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第61話 黒猫の説明
大きな黒猫が、部屋に入ってきた。
静かに、美久の横に座る。
もちろん、2メートル離れて。
美久を見て、心配そうな顔をする。
「泣かせてしまったか...」
罪悪感が、声に滲んでいる。
「いえ、私が勝手に...」
美久は慌てて否定した。
涙を拭いて、鼻をすする。
みっともない。
黒猫は、少女に向かって言った。
「説明した方がいい」
「ええ、そうね」
少女は、姿勢を正した。
背筋がピンと伸びる。
猫耳も、真っ直ぐ立つ。
真剣な表情。
「美久さん、この町の真実を話します」
「真実...」
美久は、涙を拭きながら聞く姿勢を取った。
「祢古町は、人と猫の境界が曖昧になる場所」
美久は、力なく頷いた。
もう、驚かない。
見てきた光景で、十分理解している。
「普通の人間がここに来ると、徐々に変化していく」
「猫に...」
「正確には、人間と猫の中間の存在に」
黒猫が補足した。
「最初は、行動が変わる」
「次に、体が変わる」
「最後に、心が変わる」
「そして、完全に猫になる者もいる」
少女は、自分の猫耳を軽く触れた。
「私は、途中で止まっている」
「自分の意思で」
黒猫も頷く。
「俺もだ」
「完全な猫にはならない」
「人間の心を、残している」
「それは、ある意味での解放でもある」
少女の声が、少し遠くなる。
「人間としての苦しみから」
「社会の重圧から」
「自分という檻から」




