第93話 変化の兆し
3月26日午前
ブログを読み返していると、千春から電話がかかってきた。
「みく、昨日のブログ読んだよ」
「あ、うん」
「なんか...文章の感じが違う」
美久は、ドキッとした。
「え?どこが?」
「いつもより...なんていうか、含みがある感じ?」
千春の観察眼は鋭い。長年の友人だからこそ、微妙な変化に気づく。
「そうかな?」
「うん。まるで、本当はもっとすごい体験をしたけど、隠してるみたい」
美久は、電話を握る手に力を込めた。
「そ、そんなことないよ〜」
「ふーん...まあ、みくがそう言うなら」
千春は、それ以上追求しなかった。
でも、最後に言った。
「何か特別なことがあったら、いつでも話してね」
「...うん」
美久は、友人の優しさに胸が熱くなった。
午後の発見
いつもの駐車場で黒猫を発見。
普通なら、美久の姿を見た瞬間に逃げるはずの黒猫。
でも...
黒猫は、じっと美久を見ていた。
逃げる様子はない。
美久は、ゆっくりと近づいた。
鈴が、チリンと小さく鳴る。
2メートル。
黒猫は動かない。
「おはよう」
美久が小さく声をかけると、黒猫は「にゃあ」と返事をした。
「すごい...挨拶できた...」
美久は、感動で震えた。
祢古町の影響は、確実に美久を変えていた。
普通の野良猫との距離も、縮まっている。
初訪問後の変化
2024年3月27日(水)
祢古町の初訪問から4日後。
美久の周りで、明らかな変化が起きていた。
まず、朝の通学路での出来事。
いつもの駐車場で、黒猫を発見。 いつもなら、美久の姿を見た瞬間に逃げるはずの黒猫。
でも...
黒猫は、じっと美久を見ていた。 逃げる様子はない。
美久は、ゆっくりと近づいた。 鈴が、チリンと小さく鳴る。
2メートル。 黒猫は動かない。
「おはよう」
美久が小さく声をかけると、黒猫は「にゃあ」と返事をした。
「すごい...挨拶できた...」
美久は、感動で震えた。
祢古町の猫たちじゃない、普通の野良猫と挨拶ができた。 2メートルまで近づけた。
これは、革命的な進歩だった。
大学での変化
大学の中庭で、いつものように昼食。
三毛猫が近づいてきた。 キャンパスで有名な猫で、人懐っこいことで知られている。 でも、美久には絶対に近づかなかった猫。
その三毛猫が、今、美久から2メートルの距離に座っている。
「...お腹すいた?」
美久は、サンドイッチの具のツナを少し取り出した。
三毛猫は、慎重に近づいてきた。 そして、ツナを食べ始めた。
「みく、すごい!猫が逃げてない!」
千春が驚いて駆け寄ってきた。
「本当だ...信じられない...」
「祢古町のおかげかな」
美久は、胸元の鈴を見せた。
「あそこでもらったんだ」
「へえ、きれいな音」
千春が興味深そうに鈴を見つめる。
「なんか、みくの雰囲気も変わった気がする」
「そう?」
「うん。前より...落ち着いたっていうか」
「自信がついたっていうか」
千春の観察は鋭かった。
確かに、美久の中で何かが変わっていた。
焦りが消えて、余裕が生まれた。
猫に対する執着が、愛情に昇華された。




