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第33話 特殊な空気

集落の入り口に、看板があった。


錆びていて、文字はほとんど読めない。


ペンキが剥がれ、木材も朽ちかけている。


でも、かろうじて一文字だけ判読できた。


「祢」


筆で書かれたような、古い字体。


(ネットで見た情報と同じ!本当にあった!)


「やった!祢古町だ!」


美久は歓声を上げた。


ついに、伝説の猫の町に到着したのだ。


22年間の夢、そして2ヶ月間の調査と準備が、今、現実になろうとしている。


車を適当な場所に停めて、深呼吸。


空気が、さらに甘くなっている。


濃密で、まとわりつくような甘さ。


そして、ピリピリと肌を刺激する何かがある。


静電気のような、でももっと有機的な...


生命力?


エネルギー?


うまく言葉にできない何かが、空気中に満ちている。


(掲示板で見た『特殊な空気』の報告、これのことだったんだ)


美久は、震える手でドアハンドルを握った。


金属の冷たさが、現実感を与えてくれる。


(大丈夫。きっと大丈夫)


心の中で、呪文のように繰り返す。


祖母の言葉を思い出す。


『美久ちゃんは特別なの』


そう、私は特別。


だから、きっとうまくいく。


深呼吸。


もう一度、深呼吸。


そして、意を決して車から降りた。

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