第26話 ループ
そして、奇妙なことに気づいた。
「あれ?さっきもこの看板見たような...」
錆びた看板。文字は完全に消えているが、特徴的な形をしている。
上部が大きく曲がっていて、まるで何かに殴られたような凹み。そして、無数の小さな穴。まるで、鳥につつかれたような跡。
「気のせいかな〜」
でも、なんとなく既視感がある。
さらに10分後。
また同じ看板。
いや、同じ看板のはずがない。一本道を真っ直ぐ進んでいるのだから。
「...デジャヴ?」
美久は首を傾げながら運転を続けた。
(まさか、ネットで見た『道は時期によって変わる』って...)
そして、三度目に同じ看板を見た時、ようやく確信した。
「同じ場所回ってる!?」
車を路肩に停めて、周囲を見回す。
静まり返った森。
巨大な杉の木が、空を覆い隠している。昼間なのに、薄暗い。
鳥の声もしない。虫の音もしない。風もない。
不自然な静寂。
まるで、世界から音が消えてしまったような。
いや、違う。
耳を澄ますと、かすかに聞こえる。
自分の心臓の音。
ドクン、ドクン。
早鐘のように打っている。
背筋に、冷たいものが走った。
(これって、まさか...)
美久は、震える手でスマートフォンを取り出した。
圏外。
当然か。
でも、なぜか時計の表示がおかしい。
11:23 次の瞬間 11:24 また次の瞬間 11:22 そして 11:25
時間が、行ったり来たりしている。
まるで、壊れた時計のように。いや、時間そのものが壊れているような。
(ネットで見た『時間の流れが異常』って、これのことか!)
「!」
美久は、スマートフォンを落としそうになった。
手が震えている。
(何これ...怖い...でも、調査通りの現象だ)
恐怖が、全身を包み込む。
今まで感じたことのない、原始的な恐怖。
理屈では説明できない、本能的な「逃げろ」という警告。
でも、逃げる方向が分からない。
前に進んでも、同じ場所に戻ってくる。
後ろに戻ろうにも、来た道が...
美久は振り返った。
そして、息を呑んだ。
来た道が、ない。




