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第63話 美久の困惑

「でも、なぜ私には効かないの?」


美久の問いに、少女と黒猫は顔を見合わせた。


困惑の表情。


耳が、不安げに動く。


「それが...私たちにも分からない」


「あなたから発せられる『何か』が」


黒猫が説明する。


慎重に言葉を選びながら。


「変化を阻害している」


「何かって...」


美久は自分の手を見た。


普通の手。


小さくて、華奢で、女性らしい手。


特別なところなんて、何もない。


爪は短く切られ、マニキュアもしていない。


指輪もしていない。


ただの、人間の手。


「オーラ?霊力?」


「分からない。ただ...」


少女が言いにくそうに続けた。


耳が、申し訳なさそうに後ろに倒れる。


「あなたに触れると、私たちは人間に戻ってしまうかもしれない」


「!」


美久は息を呑んだ。


心臓が、ドクンと跳ねる。


「じゃあ、私って...」


声が震える。


恐怖と、罪悪感と、絶望が混じった震え。


「ある種の『浄化』の力を持っているのかも」


黒猫の言葉に、美久は混乱した。


頭が、ぐるぐると回る。


「浄化って...みんなを元に戻しちゃうってこと?」


「可能性としては」


「それじゃあ...」


美久の顔が青ざめた。


血の気が引いていく。


唇が白くなる。


「私、みんなにとって危険な存在...」


「だから、距離を」


「2メートル...」


美久は、改めて自分の周りの空間を見た。


誰も入れない、透明な檻。


見えない壁。


絶対的な境界線。


自分を守るためじゃない。


みんなを守るための。


私から、みんなを守るための。


「私...疫病神みたい...」


声が、消え入りそうになる。


新たな絶望が、美久を襲う。


今まで以上の絶望。


ただ嫌われているだけじゃない。


存在自体が、相手を脅かしている。


「私がいるだけで、みんなが危険...」


「私と関わると、不幸になる...」


涙が、また溢れる。


今度は、別の種類の涙。


自己嫌悪の涙。


罪悪感の涙。

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