第75話 朝の目覚め
美久は、不思議な感覚で目を覚ました。
体が、いつもより重い。
温かい重さ。
心地良い重さ。
瞼を開けると、まだ薄暗い部屋。
障子を通して、朝の光がぼんやりと差し込んでいる。
そして...
「...え?」
布団の上に、猫がいっぱいいた。
子猫だけじゃない。
美久の周りを、たくさんの猫たちが取り囲んでいる。
胸の上に一匹。
足元に二匹。
左側に三匹。
右側にも三匹。
そして、枕元にも...
数えてみる。
5匹、6匹...いや、もっと。
10匹は超えている。
みんな、美久の布団の上で眠っている。
思い思いの格好で。
丸まっている猫。
長く伸びている猫。
仰向けで寝ている猫。
美久を抱き枕にしている猫。
「いつの間に...」
美久が身じろぎすると、猫たちが次々と目を覚ました。
「にゃあ」
「ふぁ〜」
「んみゃ〜」
「おはよ〜」
最後のは、明らかに人間の言葉だった。
眠そうな、でも優しい声。
「おはよう、みんな」
美久が挨拶すると、猫たちは伸びをして起き上がった。
その動きが、妙に人間っぽい。
ある猫は、腰に手(前足)を当てて、ぐーっと伸びをする。
人間が朝にやる、腰を反らす運動。
別の猫は、首をコキコキ鳴らす。
右に傾けて、左に傾けて。
完全に人間の仕草。
また別の猫は、あくびをしながら目をこする。
前足で、眠そうに。
「みんな、なんでここに?」
美久の問いに、一匹の三毛猫が答えた。
昨夜、最初に質問した三毛猫。
少し恥ずかしそうに。
「だって、気になって」
「気になる?」
「人間が泊まるなんて、初めてだから」
他の猫たちも口々に言う。
「危険じゃないか確かめに」
「でも、全然平気だった」
「むしろ、あったかくて気持ちよかった」
「人間の体温って、高いのね」
「久しぶりに、人肌を感じた」
美久は、嬉しくて顔がほころんだ。
みんな、心配して見に来てくれた。
そして、大丈夫だと分かって、一緒に寝てくれた。
「みんな...」
美久の目に、また涙が浮かぶ。
でも、今日の涙は幸せの涙ばかり。
「あ、また泣いてる」
「お姉ちゃん、涙もろいね」
「でも、昨日と違う涙」
「うん、キラキラしてる」
猫たちの観察は、的確だった。




