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第92話 みくの気まま旅日記 - 偽装された真実

2024年3月26日(火)


美久は自分のブログを読み返していた。


昨日投稿した「みくの気まま旅日記」。3月25日の記事。


『結果から言うと... また猫に嫌われました〜!

でも今回はレベルが違った!町ごと追い出された!笑』


「うまく書けたかな...」


美久は、複雑な思いでスマートフォンの画面を見つめた。


あの記事は、嘘だった。


いや、完全な嘘ではない。


でも、真実でもない。


本当に起きたことは、あまりにも特別すぎて、そのまま書くわけにはいかなかった。


真実を隠す理由


祢古町での本当の体験。


猫たちとの心の交流。


子猫に触れた瞬間の感動。


ミユキとの対話。


陽の巫女の伝説。


そして、「また来てね」という温かい別れ。


すべてが、美久の人生を変える出来事だった。


でも、それをそのままブログに書くわけにはいかない。


(みんなの安全のために)


祢古町の存在は、秘密にしなければならない。


政府に知られたら、封鎖されるかもしれない。


観光地化されたら、町の平和が壊れるかもしれない。


だから、美久は決めた。


いつものように「猫に嫌われた」話として、軽く書こう。


でも、心の奥では罪悪感があった。


(本当は、生まれて初めて猫に受け入れられたのに)


(本当は、夢にまで見た体験ができたのに)


それを「失敗談」として書くなんて。


偽装記事の作成過程


3月24日夜


美久は、ノートにメモを書いていた。


『ブログ記事案』


書いてはいけないこと:


猫人間の存在


子猫に触れたこと


ミユキとの会話


陽の巫女の話


祢古屋旅館での宿泊


本当の場所(音無神社周辺)


また行く約束


書いてもいいこと:


祢古町という名前(曖昧に)


猫がたくさんいたこと


変わった体験をしたこと


楽しかったという感想


記事の方向性:


いつものコメディタッチ


「また猫に嫌われた」というオチ


でも、優しさは感じられた


読者が心配しない程度の軽さ


美久は、何度も下書きを書き直した。


真実に近づきすぎないように。


でも、完全な嘘にならないように。


絶妙なバランスを保ちながら。


投稿への迷い


3月25日朝


下書きが完成したが、美久は投稿を躊躇していた。


(これでいいのかな)


スマートフォンの「投稿」ボタンを前に、指が震える。


本当のことを書きたい。


あの感動を、みんなに伝えたい。


子猫の温もりを。


ミユキの優しさを。


黒猫の知性を。


でも...


(みんなを守らなきゃ)


美久は、子猫との約束を思い出した。


『秘密だよ』


あの小さな声。


信頼してくれた、純粋な瞳。


「分かった。秘密にする」


美久は、決意を込めて投稿ボタンを押した。


読者の反応


記事は、すぐに反響を呼んだ。


コメント欄には、いつものフォロワーたちの温かい言葉。


『ユーザー1:「みくちゃん最強説」』


『ユーザー2:「猫に触れない猫女、爆誕」』


『ユーザー3:「祢古町に拒否られるってある意味すごい」』


美久は、複雑な思いでコメントを読んだ。


みんな、優しい。


「また失敗した」という美久を、笑いながらも温かく受け入れてくれる。


でも、知らないんだ。


本当は成功したんだって。


本当は、夢が叶ったんだって。


『みく:「みんなコメントありがと〜!拒否られたけど楽しかったよ!」』


せめて「楽しかった」だけは本当のことを書いた。


あの体験は、確かに楽しかった。


人生で一番の宝物になった。

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