第86話 夜の語らい
夕食後、美久の部屋に何人か集まった。
少女、黒猫、ミユキ、茶トラ青年、そして子猫。
お茶を飲みながら、ゆったりと話す。
布団を敷いて、車座になって。
「美久さんは、どうして猫が好きなの?」
ミユキの質問に、美久は考え込んだ。
いつも聞かれる質問。
でも、いまだに明確な答えがない。
「どうしてだろう...理由なんてないかも」
「でも、何かきっかけは?」
「う〜ん...」
美久は、記憶を辿った。
一番古い、猫の記憶。
そして、一つの思い出に行き着いた。
祖母との思い出
「小さい頃、祖母の家に猫がいたの」
美久は、懐かしそうに話し始めた。
目を閉じると、その光景が蘇る。
「タマって名前の、真っ白な猫」
「可愛い名前」
「祖母が付けたの。『宝物みたいに大切』って」
でも、その猫も美久を避けた。
美久が近づくと、必ず逃げた。
箪笥の上、仏壇の後ろ、縁の下...
いつも、美久の手の届かない場所へ。
「悲しくて、よく泣いてた」
「それは辛いね」
子猫が、美久の膝で体勢を変えた。
慰めるように、美久の手に頭をすりつける。
「でも、祖母はいつも慰めてくれた」
そんな時、祖母が言った言葉。
『タマはね、美久ちゃんが眩しすぎるのよ』
『でも、いつか必ず分かり合える日が来る』
『だから、諦めないで』
祖母は、いつも美久の味方だった。
世界中が敵になっても、祖母だけは味方でいてくれた。
「祖母は、私の特別な力のこと、知ってたのかも」
「きっとそうね」
少女が頷いた。
「だから、励まし続けてくれた」
「希望を持たせてくれた」
美久は、鈴を見つめた。
祖母の形見の鈴と、音無神社の鈴。
二つ並べると、対になっているように見える。
「もしかして、祖母も...」
「陽の巫女だったのかもしれない」
黒猫の言葉に、美久は納得した。
すべてが繋がっていく。
過去と現在。
祖母と美久。
人間と猫。
すべてが、一つの物語として。




