第44話 奇妙な椅子取りゲーム
美久は、空いている席を探した。
店内には、テーブルが10個ほど。
各テーブルに、椅子が4脚ずつ。
そして、各椅子に猫が一匹ずつ座っている。
完璧な配置。
でも、どの席に近づいても、座っていた猫たちがスッと移動する。
常に2メートルの距離を保つために。
美久が右のテーブルに向かう。
すると、そのテーブルの猫たちが、一斉に左のテーブルに移動。
まるで、将棋の駒のような動き。
美久が左のテーブルに向かう。
今度は、猫たちが右のテーブルに移動。
完璧にシンクロした動き。
練習でもしたかのような、息の合った移動。
「あれ〜」
美久は、困惑した。
どこに行っても、座れない。
近づくと、猫たちが逃げる。
でも、完全に逃げるわけじゃない。
2メートルの距離を保ったまま、ぐるぐると店内を移動する。
まるで、磁石の同極同士のように。
美久が北に行けば、猫たちは南に。
美久が東に行けば、猫たちは西に。
「あはは...musical chairs(椅子取りゲーム)みたい!」
美久は笑った。
でも、その笑い声は少しヒステリックだった。
疲れてきた。
精神的にも、肉体的にも。
10分ほど店内をぐるぐる回った。
猫たちも、美久の動きに合わせてぐるぐる移動。
上から見たら、不思議な模様を描いているだろう。
美久を中心とした、生きた曼荼羅のような。
シュールな光景だった。
猫頭の店員が、困った顔で見守っている。
時々、「あの...」と声をかけようとするが、美久は聞いていない。
必死に、座れる場所を探している。
他の猫たちは、無表情に移動を続ける。
感情が読めない。
楽しんでいるのか、困っているのか、それとも...
やがて、美久は諦めた。
足が疲れたし、さすがに心が折れかけていた。
店内の真ん中で、立ち止まる。
「みんな、よっぽどシャイなのね〜」
震える声で、無理やり明るく言う。
でも、唇が震えている。
目が潤んでいる。
今にも、涙がこぼれそう。
(やっぱり、ここでも...)
胸が、ギュッと締め付けられる。
期待していた分、落胆も大きい。
祢古町なら大丈夫だと思っていたのに。
特別な場所だと信じていたのに。
結局、ここでも拒絶される。




