第67話 転機の予兆
部屋に、重い沈黙が流れた。
美久は、膝の上で手を握りしめていた。
爪が手のひらに食い込むほど、強く。
(やっぱり、私はどこに行ってもダメなんだ)
(存在自体が、間違っている)
(生まれてこない方が良かった)
暗い考えが、渦巻く。
今まで、何度も思った考え。
でも、いつも否定してきた。
祖母の言葉を思い出して。
いつか、きっと、と信じて。
でも、もう限界かもしれない。
心が、完全に折れかけている。
そんな時、小さな鳴き声がした。
「にゃあ」
部屋の入り口を見ると、小さな子猫がいた。
さっきの白猫とは別の子猫。
灰色の、まだ生後数ヶ月といった感じの子猫。
目はブルー。
子猫特有の、澄んだ青い目。
「また来たの」
少女が困ったような声を出す。
子猫は、じりじりと美久に近づいてきた。
「ダメよ、危険だから」
黒猫が止めようとする。
前に出て、子猫をブロックしようとする。
でも、子猫は構わず進む。
黒猫の脇をすり抜けて。
小さな体を器用に使って。
2メートル。
みんなが息を呑む。
これ以上は、危険ゾーン。
1.5メートル。
「おい、止まれ」
黒猫の声に、焦りが混じる。
1メートル。
「!」
みんなが固唾を呑んで見守る。
少女も、立ち上がった。
何かあれば、すぐに対応できるように。
50センチ。
子猫は、美久の目を真っ直ぐ見ていた。
怖がる様子はない。
むしろ、好奇心に満ちている。
そして...




