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第97話 最後の訪問
2024年4月28日(日)~29日(月)
ゴールデンウィーク前の最後の訪問。
美久は、いつもより多くの荷物を持参した。
本、食料、薬、工具...
「なんか、準備万端だね」
茶トラ青年が笑った。
「うん。しばらく来られなくなるかもしれないから」
美久の言葉に、みんなの表情が曇った。
「なんで?」
「就活が忙しくなるから」
嘘だった。
本当は、この町が危険になるかもしれないと感じていた。
でも、みんなを不安にさせたくなかった。
その夜、美久は猫たちに囲まれて眠った。
布団の上に、たくさんの温かい体。
幸せな時間。
でも、心の奥では感じていた。
これが最後かもしれないと。
別れの朝
2024年4月29日(月)
朝、美久は重い心で祢古町を後にした。
「また来るからね」
「絶対だよ」
「約束」
みんなが、手を振って見送ってくれた。
美久も、車の窓から手を振る。
でも、涙が止まらなかった。
バックミラーに映る祢古町が、少しずつ小さくなっていく。
そして、美久の予感は的中した。
2日後、祢古町に封鎖の手が伸びることになる。




