第31話 石像の道
砂利道を進むと、視界が開けた。
そして、美久は息を呑んだ。
「これは...」
道の両脇に、石像が並んでいる。
小さな石像。
高さ30センチほど。
最初は普通の地蔵だと思った。
でも、近づいてみると...
「猫?」
すべての石像は、猫の形をしている。
座った姿勢の猫。
立っている猫。
丸まっている猫。
様々なポーズだが、すべて猫。
しかも、一体や二体じゃない。
延々と続いている。
10体、20体、50体...
数えきれない。
(ネットで見た写真と同じだ!本当にあった!)
「猫地蔵!可愛い〜!」
美久は車を停めて、写真を撮ろうとカメラを構えた。
ファインダーを覗いた瞬間、息を呑んだ。
レンズ越しに見ると、石像の顔が...人間に見える。
「!」
美久は、カメラを下ろした。
肉眼で見る。
猫の顔だ。
丸い目、三角の耳、小さな鼻。
もう一度ファインダーを覗く。
人間の顔。
しかも、悲しそうな表情をしている。
目は閉じられ、口元は苦痛に歪んでいる。
まるで、永遠の苦しみに囚われているような。
(掲示板で見た『猫になった人たち』の話...まさか)
瞬きして、もう一度見る。
やっぱり猫の顔だ。
「目の錯覚かな...」
でも、心臓は激しく打っている。
バクバクと、胸が痛いほど。
震える手で、写真を数枚撮る。
カシャ、カシャ。
シャッター音が、異様に大きく聞こえる。
液晶画面で確認。
写真には、普通の猫の石像が写っている。
可愛らしい、愛嬌のある表情。
「やっぱり、疲れてるんだ」
美久は、自分に言い聞かせた。
でも、ファインダー越しに見た人間の顔は、脳裏に焼き付いていた。
悲しそうな、寂しそうな、助けを求めるような表情。
あれは、何だったのか。
車に戻って、さらに進む。
石像は延々と続いていた。
そして、その表情が少しずつ変わっていくことに気づいた。
最初は悲しそう。
次第に穏やかに。
そして最後は...幸せそう?
「なんだろう、この石像」
誰が、何のために作ったのか。
これだけの数を作るには、相当な時間と労力が必要だ。
しかも、一体一体、表情が違う。
機械的な大量生産品じゃない。
誰かが、心を込めて彫ったもの。
(ネットの情報では、ここを通った人たちの記録とか...)
考えているうちに、急に視界が開けた。
森が途切れ、空が見えた。
そして...




