第64話 過去の記憶
少女が、優しく問いかけた。
「美久さん、あなたの家系に何か特別なことは?」
「家系...?」
美久は、涙を拭きながら記憶を辿った。
家系...
特別なこと...
そして、ある記憶に行き着いた。
「あ、そういえば...」
祖母のことを思い出す。
優しかった祖母。
美久が猫に避けられて泣いて帰った時、いつも慰めてくれた祖母。
温かい手。
優しい声。
そして...
『美久ちゃんは特別なのよ』
あの言葉。
何度も聞いた言葉。
『太陽みたいに眩しすぎて』
意味が分からなかった言葉。
でも、美久を支えてくれた言葉。
「祖母が...」
美久は、記憶を整理しながら話し始めた。
「私が5歳の時、初めて猫に逃げられて...」
「泣いて帰ったら、祖母が言ったんです」
「『美久ちゃんは特別なのよ』って」
少女と黒猫は、身を乗り出した。
猫耳がピンと立つ。
重要な情報を聞き逃すまいと。
「『太陽みたいに眩しすぎて、近づけないの』」
「太陽...」
少女が繰り返した。
何か、心当たりがあるような口調。
「『でも、いつか雲がかかって、ちょうどいい光になる時が来る』」
「雲...」
黒猫も、考え込むような表情。
「それから、祖母は私にお守りをくれました」
「お守り?」
「小さな鈴です。古い真鍮製の」
美久は、バッグを探った。
そして、大切にしまってあった小さな布袋を取り出す。
「これです」
布袋から、古い鈴を取り出した。
真鍮製。
表面には、複雑な文様が彫られている。
唐草模様と、見慣れない紋章。
少女と黒猫が、同時に息を呑んだ。
「それは...」
「陽の巫女の鈴...」
二人(?)の反応に、美久は驚いた。
「ご存知なんですか?」
少女は立ち上がった。
そして、部屋の奥の棚に向かう。
古い桐の箱を取り出してきた。
「これを見てください」
箱を開けると、中には古い書物が入っていた。
和綴じの、年代物の本。
表紙には、達筆で何か書かれている。
「『陽の巫女伝承』...」
少女がページをめくる。
紙は黄ばんでいるが、文字ははっきりと読める。
そして、あるページで手を止めた。
「ここです」
美久は、そのページを覗き込んだ。
そこには、図が描かれていた。
鈴の図。
美久が持っている鈴と、そっくりの。
いや、全く同じデザイン。




