第5話 王城に⁉
◆客間
用意された椅子に座りながら、俺はぼんやり待っていた。
……帰っていいかな。
(来たばかりですよ。)
しばらくすると、扉が開く。
国王、王妃、王子。
さっきと同じメンバーが入ってきた。
俺は一応立ち上がる。
「ほう」
国王が少し目を細める。
「礼儀も分かっておるではないか。座ってよいぞ」
「では失礼して。…完璧ではないですが、基本くらいはわかっているつもりです」
「そうかそうか」
楽しそうに笑う。
この人、完全に面白がってるな。
「よし、決めた」
なんか嫌な予感。
「おぬしには特別に、“敬語なしで話してよい権利”をやろう」
……は?
「我が認めた数少ない者のみの特権だ。今後、長い付き合いになるだろうしな」
うわ、めんどくさいの来た。絶対やばそう。
(今、顔に全部出てますよ。ちなみにその表情、普通はアウトです。)
「はっはっは!」
国王が爆笑する。
「いい顔をするな!」
……もういいか。
「じゃあ遠慮なく普通に話すわ」
「おお、一気に崩れたな。
さっきまでやたら姿勢良かったのは意識してたのか?」
まあな。
前世の癖だ。
「さて」
国王が少しだけ真面目な顔になる。
「本題だ」
空気が変わる。
「おぬしのことは、ある程度把握しておる」
「へぇ」
「精霊を一体、そばに付けさせてもらっていた」
……ああ。
あの光ってるやつか。
「我が情報は基本的に精霊から得ておる。おぬしが話せるのも、それで知った」
「なるほどな」
じゃあずっとバレてたのか。
「……というか」
国王がじっと見る。
「おぬし、“見えておるのか”?」
「ん?ああ、見えてるけど」
空気が止まった。
「……ほう」
国王の目が変わる。
「精霊はな、相当な魔力量を持つ者にしか見えん」
「そうなのか」
知らんかった。
(知らずに見てるのが一番おかしいんですよ。)
「面白い」
国王は笑う。
「では一つ、確認させてもらおう」
またもや嫌な予感。
「我が直々に、魔力量を測ってやる」
「遠慮しとく」
即答。
「なぜだ」
「なんか面倒そう」
「はっはっは!」
また笑ってる。
そのとき――
「ルークくん」
王子が口を開いた。
「やってもらえばいいんじゃないかな」
柔らかい声。
「父上の測定は正確だよ。どうせ五歳で必ずやることだしね」
……今やっても後でやっても同じなら――
「……じゃあ、頼む」
「よし、来い」
立ち上がる。
国王の前に立つ。
魔法陣が展開される。
……おお。
初めてちゃんと見るな。
俺はなんか適当にできてたし。
ちょっとかっこいい。
しばらくして――
沈黙。
「……?」
国王が固まっている。
「どうした?」
「……測れん」
は?さっき完璧って言ってなかった?
(失敗ではありませんね。“上限を超えている”だけです。)
「おぬし……何をした?」
「何をって言われても……増やしただけだけど」
「増やしただと?」
王妃と王子が同時に反応する。
「父上より……多いのですか?」
王子の声に、国王はゆっくり頷いた。
「恐らくな」
「……は?」
空気が完全におかしくなった。
「ますます面白い」
国王は楽しそうに笑う。
「決めた」
今までで1番嫌な予感しかしない。
「王城に来い」
やっぱり。
「ここで暮らせ」
「えー面倒そう」
普通に嫌なんだけど。
「おぬし、正直すぎるだろう」
だってな。
いや、でも――
本は多そうだな。
本があるってことは知識も集まるだろうし。
配信もある世界、情報は多い方がいい。
「……まあ、勉強できるならいい。
色々知りたいし」
「ほう」
国王が満足そうに頷く。
「探究心もあるか。よし、おぬしがいいなら決定だ」
決定早すぎだろ。
国王は騎士に目を向ける。
「アルヴェイン家に伝えろ」
そのまま、こちらを見る。
「親と離れることになるが――」
一瞬、間を置いて。
「まあ、おぬしなら問題なかろう」
軽いな。
……まあいいけど。
――こうして俺は、
なぜか王城で暮らすことになった。
絶対最初からそのつもりだっただろ。
部屋に案内される。
広い。
普通に広い。
落ち着かないくらい広い。
そして――
「きゃー!!」
突撃。
「可愛い!!」
抱きつかれた。
……デジャヴ。
「今日からお世話します、リリアです!」
テンション高いなこの人。
(距離感がバグってますね。)
……まあ、いいか。
そこまで環境変わってない気がするからある意味安心する。
――次の日(1歳)――
朝。
普通に起こされた。
リリアに。
「ルーク様、朝ですよー!」
……元気だな。
髪を整えられながら、話を聞く。
「今日はですね!
国王様が用意してくださった家庭教師の方とお会いします!」
早いな。
仕事できるなあの人。
……というか
こんな赤ちゃんに教えたい人いるのか?
(まともな人なら断りますね。)
心配になってきたルーク。
――そして。
現れたのは
やたら整った顔の男だった。
無駄にイケメン。
だが。
俺を見た瞬間――
目の色が変わった。
……あ、これダメなタイプだ。
「……コホン」
咳払い。
遅い。
「私、ネラージュ・エルディオールと申します。
この国で学者をしております。一応ですが」
いや“一応”の圧じゃないだろ。
「本日は貴方様に教えられるということで――
けんきゅ……ではなく、勉強を」
言い直したな今。
(完全に“研究対象”を見る目でしたね。)
「……大丈夫かこいつ」
小声でリリアに聞く。
「普段はもっと落ち着いた方なんですけど……」
目そらしたな。怪しい…
聞けば、この人。
今まで家庭教師の依頼は全部断ってきたらしい。
俺が初めて。
……なんで受けた。
(理由が分かりやすすぎます。)
まあいいか。
逃げられないし。
「ルークだ。よろしく」
「はい!!」
満面の笑み。
……怖い。
こうして俺の王城生活と、
ちょっと危ない家庭教師との勉強が――
始まった。




