いやり取り。


そのあと、二人がこちらに気づいた。


シリウスが手を振る。


「やあ、ルーク。どうしたんだい?」


そのまま隣の男に視線を向ける。


「紹介するよ。騎士団長のブレイザーだ」


騎士団長――ブレイザーは、まっすぐこちらを見る。


無駄のない立ち姿。


視線だけで分かる。


この人、かなり強い。


「初めまして。私はブレイザー・グランツ。騎士団長を務めております」


一度、軽く頭を下げる。


「本日はどのようなご用件で――」


「剣、教えてほしい」


間を置かず言う。


空気が止まった。


「…………」


(完全に“何を言われたのか理解できていない顔”ですね。)


シリウスが横で吹き出しそうになっている。


騎士団長は一瞬だけ視線を逸らし、すぐに戻した。


「……失礼しました」


すぐに表情を整える。


さすがだ。


「承知しました。では、基礎から――素振りは経験がありますか?」


「ないな。とりあえずやってみる」


木剣を渡される。


手に持った瞬間、重さとバランスを確認する。


……なるほど。


これが剣か。


(いや適応早すぎません?初めてですよね?)


念のため、身体強化を少しだけ使う。


軽く息を整えて――


振る。


ブンッ――


「あ」


軽い音とともに、手が空いた。


木剣が視界から消える。


次の瞬間――


ドンッ!!


遠くの壁に突き刺さった。


「…………」


(騎士団長の横、ギリギリ通過しましたね。今の完全に事故です。)


訓練場の空気が凍る。


周りの騎士たちの動きも止まっていた。


シリウスがゆっくり口を開く。


「……今の、素振り?」


「そうだけど」


「ちょっと力入れすぎた」


「ちょっとじゃないよ!?」


声が響く。


騎士団長は無言で壁に刺さった木剣を見ていた。


それから、ゆっくりこちらに向き直る。


「……確認させてください」


「はい」


「剣を握るのは、本日が初めてで間違いありませんか?」


「初めてだな」


沈黙。


(処理が追いついていませんね。思考停止です。)


騎士団長は一度だけ目を閉じた。


そして開く。


「……分かりました」


切り替えが早い。


「まずは“力を抑える”ところから始めましょう」


「全力は危険です」


「そこまでか?」


「国が壊れます」


「そこまでじゃないだろ」


「いや、あり得るよ……?」


シリウスが真顔で言う。


まあ確かに、さっきはちょっと飛びすぎた気はする。


「じゃあ身体強化なしでやる」


新しい木剣を受け取る。


今度は慎重に。


構えて――


振る。


ブォンッ!


今度は飛ばない。


……が。


ズンッ


空気が裂ける音。


その軌跡が、目に見える形で走る。


騎士団長の横を、透明な“何か”が通り抜けた。


後ろの木製の的が、斜めに切れて崩れる。


「「…………」」


(今度は“風の刃”ですね。もう剣関係なくないですか?)


シリウスが両手で頭を押さえる。


「待って!?なんで!?身体強化なしでそれ出るの!?」


「俺も分からん」


騎士団長が低く呟く。


「……今のは魔法ではありませんね?」


「使ってない」


「…………」


(本日、完全停止五回目です。)


騎士団長は深く息を吐いた。


そして、遠くを見た。


「……理解しました」


いや、多分理解してない。


「ルーク様」


「何だ?」


「まず“普通の人間の範囲”を覚えていただきます。

基準がないと、指導が成立しません」


なるほど。


それは確かにそうだ。


「では、これを使ってください」


渡されたのは、かなり軽い訓練用の木剣。


「力を抜いて、“振るだけ”を意識してください」


「分かった」


構える。


今度こそ、慎重に。


ゆっくり。


振る。


スッ――


……何も起きない。


「おお」


普通だ。


「これが基準です!」


騎士団長が少しだけ声を強くした。


珍しいな。


(ちょっと嬉しそうですね。“普通”が出てきて。)


「今の感覚を忘れないでください」


「ここから積み上げていきます」


なるほどな。


……剣、面白いかもしれない。


そう思った瞬間。


「――で、さ」


シリウスが横から覗き込む。


「なんで一歳でそれ出来るの?」


「知らん」


「知らんで済ませていい話じゃないよね!?」


(その通りです。)


訓練場の空気は、さっきまでとは別の意味でざわついていた。


騎士たちはちらちらとこちらを見ている。


そりゃそうか。


……まあいい。


とりあえず。


「もう一回やるか」


剣を構える。


騎士団長が即座に言った。


「力を抜いてください!」


「分かってる」


多分。


(不安しかありません。)


再び剣を振る。


今度は――


ちゃんと“普通”に近づけるために。

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