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第27話 消えた道

「嘘...」


美久は車から降りて、後ろを確認した。


確かに、道がない。


ついさっきまで走ってきた道路が、まるで最初からなかったかのように、深い森に覆われている。


巨大な杉の木が、道だった場所に生えている。


それも、一本や二本じゃない。何十本もの大木が、びっしりと。


幹の太さから推測すると、樹齢は100年以上。


「こんなの...ありえない...」


美久の声が震えた。


膝がガクガクする。


手すりもない山道で、支えるものを探して、車のドアにすがりつく。


冷たい金属の感触だけが、現実を繋ぎ止めている。


深呼吸をしようとするが、息が浅くなるばかり。


過呼吸になりそうだ。


(落ち着いて、落ち着いて)


でも、パニックは収まらない。


頭の中で、様々な可能性が駆け巡る。


迷った? いや、一本道だった。


幻覚? でも、あまりにもリアル。


夢? 頬をつねってみる。痛い。


そして、最悪の可能性。


ネットで見た書き込みを思い出す。


『行った人が消息を...』

『帰ってこない』

『時間の流れが異常』

『境界が曖昧になる』


(まさか、本当に...)


美久は、震える体を無理やり車に押し込んだ。


とにかく、前に進むしかない。


止まっていても、状況は変わらない。


「大丈夫。前に進むしかないってことでしょ」


声に出すことで、自分を奮い立たせる。


でも、声は震えていて、全然説得力がない。


エンジンをかけ直す。


キーを回す手が震えて、なかなかうまくいかない。


3回目でやっとエンジンがかかった。

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