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第72話 変化の兆し

鈴の音が響いた瞬間、何かが変わった。


空気が変わった。


部屋の空気が、柔らかくなった。


ピリピリしていた緊張感が、和らいだ。


甘い香りも、優しくなった。


圧迫感が、消えた。


そして...


2メートルの距離を保っていた黒猫が、恐る恐る近づいてくる。


一歩、また一歩。


慎重に。


でも、確実に。


「これは...」


1.5メートル。


黒猫の表情に、驚きと期待が混じる。


1メートル。


「近づける...」


50センチ。


そして...


「触れる...」


黒猫が、美久の隣に座った。


ゆっくりと、慎重に。


人間に戻ることもなく、苦しむこともなく。


ただ、普通に。


当たり前のように。


「どうして...」


美久が驚いていると、少女が説明した。


「鈴が、あなたの力を調和させているの」


「調和?」


「陽の力を、攻撃的じゃない形に」


「破壊的じゃない形に」


「浄化ではなく、調和に」


黒猫が、美久の膝に前足を乗せた。


重さがある。


確かな存在感。


普通の猫のように。


「すごい...本当に触れてる...」


美久の声が、震えた。


嬉しさで。


驚きで。


「あなたの力は、本来なら守護の力」


少女が続ける。


「でも、制御できないと...」


「みんなを傷つけちゃう」


美久は、理解し始めた。


今まで、ずっと制御できていなかった。


暴走していた。


だから、猫たちは逃げた。


本能的に、危険を感じて。


でも、鈴があれば...


「じゃあ、この鈴があれば...」


「ある程度は」


少女は、正直に答えた。


「完全じゃない。でも...」


「でも?」


「共存できる」


その言葉に、美久の顔がパッと明るくなった。


希望の光が、瞳に宿る。


「本当に!?」


「みんなと一緒にいられる!?」


「触れる!?」


子猫が、美久の頬に鼻をつけた。


「うん、一緒にいられるよ」


黒猫も、美久に体をすり寄せた。


普通の猫のように。


親愛の情を示すように。


「ああ...」


美久は、幸せで胸がいっぱいになった。


言葉にならない。


ただ、涙が流れる。


幸せの涙。


感謝の涙。

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