第73話 みんなの決断
部屋に、他の猫たちも集まってきた。
様子を見に来たのだろう。
ドアの隙間から、そろそろと。
「どうなってるの?」
「触れてる...」
「人間に戻ってない」
「鈴の力?」
口々に驚きの声を上げる。
でも、まだ警戒している。
2メートルの距離を保ったまま。
少女が、状況を説明した。
陽の巫女のこと。
鈴の力のこと。
そして、美久の純粋な想いのこと。
みんな、真剣に聞いていた。
猫耳を立てて、一言も聞き漏らさないように。
説明が終わると、しばしの沈黙。
みんな、考え込んでいる。
そして、一匹の三毛猫が前に出た。
「じゃあ、もう追い出さなくていいの?」
「追い出す?」
美久が聞き返すと、みんなが気まずそうな顔をした。
耳を後ろに倒して、視線を逸らして。
「実は...」
黒猫が白状した。
「最初は、どうやって追い出すか相談してた」
「君が来た時」
「危険だと思って」
「そうなんだ...」
美久は、少し寂しそうに言った。
でも、理解はできる。
自分の存在が、脅威だったのだから。
でも、すぐに笑顔を取り戻す。
「仕方ないよね。私、迷惑だったもんね」
「違う!」
子猫が、美久の胸で叫んだ。
「迷惑じゃない!怖かっただけ!」
「怖い?」
「消えちゃうかもって」
子猫の言葉に、みんなが頷いた。
静かに、でも確実に。
「私たちは、やっと見つけたの」
三毛猫が前に出た。
「自分たちの居場所を」
「安心できる場所を」
「それを失うのが怖かった」
別の猫も続く。
「人間の世界では、生きづらかった」
「ここでなら、自分らしくいられる」
「でも、あなたが来て...」
「それが脅かされるかもって...」
美久は、みんなの気持ちを理解した。
自分も、居場所を探し続けていたから。
安心できる場所を、求め続けていたから。
「でも...」
黒猫が言った。
「あなたは、奪いに来たんじゃない」
「ただ、仲間に入りたかっただけ」
少女が、優しく言った。
「あなたも、居場所を探していた」
「私たちと同じ」
美久は、また泣きそうになった。
理解してもらえた。
受け入れてもらえた。
「うん...ただ、それだけ...」
「仲間に入れてほしかっただけ...」




