表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

24/103

第24話 さらに山奥へ

車に戻り、再び走り始める。


道は、どんどん山深くなっていく。


標高が上がるにつれて、気温も下がってきた。さっきまで暖かかった春の陽気が、少しひんやりとしてくる。


民家も少なくなり、コンビニなんてとうの昔に見なくなった。最後に見た自動販売機も、もう30分は前のこと。


「秘境感が出てきた」


両側に迫る山々。うっそうと茂る杉林。時折見える谷底には、清流が流れている。


(ネットで見た『アクセス困難』という情報は本当だった)


美久は、調査で得た情報と実際の状況を照らし合わせながら運転していた。


『県道から林道に入り約5km』という記述。今のところ、その通りの展開だ。


そして、また猫との遭遇。


今度は道路の真ん中に、茶トラが寝そべっていた。


アスファルトの上で、完全にリラックスしている。お腹を上にして、前足を曲げて、まるで人間のような寝相。


「危ない!」


美久は急ブレーキを踏んだ。


キキーッ!


タイヤが悲鳴を上げて、車が急停止する。シートベルトが胸に食い込んだ。


茶トラは悠然と立ち上がり、美久の車を見た。


そして、明らかに嫌そうな顔をした。


眉間(?)にしわを寄せ、目を細め、口元が「へ」の字に曲がっている。


人間みたいな表情で、「めんどくさい奴が来た」という顔。


いや、もっとはっきり言えば「またお前か」という顔。


(ネットで見た『人間みたいな表情』って、これのことか)


美久の胸に、鋭い痛みが走った。


(そんな顔しないで...)


初対面のはずなのに、なぜか既視感がある拒絶の表情。


茶トラは大儀そうに道路脇に移動した。


わざとらしくゆっくりと。のそのそと。


一歩歩いては美久を見て、また一歩。まるで「どうせ近づけないくせに」と言っているかのように。


「ごめんね〜」


美久が窓から顔を出すと、茶トラは一目散に逃げていった。


今度は崖を駆け下りて、谷底の方へ。危険な逃走ルートを選んでまで、美久から離れたいらしい。


やはり、いつものパターン。


(でも、表情が豊かだった。ネットの情報は正しい)


車内で、美久は深呼吸をした。


ハンドルを握る手に、無意識に力が入る。握りすぎて、指の関節が白くなっている。


(大丈夫。きっと祢古町は違う)


でも、確信が少しずつ揺らいでいく。


もしかしたら、祢古町でも同じかもしれない。


いや、もっとひどいかもしれない。


(ダメダメ、ネガティブ禁止)


美久は、頭を振って邪念を払った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ