第22話 順調な道のり
最初の1時間は順調だった。
高速道路を使って、一気に距離を稼ぐ。
朝の高速は空いていて、快適なドライブ。窓の外を流れる景色は、次第に都市部から郊外へ、そして山間部へと変わっていく。
窓を少し開けると、春の風が頬を撫でた。排気ガスの匂いが薄れ、代わりに土と緑の匂いが強くなっていく。
「いい感じ〜」
美久は、想像を膨らませた。
(祢古町は、どんな場所だろう)
頭の中に、様々なイメージが浮かぶ。ネットで見た断片的な情報、ブログの写真、掲示板の書き込み...すべてが混じり合って、期待を膨らませる。
石畳の道。古い木造の家々。そして、たくさんの猫たち。
(猫たちは、私を受け入れてくれるかな)
三毛猫、黒猫、白猫、トラ猫...あらゆる種類の猫たちが、美久を歓迎してくれる様子を想像する。
(もしかしたら、触れるかも)
22年間の夢。ついに叶うかもしれない。
期待で、顔がにやけてしまう。隣の車線を走る車の運転手と目が合った。恥ずかしくて、慌てて前を向く。
「あ、もうすぐ降りる出口だ」
ナビは使えないが、事前に調べた道順は頭に入っている。2ヶ月間の準備期間で、ルートは完璧に暗記した。
高速道路の○○インターチェンジで降りて、県道を北上。その後、林道に入る。
料金所でETCカードを通す。「ご利用ありがとうございました」という機械音声に、「こちらこそ」と返事をする癖は相変わらずだ。
一般道に降りると、景色がさらに山深くなった。
道幅が少しずつ狭くなっていく。センターラインが黄色から白になり、やがて消える。
でも、まだ舗装されているし、対向車もたまに来る。地元の人らしき軽トラックや、観光客らしきファミリーカー。
「まだまだ普通の道だね」
でも美久は知っている。ネットの情報によれば、異変はもう少し先から始まるはず。




