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第45話 責任者登場
店員は、この状況に完全に困り果てていた。
猫頭を掻きむしりたいような仕草をする。
でも、爪が鋭すぎて危険なので、やめる。
「あの〜」
「はい?」
美久は、涙を堪えながら振り返った。
「一旦、外に出ていただけますか?」
「え〜、なんで〜?」
美久の声に、わずかに涙が混じった。
声が震えて、語尾が上ずる。
(やっぱり、ここでも拒絶される?)
心が、ズキンと痛む。
鋭い痛みが、胸を貫く。
せっかく、猫カフェに入れたのに。
猫たちと同じ空間にいられるのに。
でも、やっぱり近づけない。
触れない。
仲良くなれない。
「その...責任者を呼びますので」
「責任者?」
「この町の...管理者です」
店員の声には、申し訳なさが滲んでいた。
本当は、追い出したくない。
でも、これ以上の混乱は避けたい。
美久は、しぶしぶ店を出た。
重い足取りで、扉に向かう。
振り返ると、猫たちはまだ美久を見つめていた。
瞬きもせずに。
石像のように。
その瞳の奥に、様々な感情が渦巻いているのが見えた。
好奇心、警戒、困惑、そして...
同情?
扉を閉める時、振り返って店内を見る。
薄暗い店内に、無数の瞳が光っている。
まるで、星空のように。
美しくて、でも少し怖い光景。
ギィィ...
扉が閉まる音が、妙に大きく響いた。




