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第50話 黒猫の登場

すると、一匹の大きな黒猫が前に出てきた。


さっき案内してくれた黒猫より、さらに大きい。


体長は1メートル近い。


筋肉質で、威厳がある。


毛並みは完璧に手入れされていて、つやつやと光っている。


瞳は、深い金色。


年齢を感じさせる、深みのある色。


歩き方も堂々としている。


二本足で立ち、美久の前で止まった。


もちろん、2メートルの距離を保って。


背筋を伸ばし、胸を張る。


まるで、王のような佇まい。


そして、はっきりと言った。


低い、響く声で。


「なんで、効かないの」


人間の言葉。


しかも、困惑した口調。


苛立ちも混じっている。


美久は、弱々しく微笑んだ。


笑顔を作るのも、もう限界だった。


口元を上げるのに、全力を使う。


でも、目は笑っていない。


死んだ魚のような目。


「私も知りたいです」


声に、諦めが滲んでいた。


枯れた声。


生気のない声。


黒猫は、美久の様子に戸惑った。


耳が、ピクピクと動く。


不安のサイン。


「君...元気ないね」


「だって...」


美久の声が震えた。


今度は、涙を堪えるので精一杯。


喉の奥が、きゅっと締まる。


「ここでもダメだったから」


一言一言が、重い。


22年間の孤独が、凝縮されている。


言葉に、魂の重さが乗っている。


「期待してたのに...」


声が、消え入りそうになる。


「祢古町なら、特別な場所なら...」


「きっと大丈夫だって...」


「信じてたのに...」


涙が、また溢れる。


もう、止められない。


堤防が決壊したように、涙が流れ続ける。


黒猫は、他の猫たちと顔を見合わせた。


無言の相談。


緊急会議。


耳の角度、髭の震え、尻尾の動き。


複雑な情報交換。


そして、何かを決意したように言った。


「ちょっと待ってて。会議をするから」


「はい...」


美久は、その場に座り込んだ。


石畳が冷たい。


固くて、お尻が痛い。


でも、もう立っている気力もなかった。


膝を抱えて、小さくなる。


子供のように。


胎児のように。


自分を守るように、体を丸める。

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