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なんか知らんけど世界が騒いでる~転生したら最強赤ちゃんでした~[カクヨムに連載中]  作者: Kurara-Lunaria


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第8話 読めてしまった…②

――次の日(1歳)――


朝。


目を覚ました瞬間、昨日の会話を思い出す。


今日は――古代語の勉強だ。


正直、ネラージュのテンションはちょっとアレだが、それを差し引いても楽しみではある。


未知の言語。


しかも“誰も読めない”レベルのものだ。


面白くないわけがない。


そんなことを考えていると、部屋の扉が静かに開いた。


「おはようございます、ルーク様!」


リリアだ。


いつも通り元気である。


そのまま自然な動きで後ろに回り、髪を整え始める。


慣れてきたな、この流れ。


「今日は――」


「古代語の勉強があるんだろ?」


先に言うと、リリアはぱっと表情を明るくした。


「よく知ってますね!」


まあ昨日あれだけ話してたしな。


鏡越しに自分の姿をぼんやり眺めながら、適当に相槌を打つ。


整えられていく髪。


服のしわも丁寧に直されていく。


赤ちゃんなのにこの扱い、ちょっと面白い。


「はい、終わりました!」


「ありがと。じゃあ行ってくる」


「いってらっしゃいませ!!」


やたら元気な見送りを背に、部屋を出る。


王城の廊下を歩く。


高い天井に、磨かれた床。


朝の光が窓から差し込んで、静かな空気を作っている。


……が。


俺が通り過ぎるたびに、


「うっ……」


「か、可愛すぎ……」


みたいな声が聞こえてくる。


侍女たちが胸を押さえている。


……なんだこれ。


「呪いでもかかってるのか?」


(いえ。多分ただの可愛さです。見た目は完全に赤ちゃんなので)


害はなさそうだし放置でいいだろう。 


そのままネラージュの部屋に向かう。


扉の前に立ち、軽くノック――しようとしたところで、気づいた。


中から、なにか聞こえる。 


「――我が探究の神よ……本日も素晴らしい研究対象を……」


……祈ってる。


開けるか。


ガチャ。


ネラージュが膝をついて祈っていた。


……気にしない。


気にしたら負けだ。


「来たぞ。顔上げろ」


「はっ!おはようございますルーク様!!」


勢いよく立ち上がる。


目がキラキラしている。


ちょっと怖い。


(今日も絶好調ですねこの人)


「今日は古代語見せてくれるんだろ?」


「もちろんです!現在と共通している場所はいくつか見つけましたがそれしかわからなくて…」


ネラージュは嬉しそうに頷き、すぐに一冊の本を取り出した。


かなり古そうだ。


表紙は色褪せ、ところどころ擦り切れている。


だが――


ただの本じゃないのは、見ただけで分かる。


ページを開く。


見たことのない文字列。


だが完全に未知というわけでもない。


どこか今の言語と似ている。


「ふむ……」


まずは共通点を探す。


形。


並び。


繰り返し。


文の区切り。


徐々に、規則性が見えてくる。


(すごい集中力ですね……というかネラージュが完全に観察モードに入ってます。目が怖いです)


無視。


頭の中で組み立てる。


仮説を立てて、当てはめて、修正する。


……いける。


さらに読み進める。


意味が繋がる。


文章として成立する。


汗が、額ににじむ。


そして――


「……よし」


本を閉じる。


「読めた」


静かに言った。


(……え?)


ネラージュが固まる。


数秒遅れて、震えながら口を開いた。


「……読めた、のですか?」


「うん」


沈黙。


「……ああ、もう……」


ネラージュはふらっとよろめいた。


「感動で倒れそうです……」


「生きろ」


「はい、生きます!!」


元気になった。


なんだこいつ。


「王様に報告とか必要か?」


「ぜひ!ぜひお願いします!!」


やたら前のめりである。


(完全に研究スイッチ入ってますね)


◆客間


国王の前で、さっきの内容を説明する。


話を聞き終えた王は、大きく息を吐いた。


「はぁ……読めてしまったのか」


呆れ半分、感心半分といった顔だ。


「ありがたい話ではあるが……一歳の子供が最初の読者とはな」


「内容は日記だったな」


「日記?」


「うん。しかも最後に名前があった」


少し間を置いて言う。


「アストラル・ゼルファード」


空気が止まった。


ネラージュのペンが止まり、国王の表情が固まる。


「禁書庫にあった本で見つけたがこの名前は…」


「……待て。誰かはさすがにわかるが」


ゆっくりと国王が言う。


「禁書庫に入ったのか?」


「ああ」


「……あそこは私でも入れんぞ」


「そうなのか」


「そうなのだ!」


珍しく強めだった。


 


「……それで?」


国王は額に手を当てる。


「“古代王”の日記だと?」


「多分な」


少しだけ記憶を整理する。


「魔力量が測れなかったらしい」


「……ほう」


「自分で測ったら“∞”だったって書いてた」


沈黙。


ネラージュがガタッと音を立てた。


「あと、精霊王と契約したとも書いてあった」


さらに沈黙。


「精霊の魔法を使えるようになって、禁書庫を作ったとも」


完全に止まった。


国王がゆっくりと顔を覆う。


「……情報量が多すぎる」


そのまましばらく考え込み、深く息を吐いた。


「歴代最大の魔力量……唯一の精霊王契約者……禁書庫の創造者……」


「全部同一人物か」


俺は軽く頷いた。


実際はもう少し書いてあった。


転生とか、元日本人とか、神とか、文明とか。


だが――


そこは言わない方がいい気がした。


なぜか分からないが、妙に引っかかる。


(なんでしょうね。この妙な“既視感”)


横を見ると、ネラージュがものすごい勢いでメモを取っていた。


紙が追いついてない。


……すごいな。


まあいいや。


「じゃあ終わりでいいか?」


「終わり!?」


国王が顔を上げる。


「やりたいことあるんだよ」


少しの沈黙。


「……何をするつもりだ?」


俺は軽く笑った。


「ダンジョン配信」


国王は一瞬だけ目を細めたあと、ふっと笑った。


「そうか」


あっさりしている。


「……戦えるのか?」


「魔法は使える。でも実戦はないな」


「ならシリウスが騎士団長に剣を習っている」


なるほど。


「一緒にやるといい」


剣か。


ちょっと興味あるな。


まあ――


飛べるし、強化もあるし。


なんとかなるだろ。


(普通はなりませんが……もう基準が分かりません)


「じゃ、行ってくる」


そう言って、俺は部屋を出た。


次の目標は決まった。


――ダンジョン配信。


さて、どこまでいけるか。

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