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第52話 優しい白猫
そんなことを考えていると、一匹の猫が近づいてきた。
小さな白猫。
まだ若い、メスの猫。
純白の毛並みが、夕日に照らされて金色に輝いている。
限界の2メートルで止まって、じっと美久を見つめる。
綺麗な青い目。
サファイアのような、澄んだ青。
その瞳には、感情が溢れていた。
「...なあに?」
美久が力なく聞くと、猫は首を傾げた。
45度の角度。
可愛らしい仕草。
そして、小さく鳴いた。
「ニャア...」
それは、慰めるような鳴き声だった。
優しくて、温かい。
まるで「大丈夫だよ」と言っているような。
「泣かないで」と言っているような。
美久の目から、涙があふれた。
もう、堪えられなかった。
白猫の優しさが、最後の堰を切った。
「ありがとう...」
ポロポロと涙がこぼれる。
頬を伝って、顎から落ちる。
石畳に、小さな染みを作る。
「優しいね...」
嗚咽混じりの声。
白猫は、困ったような顔をした。
眉間(?)に小さくしわを寄せて、心配そうに美久を見つめる。
でも、その場を離れなかった。
ただ、じっと美久を見守っていた。
2メートルの距離から。
届かない距離から。
触れられない距離から。
でも、確かに寄り添ってくれていた。
心は、確実に美久に向いていた。
それが、美久には分かった。
言葉はなくても、気持ちは伝わる。
優しさは、距離を超える。




