第35話 町の様子
猫たちに囲まれたまま(正確には、2メートルの距離で囲まれたまま)、美久は町を見回した。
「レトロでいい感じ〜!」
廃墟同然の町並みを、美久はそう評した。
ポジティブ思考も、ここまで来ると才能だ。
崩れかけた家。 木造の壁は朽ち、瓦は落ち、柱は傾いている。
割れた窓。 ガラスの破片が、地面に散らばっている。危ない。
伸び放題の雑草。 アスファルトの隙間から、たくましく生えている。人の手が入っていない証拠。
錆びついた自転車。 かつては誰かの足だったもの。今は、蔦に絡まれて動かない。
でも、よく見ると...
(人が住んでる?)
あちこちに、生活の痕跡があった。
洗濯物が干されている。
シャツ、ズボン、タオル...
でも、サイズがまちまち。
子供服のような小さいものから、異様に大きいものまで。
まるで、様々な体格の住人がいるかのような。
(ネットで見た『住人がいる』という情報も本当だった)
煙突から煙が出ている家もある。
薄い煙。
でも、煙の色が変。
紫がかった、不思議な色。
普通の薪を燃やした煙じゃない。
何を燃やしているんだろう。
「インスタ映えする〜!」
美久はカメラを取り出した。
異常な状況でも、写真は撮る。
これも、美久の習性。
パシャパシャと撮影を始める。
古い町並み、割れた窓、錆びた看板。
そして、もちろん猫たち。
液晶画面で確認すると...
「?」
写真に写る猫の数が、実際より多い。
数えてみる。
実際:20匹 写真:35匹
「あれ?」
瞬きして、もう一度確認。
今度は40匹に増えている。
しかも、写真の中の猫たちの配置が、実際と違う。
実際は美久を中心に円形に囲んでいるのに、写真では一列に並んでいる。
まるで、集合写真のように。
整然と、行儀よく。
前列は座って、後列は立って。
(ネットで見た『写真に写らない』『写真が変』という報告...これか)
「これは...」
美久は顔を上げて、実際の猫たちを数えた。
20匹...いや、25匹...あれ、30匹?
数える度に、数が変わる。
いつの間に増えた?
「あはは...人気者になっちゃった!」
笑い声が、ヒステリックになってきた。
でも、美久は認めたくなかった。
この状況の異常さを。
せっかく、猫たちに囲まれているのに。
夢にまで見た状況なのに。
なぜ、素直に喜べないんだろう。




