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第78話 質問タイム

朝食中、美久は質問攻めにあった。


今度は、友好的な質問ばかり。


「人間の世界はどう?」


「最近は大変だよ〜。物価も上がってるし」


「猫カフェって本当にあるの?」


「うん!たくさんあるよ。でも私は入れなかったけど...」


「え?なんで?」


「猫たちが逃げちゃうから」


「それは昔の話でしょ?」


「うん、今は大丈夫!」


美久は、鈴を見せた。


「これのおかげで」


「きれいな音〜」


「触らせて」


みんなが興味深そうに鈴を見る。


でも、誰も無理に触ろうとはしない。


適切な距離を保ちながら、観察する。


「スマホって便利?」


若い猫人間が聞いてきた。


猫耳の生えた、高校生くらいの見た目。


「便利だけど、依存しちゃうと大変」


「依存?」


「ずっと見ちゃうの。時間が溶ける」


「こわい...」


「でも、猫動画がたくさん見れるよ」


「それはいい!」


話が弾む。


美久も、逆に質問した。


「みんなは、どうしてここに?」


すると、それぞれが自分の話を始めた。


様々な物語


「私は、ブラック企業で働いてた」


最初に話し始めたのは、三毛猫模様の女性。


昨日「追い出さなくていいの?」と聞いた猫だ。


人間の姿に、三毛猫の耳と尻尾。


年齢は30代前半くらいに見える。


名前は...覚えていないらしい。


「今は、ミユキって呼ばれてる」


「ミユキさん」


「うん。本名は...もう思い出せない」


少し寂しそうに、でも後悔はなさそうに言う。


「毎日終電、休みなし。体も心もボロボロ」


「大変だったんだね」


美久は、共感を込めて相槌を打つ。


「月の残業が200時間超えてた」


「それは...違法では...」


「そう。でも、辞められなかった」


「責任感?」


「それもある。でも、もっと単純」


ミユキは、苦笑した。


「辞めたら、生きていけないと思ってた」


「でも、今は?」


「生きてる」


シンプルな答え。


でも、重みがある。


「ある日、限界が来て...逃げるように旅に出た」


「それで祢古町に?」


「うん。最初は、道に迷っただけだったんだけど」


そして、たまたま祢古町にたどり着いた。


最初は、普通の観光のつもりだった。


古い町並みを見て、写真を撮って、帰るつもりだった。


でも、町の雰囲気に惹かれて...


「気がついたら、変化が始まってた」


「怖くなかった?」


「最初は怖かった。でも...」


ミユキは、自分の手(前足)を見つめた。


肉球のある、三毛模様の前足。


「楽になったの。責任も、プレッシャーも、全部消えて」


「ノルマも、評価も、出世競争も」


「全部、どうでもよくなった」


今は、好きな時に寝て、好きな時に起きる。


誰にも怒られない。


誰とも比べられない。


ストレスフリーな生活。


「後悔は?」


美久の問いに、ミユキはしばらく考えた。


そして、首を振った。


「ないわ。これが私の選んだ道」


「家族は?」


「...もう、私のことは忘れてると思う」


少し寂しそうに言うが、すぐに笑顔になった。


「でも、ここにも家族がいる」


周りの猫たちを見回して。


「血は繋がってないけど、本当の家族みたい」

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